第一次世界大戦 (ちくま新書) [Kindle]

著者 :
  • 筑摩書房
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感想・レビュー・書評

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  • 戦闘員だけで1000万人の死者を出した第一次大戦の開始から100年。今年は、我々日本人には馴染の薄い、第一次大戦の関連書籍が多く出版された。
    この本を選んだのは、安価な新書で227ページというコンパクトさというだけの理由。しかし、非常に新書らしい、良心的な本だった。

    第一次大戦は、大国、小国に限らず各国の思惑が錯綜した非常に複雑な戦争。帝国主義的な海外進出を強硬したドイツに開戦の責任があるように見えるが、実は1930年代後半、大戦の勃発に際し、特定国の責任を問わないという合意が西欧諸国側で成立している。ところが、この合意は1950年代にひっくり返される。要は勃発の責任についての定説が存在しない。
    また、当初は短期で終結するはずの局地的な戦争が4年以上続く世界大戦になってしまった。

    さらに、第一次大戦は「近代の到達点から現代の出発点」と位置付けられる場合がある。それは、アメリカ合衆国とソ連の登場であり、ヨーロッパの地位の相対的低下であり、民族自決、民主主義の拡大である。また、大戦によって、女性の社会進出、福祉国家が登場した。

    そのような複雑な大戦を本書は、近年の研究を紹介しながら、わかりやすく、説明する。
    なお、巻末の文献案内は、主題別に構成されていて、非常に充実。文学作品も、項目として独立していて、簡単な紹介文も付されている。
    非常に良心的な新書である。第一次大戦に関心を持った人なら、まず一番に手にすべき本ではないだろうか。お勧めの★5つ。

  • 第一次世界大戦の背景から月末までを簡潔に紹介。
    たしか書評で気になり購入。改めて大国間のエゴが戦争を引き起こしたこと、昔放送された映像の世紀で紹介されていなかった戦況など、様々な点で理解が深まった。特にオーストリア帝国の動きが今回よくわかった。各国の経済的な側面に触れていた点もよかった。

  • 第一次世界大戦を知りたければ「八月の砲声」を読めと言うことで以前読んだが、海外の本にありがちな周辺情報をたくさん羅列する(私に言わせると)支離滅裂な内容で全く理解が深まらなかったが、本書は第一次大戦の原因、推移、軍事的な進歩、世界に与えた影響、を的確にまとめており、第一次大戦を大枠で理解するのには打ってつけの良書。大体において、なぜ大戦が起こったかさえ理解できていなかった自分としては6大列強のプライドとエゴが招いた大戦ということが良く理解できた。中世の王朝の終焉から国民国家の樹立へと進んだ大戦が今のウクライナ紛争にまでつながっている。ヨーロッパの現状を知る上でも大変有意義な本。

  • 現代史は特に戦史研究には各国の思惑がつきまとうので難しいことがよく分かった。そんな中、よくまとめてくれている本だと思う。なんだかんだ、ドイツが多くの原因を持ちそうだけど、他の国も列強としてのプライドを捨てることが出来ずに大戦を招いてしまった。
     大戦を早期にやめられなかったのは国民の声、国民の負担を考えたと言うことも重要だろう。戦争は政治指導者だけではない。
     ぺたん将軍については認識を改めた。部下思いの守勢の将軍なのか。のちにドゴールが助命をした。
     総力戦は直訳すれば全体戦争。相手を殲滅するというのが真に近いらしい。ここらへんは議論をまちたい。

  • 本書では、近年の研究を踏まえながら、その戦史的経過、技術的進展、社会的変遷を辿り、国際体制の変化、「帝国」から「国民国家」への移行、女性の社会進出、福祉国家化などをもたらしたこの出来事を考察する。

  • 日本人にとって世界史の中で流しがちな戦争だけれど、この戦争以降、戦争の近代化(?)が起こったのでは?と思い、Kindleセールで購入。果たしてその通り。他の戦争史も失敗学の観点から読んでみたい。

  • 第一次世界大戦は大きな転換期

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著者プロフィール

木村靖二 (きむら・せいじ)
1943年、東京生まれ。東京大学文学部西洋史学科卒業。東京大学大学院博士課程中退、同大学助手、ミュンヘン大学留学、茨城大学教養学部講師、同助教授、立教大学文学部助教授、同教授を経て、東京大学大学院人文社会系研究科教授。現在、東京大学名誉教授。専門、西洋近現代史・ドイツ史。著書に『二つの世界大戦』(山川出版社世界史リブレット)、『第一次世界大戦』(ちくま新書)などがある。

「2022年 『兵士の革命 1918年ドイツ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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