第一次世界大戦と日本 (講談社現代新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 題名通りの本で満足しました。第一次世界大戦、日本は連合国側で最終的には参戦します。実利としてはドイツ軍が保有していた青島を奪うこと、名目としてはアメリカ合衆国が中心となって喧伝していた人道的側面から、ということで極東の島国もこれに関与する事になります。
    本書では外交、軍事、経済、社会、文化、と重要テーマごとに第一次世界大戦が及ぼしたインパクトを当時の新聞記事などを織り交ぜながら生々しく紹介しています。章の間で重複する記述も多々ありますが、むしろ本書のような内容の場合は、同じイベントであっても頻繁に参照してもらう方が、記憶が確かになるのでありがたかったです。
    個人的に、最も興味深く拝読したのは経済および社会面です。戦争景気により成金が登場する、しかし戦争終結に伴い多くの成金が無一文になるなど社会混乱も激しく起こる。そして社会に大きな格差が生じ、政治家の暗殺など社会不安が増大する。しかし本書の最後に記載されているように、日本が国際連盟から脱退し、軍部が影響を強め真珠湾攻撃の前年をむかえるというのに、大衆消費文化に一度浸ってしまった上流婦人は高級デパートで浪費活動にいそしむ、ということで、何とも薄気味悪い気分になりました。
    民主主義は素晴らしいし私はそれ以外の政体の国で生活したいとは全く思いませんが、ポピュリズム、そして他人に対する無関心さが引き起こす恐ろしさについては本書を読んで強く実感しました。

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著者プロフィール

井上寿一
1956年(昭和31)東京都生まれ。86年一橋大学大学院法学研究科博士課程単位取得。法学博士。同助手を経て、89年より学習院大学法学部助教授。93年より学習院大学法学部政治学科教授。2014~20年学習院大学学長。専攻・日本政治外交史、歴史政策論。
著書に『危機のなかの協調外交』(山川出版社、1994年。第25回吉田茂賞受賞)、『戦前日本の「グローバリズム」』(新潮選書、2011年)、『戦前昭和の国家構想』(講談社選書メチエ、2012年)、『政友会と民政党』(中公新書、2012年)、『戦争調査会』(講談社現代新書、2017年)、『機密費外交』(講談社現代新書、2018年)、『日中戦争』(『日中戦争下の日本』改訂版、講談社学術文庫、2018年)、『広田弘毅』(ミネルヴァ書房、2021年)他多数

「2022年 『矢部貞治 知識人と政治』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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