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感想・レビュー・書評
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フェルマーの定理にある、「光は自身の最短時間経路を選んで進む」ー ここからの発展でお話が進みます。光はどうして到着する前に最短経路がわかるのだろう?
確かに、ほんとうにわからない。だって、光は自身で考えることはできないでしょう?どうしてわかるのでしょう。
そこから映画「メッセージ」につながっていきます。折角なので映画ももう一度観ました。やっぱり好きな映画です。わかっているのに、その選択をしてしまう。家族がいて、娘がいて、それが自分の最善の選択だから。
深いなぁ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ちょっとずつ読んでいる。なにせ頭を使うからゆっくりしか読めない。たぶんこれまでに読んだSF作品のなかでも5本の指には入る。
いまのところ、本作品集の特徴はこう要約できるかもしれない。つまり、もしも人間がみずからの知性や肉体の限界を超えた時いったい何が起きるか、あるいは人間の限界を超える「他者」が現れたとき、人間は何を知り、何を知ることができないか。
そうした、「限界のむこう側」をめぐる思考実験が結晶化した作品たちだ。
すでに映画化された作品もあるけど、短編ながらどれも映画化できそうなクオリティのものばかり。 -
短編ながら、どれも読み応えあり。
最後の「顔の美醜について」が
1番読み越えがあり、好きだった。 -
久しぶりに読んだSF。
それも、中短編8作からなる1冊というのも珍しい。
惹かれて手に取ったのは、ユニークな内容が印象的だったSF映画「メッセージ」の原作でもある表題作。驚くほど独創的で魅力的な着想に心を奪われるという、久しぶりの「SF的感動」を味わえた。映画もまた観たい。
しかし残る7作は、いずれも「面白かった!」とは素直に云えぬ読後感。一言で云うなら「難しい」あるいは「よく分からない」。作者の意図する含意、寓意?のようなものがオボロゲに掴めそうな気もするのだが、明確な輪郭を持つ理解、解釈にはほど遠い、みたいな。かなり読者を選ぶタイプの著者なのかも知れない。 -
「あなたの人生の物語」「顔の美醜について」が特に良かったです。SFというのも幅広いジャンルですが、物語があってその装置としてサイエンスが使われているその塩梅が個人的には心地よく楽しめました。
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『メッセージ』のタイトルで映画化された表題作を含む短編集。テッド・チャンの作品は今作が初。数学はともかくとして旧約聖書をベースにしたSFというのは初めて読んだ気がする。とても良かった。旧約聖書知らなくても読めるけど、知ってる方がより面白いと思う。
『バビロンの塔』なんかもろに旧約聖書をベースにした話だけど、その寓話的な雰囲気のせいなのか、星新一を読んでるときにも似た感覚になった。ゾワゾワ感というか。星新一はショートショートなのでその感覚もすぐ終わるけど、テッド・チャンはその感覚をもっと濃厚にして複雑にした感じ。
『あなたの人生の物語』『七十二文字』では言葉やアルゴリズムがテーマとなっていて、この時代のSFとしてはおさえるべきテーマだなと感じる。生物学の知見では人間を含む生物は複雑なアルゴリズムであるということが定説になりつつある中で、アルゴリズムにより生物を模倣した機構を生み出すことの意味や、人間としての価値をどこに見出すのかは今後人類社会が直面する問いになるし、私たちの思考回路がアルゴリズムでしかないのであれば、言葉を介して行っていると感じているこの思考はなんだろうかという点に、別の言語別の思考、認識回路の視点を照らす『あなたの人生の物語』は優れた作品。
ルッキズムをテーマにした『顔の美醜について』も、生物学や脳科学の最近の知見を踏まえただし、構成も良く出来てるし素晴らしかった。 -
とても宗教的な話が多くて、しかも、禅的なアプローチと一神教のアプローチを対比させるところがとても面白かった。因果論からの脱却をタコが語る。変分法。光の屈折率。未来はすでに書かれている。一般的な知性は因果律を求めるために作られていて、ある種の欠落がそもそもの前提になっていて、それを埋めていく作業を輪廻を通じてずっと続けていくと結構しんどくない?娘に対しての回想が続く。結果はすでに分かっている中でfalling down with a style。