かばん屋の相続 [Kindle]

著者 :
  • 文藝春秋
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感想・レビュー・書評

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  • 銀行関連の短編集
    シャイロックの子供たちや七つの会議とは異なり、それぞれの短編は完全に独立しており繋がりはない
    半沢直樹のようないけ好かない悪役をボコしてスッキリざまぁするような内容ではなく、全体的にほろ苦さの残るエピソードになっている
    表題作・かばん屋の相続が半沢テイストの勧善懲悪的内容なのは池井戸潤という作家がどのように消費されているかを示しているようで面白い

  • オーディブルにて。
    よくできていて、面白い。
    銀行の業務のこと、融資のこと、そして中小企業の心意気やそのありようについて。

    巨大企業とは違うところで息づく市井の人々の悲喜こもごも、と言ってしまえばそれまでだけれど、職人の気概や親心、夫婦の間の些細なすれ違いや心の動きなどが実に丁寧に、丁寧に描かれていて、隣にいる誰かのことのような気持ちになってきてしまう。

    業界ならではのいろいろなことが分かる、というこの著者ならではの面白さ以上に、人物の情景描写の上手さで親近感がわいて、つい続きも知りたくなってしまう、そんなストーリーが詰め込まれた短編集。

    それぞれの立場で描かれた、それぞれのエピソードではあるけれど、どの話にも共通して一本、貫かれている精神のようなものが感じられて、それもこの著者らしい感じがして良かった。やや青臭い、場合によっては気障な理想論かもしれないけれど、どんな仕事でもそういう「こうありたい」は大切なことだ、とつい、思わされてしまう。

    時にそれが叶ったり破れたりするわけだけれども、それを迷ったり臆したりしながらも貫こうとする主人公の逡巡がまた良い。面白かった!

  • 久しぶりに著者の小説が読みたくなり、文庫版を購入。

    全6つのストーリーからなる短編集ながら、各ストーリーが濃厚でスリリングであり、長編小説を読んだような気持ちになる。流石、元銀行マンである著者の実体験による物語は肉厚。どの登場人物もキャラが濃い。

    融資を求める零細企業に対し、時に冷酷な判断を下さざるを得ない銀行。しかしその裏には、担当行員の熱い想いや、人情深いコミュニケーションが有ることを、美化せずに伝えてくれるところがすごい。

    アクションドラマのようなスリルもあり、主人公の生き様に、サラリーマンなら誰もが憧れるのではないか。

    著者の小説を読むと、組織で働くことの難しさ、そして面白さを同時に感じさせてくれる。

  • 銀行はなしの短編。

  • 短編集。他の池井戸作品の例に漏れず読みやすかったが、例外的にハッピーエンドではない話が多かった印象。銀行の内幕的な話がメインで個人的にフィットせず。

  • £3.20
    新品同様

    【定価:581円(税抜)】

  • 長編小説に定評のある池井戸先生の短編小説はあえて読まないで今まで来ました。
    良い意味、裏切られました。早く読んどけば良かったと。
    全員が銀行員が主人公の短編集
    池井戸作品が面白いのは脇役にも個性があり、主人公以上の存在感を示す所です。短編集ですがギュッと濃縮されてます。
    腐った銀行員の末路や、不倫や恋愛の泥沼化した人間模様を描いた章があります。
    題名のかばん屋の相続は、まさかの相続の結末にて勧善懲悪の池井戸作品らしいラストでした。

  • 6編からくる短編集。
    読みたかったのは表題の「かばん屋の相続」
    社長である父親が急逝した。今まで、かばん屋に関わったこともなかった長男に会社を譲り、手伝ってきた次男には相続を放棄しろと書いてあった。その後が知りたくて、一気読みだった。銀行側からの視点で書かれている。少し、腑に落ちない内容でもあるが、気を引き締めなくてはと思える結末で、逆読みに最初の章から読んでいった。

  • 銀行員絡みの6つの短編集。

    池井戸潤さんの作品でありがちな勧善懲悪パターンではなく、いろいろなタイプの物語が描かれており、良い意味で銀行員のリアルが感じられる作品。…ただ、物語としてはちょっと地味かな^^;。

    表題にもなっている一澤帆布を題材にした物語と「手形の行方」はまずまず面白かったです☆あと、「芥のごとく」も、これはこれで銀行員あるあるだと思われるので、やっぱりお金の貸し借りは難しい…。

  • 半沢直樹で有名な著者の短編集。
    いわゆるミステリー的な物理トリックではなく、不正な金の流れを解き明かすことで犯人を特定する企業小説っぽい話が多い。
    WhoダニットやWhatダニットのような正統派ミステリーの作法ではなく、現代的なHowダニット(どうやって金策したのか)がトリックの中心である。
    サラリーマン視点で物語が展開していくため、非常に親近感を感じる。普通のサラリーマンにとって殺人事件は縁遠いが、不正取引や契約の話は実体験として理解できるからだ。

    死体が無くてもミステリーとして成立する。サラリーマン小説としても楽しめる一冊。

    ●十年目のクリスマス
    主人公は十年前に手形が間に合わず破産した社長を見かける。クリスマスシーズンに高級店から買い物袋を提げて出てきたのだ。破産したはずの男がなぜ裕福な暮らしをしているか?疑問を感じた主人公は十年前の出来事を調べ始める…。

    ●セールストーク

    ●手形の行方
    チャラついた部下が融資先から預かった手形を紛失してしまう。落とした場所に心当たりがないという部下の言い分に違和感を感じた主人公。当日の部下の足取りを密かに調べ始める…。

    ●芥のごとく
    叩き上げの女社長は毎月の金策に苦しんでいるが、毎回ギリギリで返済している。今月も間にあうかと思われたが、日付の記入ミスが発覚し…。

    ●妻の元カレ
    パートに出始めた妻の行動に不可解な点が増えた。浮気を疑う主人公は妻の元カレの会社がパート先に近いことを突き止める。さらに主人公の銀行から融資を受けていることも発覚するのだった…。

    ●かばん屋の相続
    老舗かばん屋の社長が亡くなった。一緒に会社を運営していた弟が継ぐかと思われたが、銀行勤めの長男が継ぐと言い出した。亡き父親の遺言書にも長男が継ぐと書いてあると主張するが…。なぜ父は、家業を拒否して家を出た長男に継がせると遺言を残したのか…。

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著者プロフィール

1963年岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒。98年『果つる底なき』で第44回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。2010年『鉄の骨』で第31回吉川英治文学新人賞を、11年『下町ロケット』で第145回直木賞を、’20年に第2回野間出版文化賞を受賞。主な作品に、「半沢直樹」シリーズ(『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』『アルルカンと道化師』)、「下町ロケット」シリーズ(『下町ロケット』『ガウディ計画』『ゴースト』『ヤタガラス』)、『空飛ぶタイヤ』『七つの会議』『陸王』『アキラとあきら』『民王』『民王 シベリアの陰謀』『不祥事』『花咲舞が黙ってない』『ルーズヴェルト・ゲーム』『シャイロックの子供たち』『ノーサイド・ゲーム』『ハヤブサ消防団』などがある。

「2023年 『新装版 BT’63(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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