あなたの人生の物語 [Kindle]

  • 早川書房
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感想・レビュー・書評

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  • フェルマーの定理にある、「光は自身の最短時間経路を選んで進む」ー ここからの発展でお話が進みます。光はどうして到着する前に最短経路がわかるのだろう?
    確かに、ほんとうにわからない。だって、光は自身で考えることはできないでしょう?どうしてわかるのでしょう。

    そこから映画「メッセージ」につながっていきます。折角なので映画ももう一度観ました。やっぱり好きな映画です。わかっているのに、その選択をしてしまう。家族がいて、娘がいて、それが自分の最善の選択だから。
    深いなぁ。

  • ちょっとずつ読んでいる。なにせ頭を使うからゆっくりしか読めない。たぶんこれまでに読んだSF作品のなかでも5本の指には入る。

    いまのところ、本作品集の特徴はこう要約できるかもしれない。つまり、もしも人間がみずからの知性や肉体の限界を超えた時いったい何が起きるか、あるいは人間の限界を超える「他者」が現れたとき、人間は何を知り、何を知ることができないか。
    そうした、「限界のむこう側」をめぐる思考実験が結晶化した作品たちだ。

    すでに映画化された作品もあるけど、短編ながらどれも映画化できそうなクオリティのものばかり。

  • 短編ながら、どれも読み応えあり。
    最後の「顔の美醜について」が
    1番読み越えがあり、好きだった。

  • テッド・チャンによる初の短篇集。初にしてスターになっただけのことはある。
    文章が洗練されていてスタイリッシュで、SFというより純文学のような落ち着きがありながらも、設定がしっかりSFとしている。SFは設定が9割だと思っているけど、その点ここに収録されている短篇はどれもかなり個性的な世界観。

    「バビロンの塔」 ★★★★☆
    • 旧約聖書に基づいたSF。てっぺんが見えないほどの巨塔に登る鉱夫ヒラルムの物語。読んでいるだけでその過酷さが伝わってきて辛い。

    「理解」 ★★★★★
    • ホルモン治療の副作用によって、知能が向上した男、グレコ。自分に投薬を行った組織をいとも簡単に欺き、逃走。しかし、そのような人間は自分だけだと思っていたが、実はもうひとり同じ境遇の人間レイノルズの存在に気付く。2人の目指すところを合致せず、想像を超えるバトルが始まる。最後は、レイノルズがグレコに仕込んだ自己破壊のプログラムを、記憶というトリガーによって発動し、グレコは破れる。
    • と、あらすじを説明していても何を言ってるかわからない感があるほどの著者の想像力。通常の人類を遥かに超える知能を得た場合、人は何を目指すのか。

    「ゼロで割る」 ★★★★★
    • レネーは若くして大きな成果を出した実績ある数学者だったが、ある時、数学の存在自体が否定されるような矛盾を証明してしまい、数学者として世界が崩れ去るように精神に異常をきたし、自殺未遂を図った。
    • その夫のカールも20年前に自殺未遂をしている(学生の頃)。自殺未遂の後、精神病棟退院してから、ローラと出会い、感情移入することを学んだ。
    • カールは感情移入することに長け、その自負もあったが、カールにはレネーの感情がわからないことがあった。それはカールがレネーに惹かれた理由でもあったし、悩みの原因でもあった。
    • 正直、初めて読んだときは「ちょっと何言ってるかわからない」状態だったけど、なぜか名作の匂いがぷんぷんするので、読み直したところでやっと理解ができた。時系列的には3から最後の9章まで読み、次に1、2を読むほうが理解しやすいだろう。ちなみに、aはレネーの物語。bはカールの物語。(6だけは2人が一緒にいるシーンだが)

    「あなたの人生の物語」 ★★★★★
    • 本作を原作とする映画『メッセージ (原題: Arrival)』を先に観ていて、オチは知っていたので驚きはなかったけど、SF的な斬新さに満ちていて、幸せなムードも心地よくて、大変な名作だと思う。地球外生命体ヘプタポッドの言語を紐解いていく過程も面白いし、その言語を習得することで過去・未来を見渡すという能力も獲得していくという設定が凄まじい。小説的に言うと、未来のシーンが定期的に挟み込まれていた意味が最後にわかる (ルイーズは言語を獲得しながら、未来が見えるようになっていた)
    • 一箇所だけ、翻訳者の人、やっちまったなと思うところがある。それは、言語学者であるルイーズが「とんでもありません」と言うセリフで、これは典型的な間違った敬語。一方で、別のシーンでは仕事仲間が「ぜんぜんすごい」と言った時にルイーズがその文法的な誤りをツッコミシーンするあるだけに、言語的なミスはあってはならなかったはず。

    「七十二文字」 ★★★★☆
    • だいぶ難解かつグロテスクな部分もあり、読むのは大変だけど、独自の世界観の中で、人類の種としての存続の危機から世界を救うという壮大なテーマに挑む物語でもある。
    • 名辞とは、人形に命を与える七十二文字が書かれた紙。人類は、あと5世代のうちに絶滅する運命にある。命名学によって人類を繁殖させようと試みる。

    「人類科学の進化」 ★★★★☆
    • 人類と超人類が共存していて、超人類の科学力は人類のそれを遙かに凌駕していて人類には理解不能なレベル(至っていて、そのために人類の中では超人類の科学を理解しようという学問が流行る…
    • 科学雑誌『ネイチャー』への寄稿だそうで。SFの設定メモのように短い短篇だけど、ユニークで面白い。

    「地獄とは神の不在なり」 ★★★★☆
    • 天使が本当に降臨したり、地獄が見えたりする世の中で、信仰心というものをテーマにしたSF。

    「顔の美醜について」 ★★★☆☆
    • カリー(美醜失認処理)を施すことによって、人の容貌に対する美醜の感覚を失う処置の是非を議論するドキュメンタリー、という体裁を取ったSF短篇。物語的要素が少ない分、少々物足りないけど、最後にどんでん返しもあり面白い。(カリー反対派の素晴らしいスピーチによって多くの人が考えを改めたが、そのスピーチもまた加工されたものであり、受け手の受け取り方を操作したものであった)

  • 人に勧められて読みました。

    SF短編集、と呼ぶには一つ一つが濃く、読みごたえがあります。科学的な理論もゴリゴリ挟んでくるので完全に理解はできないのですが、引き込まれます。
    じっくり本を読みたいときにおすすめかと思います。

    「あなたの人生の物語」こちらは映画にもなったそう。とても静かな感動というか、異星人との交信、と表すととっつきにくいかもしれないですが、メインは愛する事の苦悩や選択等であり、良い物語を読んだな、と余韻にしばらく浸りました。構成力が見事。

    「顔の美醜について」も今度科学が発達していくとなんだかありえそうな話で面白かったな。

  • 久しぶりに読んだSF。
    それも、中短編8作からなる1冊というのも珍しい。
    惹かれて手に取ったのは、ユニークな内容が印象的だったSF映画「メッセージ」の原作でもある表題作。驚くほど独創的で魅力的な着想に心を奪われるという、久しぶりの「SF的感動」を味わえた。映画もまた観たい。
    しかし残る7作は、いずれも「面白かった!」とは素直に云えぬ読後感。一言で云うなら「難しい」あるいは「よく分からない」。作者の意図する含意、寓意?のようなものがオボロゲに掴めそうな気もするのだが、明確な輪郭を持つ理解、解釈にはほど遠い、みたいな。かなり読者を選ぶタイプの著者なのかも知れない。

  • 「あなたの人生の物語」「顔の美醜について」が特に良かったです。SFというのも幅広いジャンルですが、物語があってその装置としてサイエンスが使われているその塩梅が個人的には心地よく楽しめました。

  • 『あなたの人生の物語』(テッド・チャン)読了。表題作が好き(タイトルで若干損をしている感)。この、時間の広がりを地図のように同時的に、一瞥性に把握するというイメージには、うまく言葉にできないけどなにか救いというか、荷が軽くなる感じを受ける。やはりというべきか巻末でスローターハウス5に言及されていた。

  • 『メッセージ』のタイトルで映画化された表題作を含む短編集。テッド・チャンの作品は今作が初。数学はともかくとして旧約聖書をベースにしたSFというのは初めて読んだ気がする。とても良かった。旧約聖書知らなくても読めるけど、知ってる方がより面白いと思う。

    『バビロンの塔』なんかもろに旧約聖書をベースにした話だけど、その寓話的な雰囲気のせいなのか、星新一を読んでるときにも似た感覚になった。ゾワゾワ感というか。星新一はショートショートなのでその感覚もすぐ終わるけど、テッド・チャンはその感覚をもっと濃厚にして複雑にした感じ。

    『あなたの人生の物語』『七十二文字』では言葉やアルゴリズムがテーマとなっていて、この時代のSFとしてはおさえるべきテーマだなと感じる。生物学の知見では人間を含む生物は複雑なアルゴリズムであるということが定説になりつつある中で、アルゴリズムにより生物を模倣した機構を生み出すことの意味や、人間としての価値をどこに見出すのかは今後人類社会が直面する問いになるし、私たちの思考回路がアルゴリズムでしかないのであれば、言葉を介して行っていると感じているこの思考はなんだろうかという点に、別の言語別の思考、認識回路の視点を照らす『あなたの人生の物語』は優れた作品。

    ルッキズムをテーマにした『顔の美醜について』も、生物学や脳科学の最近の知見を踏まえただし、構成も良く出来てるし素晴らしかった。

  • とても宗教的な話が多くて、しかも、禅的なアプローチと一神教のアプローチを対比させるところがとても面白かった。因果論からの脱却をタコが語る。変分法。光の屈折率。未来はすでに書かれている。一般的な知性は因果律を求めるために作られていて、ある種の欠落がそもそもの前提になっていて、それを埋めていく作業を輪廻を通じてずっと続けていくと結構しんどくない?娘に対しての回想が続く。結果はすでに分かっている中でfalling down with a style。

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テッド・チャンの作品

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