- Amazon.co.jp ・電子書籍 (321ページ)
感想・レビュー・書評
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ストリックランドが魅力的。語り手である”私”の視点や関係者の話で彼の人物像を浮かびあがらせようとはしてるけども、一向に掴めた感じがしない。それがむしろ良くて、本人の心理描写がないからこそ想像の余地があってこの作品の面白さの一つとなっているのかなと思いました。
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天才画家ストリックランドの半生が作家である語り手によって披露されている。周りが不幸になろうがお構い無しで、自分の欲求のまま突き進んでいく。ずっと何かに追われていたのだろうか。この先月を目指した結果の素晴らしさに触れた時、そこに苦悩があったのだと慮ってみようと思う。
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「月と六ペンス」(モーム : 土屋正雄 訳)を読んだ。(光文社古典新訳文庫)
あゝこの終わり方、なんだか懐かしくて、誰かの何かと同じ香りがする。
すごく好きな香り。
だけどそれが何なのか思い出せない。
ゔー、なんだろう。
あと村上春樹さんのユーモアの源泉のひとつはこの辺りからきていそう。 -
・首尾一貫性の無い人間の性質、危険な生き方に惹かれてしまう不合理な性質を表現してる。原始的な欲求に突き動かされて、ひたすら芸術に没頭するストリックランドの激烈さが、平穏に生きる自分にとっては尊く感じる
・モームの皮肉屋な人間観は面白い。「機知に飛んだ会話の本質が不謹慎にあると心得ている」とか、意地悪だけど本質をついてくる感じがにやりとさせられる
・印象的なフレーズがちりばめられている。「過去のことなど考えんな。重要なのは永遠につづく現在──それのみだ」など -
恋人を待つ間、MacBook Airを広げたサラリーマン/OLばかりの大手町スターバックスで、教養人ぶって読んだ。卒論提出後の2月2日。
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それほど長くもなく、読みやすい。
主人公は画家、ゴーギャンをモデルとしている。
株式仲買人という堅い職業を突然辞めて画家になり、窮乏から流れてタヒチにたどり着く。
「6ペンスより月を選んだ人生で彼は幸せだったのだ」とまとめれば簡単だが、話はそう単純ではない。画業を選んだストリックランドが幸せだったとは小説からは伝わってこない。ただ、その選択には人間の業とでも言ったらいいのか、芸術を選ぶしかできなかった、本能が強く芸術に取り憑かれた男の像が浮かび上がる。
語り手は、最初に夫人のサロンに出入りしていた頃と途中からとではどうも性格の一貫性に欠けている。ストリックランドも同じで、結局のところ彼が自分の人生をどう捉えていたのかは文章では語られない。★評価はこの点による。