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感想・レビュー・書評
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「太陽の子」灰谷健次郎。1978年初出理論社。読んだのは角川文庫。
※神戸が舞台。70年代。沖縄からの移民と二世たち。沖縄居酒屋の主人一家と集う沖縄出身者たち(ほとんどみんな港湾労働者)。目線、主人公はいたいけな少女。
※色々物議もある作者ですし作品なんですが、やっぱりこの時代にこのテーマの、この熱さを、この平易な語り口で描けてしまうと言う”志の強さ”と、”文芸的な才能”には、ひたすらひれ伏すしか無いと思いました。お見事。
※無論、いくつか、言ってみれば「クサいなあ」と覚めた目で冷や水を浴びせることもできる箇所はあります。でもまあ、納豆もくさやもフナ寿司もブルーチーズも、そりゃクサいですけど、良い物は美味しいわけで。これは、上物です。
※なんかもう、「兎の目」と「太陽の子」の2冊を上梓してしまったら、物書きとしてもうちょっと、ドウなんだと思ってしまいますね。つまり、若さとか時代とか、もちろん作家としての力量と複合的に相まって。傑作過ぎる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
戦後に生まれた沖縄を背景に持つ少女の物語。
とてもよかった。
沖縄は好きな場所で、過去に何度も訪ねたことがあるが、もっと早くにこの本も読んでおくべきだった。
戦後は続いているという言葉を時々に耳にするが、その内容が個人視点で克明に描かれているように思う。 -
お父さんとお母さんの話だけを通して知っている沖縄と、生まれながらに育った街の神戸、二つの場所でさまようふうちゃん。
沖縄の文化がすごく独特で、同じく幼い頃、ふうちゃんと同じ戸惑いを抱いたことを思い出す。
わたしもまた、自分が沖縄という土地に初めてちゃんと興味を持ったのきっかけが「ひめゆり学徒隊」を通してだった。おばあちゃんが摩文仁の丘で友達の名前を探す姿を、今でも忘れない。戦争の恐ろしさ、戦後何年に経ったって被災者が生きている限り終わらない戦争。その戦争で傷ついた人たちと寄り添って生きるふうちゃん。唯一地上戦、という島民たち一人ひとりまでもが戦った沖縄のあの悲しさは本当に表現しがたいもの。
間接的な苦しみでしかなくても、やっぱり伝わって行けば平和は崇められる価値がある。