このタイトルが偽りなく事件の加害者の少年の本心であることに衝撃を受けるが、本当の衝撃は、そこに異常性が感じられないところにあった。猟奇的な殺人者ではなく、淡々と「ふつうの人生」の路途中に「殺人を経験したかった」というのが少年の心理だったということが、おそらく「ふつうの人」には到底共感できないと思う。
前半はどこまで本当なのかわからない事件の全容を小説風に書き記す。この時点でうさんくさい本だったかな、と思ってしまったけど、後半には少年の心理から事件のキーワードとなるアスペルガー症候群との関連を明確にしていく(が答えは出てこない)。
この事件の難しくまた興味深いところは、少年の行動は絶対に許されることではないにも関わらず、少年自身の心は目的的で完全な責めを与えるには理屈が不足していること。「精神病で判断できないから減刑?」「アスペは精神病?」「なぜ人を殺してはいけないのか?」
「死」ではなく法と倫理と精神と心理と様々な思惑が絡みあった「殺人」について、考えさせられる事件だと思う。あと、当時と比べてネットではすっかりネタとなってしまった「アスペ(ルガー症候群)」についても、もう少し正しい知識は得たいと思った。