ルポ 差別と貧困の外国人労働者 (光文社新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 奴隷のように虐げられる中国人技能実習生と、大企業に使い捨てられるブラジル日系出稼ぎ労働者。ショッキングな内容だった。映画ならR18か。関係者は彼らを自分と同じように泣いたり笑ったりする人間ではなく、家畜か量産型ロボットくらいにしか考えてなさそうだった。サイコパスなのかとすら思う。

    「彼女たちを家族と思って接してきたのに、裁判に訴えるとはひどすぎる」

    携帯を没収するため女性を殴り倒して警察沙汰になった男性会社役員の言葉である。

    立場の弱い人たちに対しては、何をしても許されるはずだという見下しと甘え。行動も発言もまるでDV加害者だ。

    水が低い方へ流れるように、弱い所に負担としわ寄せが集中しているのだなと思った。中国人技能実習生の状況はとりわけ過酷だ。

    掘立て小屋に監禁されて、朝から晩まで牛馬のごとく働かされ、性的に辱められ、雨水を飲まされ、殴られ、黙殺される。現代のタコ部屋にいたのは外国人だった。

    ブラック企業や悪質な派遣労働でも日本人が日本人を踏みにじっているし、家庭内にも「母親」という奴隷制度がある(『母親になって後悔してる』)。外国人労働者たちの苦悩は他人事ではない。底が抜ければ抜けるほど全体が下がってゆく。

    こうした「都合のいい安価な労働力」が求められる背景がまたやり切れなかった。

    人手不足とリーマンショック以降の不況で農家や建築現場、工場は外国人労働者を搾取しなければ回らなくなっていると言う。大企業が中小企業を搾取し、中小企業が従業員を搾取するこの連鎖。もちろんこの中に悪党はいる。でも、こいつが悪の元凶だと指さして終わるほど単純ではないのがやりきれない。

    他人の人生や命を犠牲にしてまで回さなくてはならない物って本当にあるだろうか。本来、社会は人が生きるためにあったはず。どの命も株主様に配当金をお配りするために生まれてきたわけではない。

    とは言え現状はこうであり、ひとつひとつ告発し、改善するために働きかけ続けるしかない。本書は2010年の発売だ。13年後の今どうなったろうか。

    安田浩一氏の著作は2冊目だった。こちらもリズム感と臨場感のある、読みごたえたっぷりな文章で、端々から取材対象に対する熱意と誠実さが滲みでていて好感度が高い。これぞジャーナリスト。

    Kindle Unlimitedにて読了

  • この本を読んで初めて知った外国人労働者の実態に衝撃を受けた。こうした方達の存在すら認識していない私のような日本人はたくさんいるんだと思う。それが無知であり無関心であり、多くの外国籍の方々を生きづらくする社会を形成しているのかなと思う。

  • エクアドル旅で一番読み込んだ一冊。
    こんな裏側があったなんて知らなかった…

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著者プロフィール

1964年生まれ。産湯は伊東温泉(静岡県)。週刊誌記者を経てノンフィクションライターに。『ネットと愛国』(講談社+α文庫)で講談社ノンフィクション賞、「ルポ 外国人『隷属』労働者」(月刊「G2」記事)で大宅壮一ノンフィクション賞雑誌部門受賞。『ルポ 差別と貧困の外国人労働者』(光文社新書)、『ヘイトスピーチ』(文春新書)、『学校では教えてくれない差別と排除の話』(皓星社) 、『「右翼」の戦後史』(講談社現代新書)、 『団地と移民』(KADOKAWA)、『沖縄の新聞は本当に「偏向」しているのか』(朝日文庫)他、著書多数。
取材の合間にひとっ風呂、が基本動作。お気に入りは炭酸泉。

「2021年 『戦争とバスタオル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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