乳と卵 [Kindle]

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  • 文藝春秋
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感想・レビュー・書評

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  • 緑子の「自分は子どもをつくりたくない」とか「みんな子どもをつくならなければ辛いこともないのに」といった、生に対する反抗は、自分自身がここまで明確に思ったことはないものの、理解できる感情だったし、もっと表面的な部分で言えば、親を反面教師的に見ているところは、自分の幼い頃と被るところがあって共感した。
    自分の体に関する緑子の表現も、女性特有の体の変化はわからないことが多かったものの、自身の体を思い通りに動かせることへの不思議さや、その一方で自分の意識と無関係に変化する体に対する妙な別個感は、自分も似たようなことを思ったなと懐かしくなった。

    そんな緑子が、満を辞して巻子に口をきく場面はとても印象的。なんて伝えればいいのか纏まらない中、感情が高ぶって卵を割りながら、少しづつ気持ちを伝えていくところは、関西弁且つ思うままに言葉にしたようなこの文体だからこそ、リアリティを持って胸に迫ってくる。

  • はいはい、川上未映子さんよ、とても好き

  • なんか読んだことがある気がしましたが、ここの本棚では見つからず・・・
    私と姉と、姉の娘のそれぞれの思い…主に私が想像(?)しながら…
    最後はホッとするのが。芥川賞受賞の作品。むずかしい・・・・・

  • とても面白い。
    自分も今や完全に大阪人なので声に出して読むことで、よりリアルに感じられて一気読みしてしまった。
    でも本の分厚さや字の大きさに騙されてはいけません。改行や鉤括弧無しで、ページを埋め尽くす話し言葉みっちり。思ったよりも読む時間かかります。
    これ大阪人以外の人はもっと時間かかるんちゃう?

    あるあるな母娘の関係を、なかなか面白い設定でグイグイ読ませてくれる。緑子のノートで返事してゆくところ、書いてる内容、何もかもが愛らしい。
    母の豊胸という子供にとっては大問題を乗り越える緑子。(豊胸する本人にとってはもっとだが)
    結果的に周りの人に恵まれて、緑子めっちゃ幸せな子じゃないかと思ってしまった。
    私個人としては、月経という疎ましい存在、女として産まれたことを肯定する良い機会に出会えさせてもらったかも(今さらですがw)
    本当に行間から女性への優しさあったかさ、自己をまるごと認めてあげましょう、という気持ちが伝わってくる。ありがとうです

  • はじめての川上未映子さん
    奇妙で具体的で、ありありとした言葉で紡がれる濃密な時間。
    なんか1秒1秒がもっと長い時間みたいに描かれてた気がする。

  • ストーリー重視の現代文学とは一線を画す作品で、純文学っぽい。狙って書けるものではく、作者の川上未映子の感情が溢れてる。テーマは性的・生殖動物としての「女」。作者自身の「女」への色々な感情が押し込められてる感じがした。生々しく窮屈。生殖の為に変化する事への嫌悪感など緑子が恐れる漠然とした何かというのも何となく、分かる。なんとも言えないドロッとした感触が残る、それがまさしく「女」という生き物に課せられた表現しにくい生きにくさを表しているようで良いなと思った。

著者プロフィール

大阪府生まれ。2007年、デビュー小説『わたくし率イン 歯ー、または世界』で第1回早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞受賞。2008年、『乳と卵』で第138回芥川賞を受賞。2009年、詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で第14回中原中也賞受賞。2010年、『ヘヴン』で平成21年度芸術選奨文部科学大臣新人賞、第20回紫式部文学賞受賞。2013年、詩集『水瓶』で第43回高見順賞受賞。短編集『愛の夢とか』で第49回谷崎潤一郎賞受賞。2016年、『あこがれ』で渡辺淳一文学賞受賞。「マリーの愛の証明」にてGranta Best of Young Japanese Novelists 2016に選出。2019年、長編『夏物語』で第73回毎日出版文化賞受賞。他に『すべて真夜中の恋人たち』や村上春樹との共著『みみずくは黄昏に飛びたつ』など著書多数。その作品は世界40カ国以上で刊行されている。

「2021年 『水瓶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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