- Amazon.co.jp ・電子書籍 (284ページ)
感想・レビュー・書評
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本の後半に、週刊誌の記事やSNSの書き込みなどの資料があり、前半と併せて読み進めていくのが面白い一冊。
前半は前半で一人の女性を知る人の話を聞くという形式なのでまた変わったところがあると思った。
2012年にこの作品が生まれたのは驚き。
とても新しい本だと思った。
私もTwitterやInstagramなどを使って人と繋がっているが、誰かの言った一面だけを鵜呑みにしてしまうのは良くないなと改めて思った。
もちろんそれは噂話でも。
自分の言いたいことを赤星に話していくうちに思ってたことが変わっていくのも、つい強い言葉を選んで喋ってしまうのも、よくあることで恐ろしい。
イヤミスの女王、湊かなえ先生らしいオチだった。
思わず「うわぁ……」って声に出た。
ミステリーとして回収されてるのに、イヤな気持ち。
読後最悪なのに、つい戻って読み返した。
これはハマる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
浅はかな記事や、浅はかな言動、そして浅はかな行動というものが何を生み出すのか。それが書かれたような小説だった。
物語が終わった後に、様々な資料やSNSが載せられているのが、伏線回収のような感じがしてとても面白かった。
相手の立場に立って考えることの難しさや、人間の都合の良い記憶の改竄の恐ろしさを改めて知ることになった。人間っぽい部分をリアルに描いた良作だと思いました。 -
構成が見事。
美人OLの殺人事件が発生。
すべて、事件の関係者が記者の取材に答える形の
「ひとり語り」で進行する。
巻末に関連資料として、取材をもとにした週刊誌記事、
記者や関係者のSNSやり取りが掲載されている。
「ひとり語り」なので、描写は削ぎ落され、
グイグイ読み進めることができる。
記事やSNSが暴走することの怖さを感じるし、
女性ならではの心の動きも浮き彫りになって
(これは女性作家でないと書けないのでは……?)、
単純に楽しめた。
ある書評には「イヤミス度の高い作品」と紹介されていたが、
それほど嫌な気持ちにもならなかった。 -
ネットって怖い
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全てが主観の語り口調であるが故にその数だけ真実が生まれるが事実はまた別物。「自分の記憶で作られる過去と、他人の記憶で作られる過去」 人の数だけ真実が枝分かれして発生するというのはリドリー・スコットの「最後の決闘裁判」と同じだなと感じた。その真実を取りまとめる「資料」があるのも斬新。 同様に語り口調であるが故に、恣意的な解釈や記述が往々にして起こり得るのも良い。下手な叙述トリックものにありがちな、読者を翻弄しようとして発生する、地の文にあってはならない著者の恣意的な事実曲解と違って全て疑えるのだから。
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美人会社員が惨殺された不可解な殺人事件を巡り、一人の女に疑惑の目が集まった。同僚、同級生、家族、故郷の人々。彼女の関係者たちがそれぞれ証言した驚くべき内容とは。「噂」が恐怖を増幅する。果たして彼女は残忍な魔女なのか、それとも―ネット炎上、週刊誌報道が過熱、口コミで走る衝撃、ヒットメーカーによる、傑作ミステリ長編。
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SNS上の出来事を描写している作品を読んで見たいと思い手に取りました。それを描写して物語を構成するというよりは、SNS上そのものの素材はキャプチャで貼って活用し、本編はまた別の形式で進める作品でした。
物語内では、白ゆき姫とされる人の殺人事件にまつわり、複数の登場人物がインタビュー形式で語ります。各人の性格、男女の性差、立ち位置、考え方によって一つの事象をそれぞれで捉え、利害、偏見、先入観、嘘で表現が模られます。
容疑者に感情移入することも良いですが、客観的に、善意にせよ、悪意にせよ、ある種の見苦しさを感じながら読み進めると、滑稽さに興味深く読めました。