- Amazon.co.jp ・電子書籍 (166ページ)
感想・レビュー・書評
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冒頭の「陰影礼讃」に書かれている日本的な美意識に対する著者の私観にグッと引き込まれて、「現代口語文の欠点について」までは非常に興味深く読んでいた。途中からダラダラとしたエッセイになり、得るものがあるような、大したないような、そんな感じの文章が最後まで続いたが、それがむしろ心地いいというか、読後感は総じて「おもしろい本を読んだな」という感じのものだった。
ウェブ以降、特にTwitter以降は端的でシンプルな文章がとにかく好まれるが、ダラダラと冗長なふうに見せかけていながらも、魅力的な文章というのは今となっては貴重でそこにとても価値を感じた。そしてやはり、今となっては裏どりのとれていない根拠の薄い文章は価値がないとされるなか、後書きで指摘されているように、必ずしも正しい内容ではないにも関わらず、国内外の建築関係者にとって重要なテキストと見なされているらしいということにも、個人的には心を踊らされた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
陰影とか実はあまり関係ない、面白いエッセイ。この本について「陰影ガー」とか言っている人は読破していない人なので要注意。
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谷崎といえば変態小説というイメージしかなかったんですが
なんでしょう、この厠に対するこだわり。
下が菜の花畑で人が歩いているトイレとかなんなんでしょう。高所恐怖症は用を足せませんよ、どうしてくれるんですか。蛾の羽のトイレとか、読者はもうどうすればいいんでしょう。
ごめんなさい、文豪とまで言われているこの人のイメージはもう変態とトイレです。
「陰翳礼讃」は陰影を礼賛していました。
今時の◯◯寺ライトアーップ! 桜もライトアーップ! なんてみたら卒倒するでしょうね。
そうそう。昔、国語の先生が「紹介状持って谷崎に会いに行ったのに居留守使われた!」と、なぜあんなにも憤慨しておられたのか、ようやくわかりました。
ご存命ならば、
「ベンガル猫連れて行ったら絶対会ってくれるよ」
と教えて差し上げたかったです。あの時代はまだ存在していませんでしたけどね、ベンガル猫! -
谷崎潤一郎による随筆集。本文庫について、表題にもなっている「陰翳礼讃」は「建築を学ぶ者のバイブルとして世界中で読み継がれる」と裏表紙にて紹介されており、あとがきも建築論的としての「陰翳礼讃」の批評となっていることから、建築論として「陰翳礼讃」を読む人間に向けての発刊となっていることがうかがえる。
内容はさまざまな日本美について谷崎がその美しさを歌い上げるというものであり、軽妙な語り口も含めへらへら笑いながら楽しんで読み、また学ぶことができた。
多少疑問に思うような主張もあったが、そのような切れ味のよさがまたよいものであった。
建築・空間論としては、「陰翳礼讃」だけでなく、「旅のいろいろ」についても旅籠の描写を筆頭に参考になることが多くあったと感じた。