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感想・レビュー・書評
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地中海世界の覇者となったローマ帝国、 アウグストゥスを継ぐものたち。
第二代ティベリウスから第四代ネロまでの「悪名高き」皇帝たちの物語。
四人四様の悪名を挙げられるが、当然、実像はもっと複雑であることを教えてくれる。
とくにカリグラとネロは、創作物のフィルターを可能な限り取り除いて眺められるように描かれている。
日本では志賀島金印の同時代に、これほどまでに人間像を復元できる記録が遺されていることが驚異的。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
カエサル、アウグストゥスが持っていた人心掌握「術」を使えなかったティベリウスに共感する。
国民に「安定」という最も重要な価値を「維持」するために苦労の多い職務を黙々と遂行しながら、誰からも評価されない。起こるのは重大トラブルばかりで、頼りになる味方はなく、心の拠り所となる家庭は崩壊し、皆に嫌われ、責任は押し付けられる。それでも帝国の運営を投げ出さなかったのが真の貴族的精神ではないだろうか。
移ろいやすい国民の「人気」というものにどう向き合ったかで皇帝の性格が色分けできると思う。
本質を見据え、それを操ったアウグストゥス。
背を向けたティベリウス。
無関心だったクラウディウス。
流されたカリグラ。
読み誤ったネロ。
カリグラは仕方ないが、「悪名高い」と評されるティベリウス、クラウディウス、ネロは多少の欠点はあれども現代(特に日本)の政治家よりかなり有能なのではないかと思う。
巻末のタキトゥス=サヨクマスゴミという塩野七生評に拍手。