ルワンダ中央銀行総裁日記 [増補版] (中公新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 土台のしっかりしたレーベルとして定評のある中公新書のロングセラーで、ふだん新書を読まないであろう層の読書好きからも「面白い」の評が絶えない本書。どういうふうに面白いのかを確かめたいこともあって読んでみた。

    欧州の植民地であったアフリカ諸国の多くが独立し、「アフリカの年」といわれた1960年からしばらく経った1960年代半ば、独立して間もないルワンダに中央銀行総裁として赴任を打診された、日銀バンカーの活動記録(1965-1971)。典型的な植民地経済をルワンダ国民自身が担う国民経済に移行していくプロセスが綴られている。

    回顧録の形を取っているとはいえ、その書きぶりにはやはり実務家というか、読者を楽しませるエンターテインメント性のない淡々とした報告書色が濃いところに好感が持てる。現状を把握し、旧宗主国の外資に有利な経済を崩し、ルワンダの人が自力で経済の担い手となれるように心を砕く様子も誠実。外資優先を切り崩して、作物の流通や運輸業が広がっていくさまには、素直に「よかったなあ」と感じてしまう。「植民地でひと稼ぎ」モードの旧宗主国関係者の怠慢を非難するが、次代を担うルワンダの人に注ぐ目線があたたかい(ただし、職務に不誠実なルワンダ人官僚のふるまいや、エスタブリッシュメント候補たる学生が持ちつつある特権意識には容赦ない)。

    著者ご自身の経験とともに、ご本人と別の専門家による増補2稿が収められているので、途上国経済への援助と自立をコンパクトにまとめたお手本のような本であるとともに、ルワンダを知る第一歩としての価値は今でも変わらないと思う。時間がない人は、大西義久氏の手になる増補2だけでも本書の概要が把握できる。というかこちらは必読。

    読者層を広げたいためか、「異世界転生」といったライトノベル調の惹句を持ってきて煽る向きもあるが、そこはやはり的が外れているのではないか。発展の経緯と時期がたまたま違うだけであって、そこは人間の営みなのだから、ルワンダ社会をまるで異物のように扱うのは違う。それは服部氏が危惧した、欧州人の旧植民地に対する目線と何ら変わらない。

  • かつてルワンダ中央銀行総裁として活躍した日本人がいた。
    旧植民地から脱却を目指すアフリカの人々、通貨改革(切り下げ)、同時に税制改革による税収増と財政均衡、現地資本育成のための経済規制改革などの基礎を作り、6年後に現地人へと引き継ぐまでの記録。
    その後、同国は発展を続けるが2000年代に入り、民族紛争に発展してしまった。

    白人支配の虚構、民族資本による国内富の蓄積を進めて発展を進めた。気骨あり。

  • これはセリフの劇として映画化するべきだと思う。なんか、タンカきる感じで。そして、西欧の植民地支配が世界にどれだけの禍根を残したのかと思うと気が遠くなる。

  • 今読んでもたしかにぜんぜん色褪せていない……。

  • 日本銀行に20年以上奉職した著者の服部氏が、国際通貨基金に出向し、最貧国と言っても良いほど赤字に苦しんでいたルワンダの中央銀行総裁を6年間果たした実話。
    服部氏は実際には中央銀行総裁職に留まらず経済再生に関わる施策立案にも携わる、名実共のルワンダの経済発展に寄与した人物。
    明確かつわかりやすい筆致、何より表面に捉われず真に必要としている要素が何かを当時の知識層である外国人専門家ではなくルワンダ人に当たり自ら分析し、世界でも有数の日本銀行の銀行家として言葉通り誠実に職務に取り組んだその姿勢にこそ感銘を受けた。
    そして最初の数ヶ月の任期を延長を重ねて計6年果たしルワンダの成長の礎をつみ上げた著者に尊敬の念を抱く。
    その後の悲惨な武力闘争についても変わらず独自の分析に基づく大国に翻弄される諸国、その中でも信念を持ち人道斯くあるべしを体現したフランスの対比も今の世の中には意味のある増補だと感じる。
    一読を勧めたい。

  • 1965年、まだ植民地時代の後遺症の残る
    アフリカ中央の小国ルワンダ。
    そんな超赤字国家の経済状況を再建する為に日本からルワンダの中央銀行総裁として着任した著者の記録。
    貧しいアフリカ諸国の中でも特に貧乏な国の一つであったルワンダは、経済のほとんどは小農の自活経済。
    さらには外国人が特権階級として滞在していた。
    著者はあくまでルワンダ国民の福祉向上を目的とした通貨制度、さらには経済再建計画という経済全般を組織しその後の同国の経済発展の土台を築いた。
    ルワンダ人は怠惰だ、故に外国人が要職に就く方が良い
    という外国人の声を鵜呑みにせず直接ルワンダ人と会話し、相談し、その意見を聞いてルワンダ人を理解しようとした。
    通貨改革の成功は、ルワンダ国民ひとりひとりの努力によるものである。
    そしてそこに不公平があってはならない。
    正直かつ辛抱強い労働だけが、真面目に労働する人々みなに公正かつ正当な利益をもたらす。
    これが、真の民主主義の要求するところなのである。
    途上国にとってその発展を阻む最大の問題は人にある。
    しかし、その発展の要素もまた人なのだ。

  • 『ルワンダ中央銀行総裁日記』読み応えすごかった。1965年、日銀職員からルワンダへ中央銀行総裁として派遣される。何一つ整っていないカオスの渦中、一つ一つ実直にコトに挑みながら、国家改革という大義に向かっていく。何より心打たれるのは、人間としての徳の通し方。

  • 面白かった…が、経済の施策内容など、理解が追い付かず読み飛ばした部分が相当あった…。もっと細かく分かれば、更に面白いだろうに。だいぶ勿体なく思う。

    大学時代に、開発経済学や途上国への援助などのテーマを少し学んだことがある。ハード面を手厚く援助しても、それを使える人間がいなければ何も定着しないとか、資金援助しても政治家や上の人間が搾取して終わってしまうとか、問題が山積しているのは分かったが、じゃあどうするの?というところは私には分からなかった(そこは自分で考えて実践すべきところだろうし)。その解答の一つが、この服部氏の業績なのだろう。
    「援助は人と人とのやり取り」ということを、実際に実践できる人だったのだなぁ。前線でここまでやる中央銀行総裁って、いる?笑

  • ノーベル経済学賞がマクロ系に与えられたので。

    輸出には内需の過剰分を当てるべきであって、国内経済が未熟な状態でいきなり輸出志向型経済を導入しても非効率的であるという部分(印象)には、大いに共感した。

    金利という規律を失い、国債発行残高がGDP比で200%超を超え、財政赤字を垂れ流す(この辺は先進国共通かもしれないが)日本を見た時、著者はかつてのルワンダをこの国に見るかもしれない。

  • 是非、全国民に読んでもらいたい。

    異世界転生ものだと思って読めば、意外にすらすら読める。
    「朝起きたら、発展途上国の中央銀行の総裁になっていた件。~日銀で得た知識で、国にはびこる寄生企業を駆逐して、国を発展させた~」みたいな感じ。
    勧善懲悪もので、読んでいて気分も爽快である。

    そして、この国が日本であったら、と想像してほしい。
    国民が賢くないと、他国から搾取されるだけの国になってしまう。
    今、日本は平和ボケの真っ盛りで、この本のルワンダのように他国から静かに侵略されている。

    国民が賢くなければ国を守ることはできない。
    国を守れない国民は、他国から搾取されるだけの奴隷になる。

    危機感を持って本書を読んでほしい。

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