夜と霧 新版 [Kindle]

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制作 : 池田香代子 
  • みすず書房 (2002年11月5日発売)
  • Amazon.co.jp ・電子書籍

夜と霧 新版の感想・レビュー・書評

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  • 時々、読み返すのだ。

  •  心理学を専門とする大学教授が、ユダヤ人だったためにナチスによる強制収容所に送られ、苦難を越えて生還した。その体験をもとに、被収容者の心理がどのような影響を受けたかを学者として考察している。学者らしく抑制気味に書かれた文章であるにも関わらず、そこから伝わる過酷な状況は凄まじい迫力を持って伝わってくる。

     昔観た映画でずっと心に引っかかっている描写があった。それはこんな場面だ。

     ──強制収容所で、一日の労働を終えた男たちが所長らしき軍人の前に整列している。所長は並んでいる男たちの何人かを「お前、お前、それからお前」という具合に指差していく。指された男たちは地面に伏せる。それから所長はピストルを出し、伏せている男の頭を順番に打ち抜いていく。途中、何人目かで弾切れとなるが、弾をこめなおしてまた撃つ。死んだ男たちは仲間たちの手でどこかへ引きずられていく──

     不思議だったのは、伏せた男たちは殺されることが分かっているのに何の反応も見せなかったことだ。所長が弾をこめなおしている間に逃げるとか、せめて最後に殴りかかるとか、もちろん無駄な抵抗に過ぎないにしても何らかの反応はするものではないだろうか? 映画だからと言ってユダヤ人をあまりに無気力に描いているのではないか? 撃たれなかった男たちが驚く素振りすら見せないのは、役者の演技力が足りないのか? そんな疑問がずっと残っていた。

     しかし本書を読んで疑問が解けた。あの映画の描写はどうやら正しかったのだ。強制収容所に入れられた人々は実際にそうなっていたのだ。多分、映画を作った人たちも本書や類書を読んでいたのではないだろうか。

     もちろん、本書を一冊読んだくらいで被収容者の気持ちが分かるなどとは決して言えない。むしろ、我々のような者が想像できる範囲を完全に超えていることが分かったと言うべきだろう。ただ、そんな中でも彼のようにまともであり続けることができた人がいたことは救いだと思う。

     原題は「或る心理学者の強制収容所体験」であるが、霜山徳爾氏による1956年初版の邦訳からすでに「夜と霧」というタイトルで日本に紹介された。私が読んだのは1977年の新版を池田香代子氏が2002年に邦訳したものであり、内容と翻訳が共に改められている。どこが変わっているかは比較していないが、訳者あとがきにあるエピソードは著者の心的変化にも触れており、これもまた興味深い。

  • ユダヤ人強制収容所での死ぬような辛い日々を経験した心理学者の筆者が、そこでの人々の心理、言動を客観的に捉えて書かれている。そのような辛い環境だからこそ気づかされた「人々にとっての生きる意味」とは、「精神的強さの源泉」とは何かが考察されていて、名著と言われる所以がわかる。

  • ○引用
    この世にはもはななにも残されていなくても、心の奥底で愛する人の面影に思いをこらせば、ほんのいっときにせよ至福の境地になれる

    ユーモアも自分を見失わないための魂の武器だ。ほんの数秒間でも、周囲から距離をとり、状況に打ちひしがれないために、人間という存在にそなわっているなにかなのだ

    およそ生きることそのものに意味があるとすれば、苦しむことにも意味があるはずだ。苦しむこともまた生きることの一部なら、運命も死ぬことも生きることの一部なのだろう。苦悩と、そして死があってこそ、人間という存在ははじめて完全なものになる

    自分を待っている仕事や愛する人間にたいする責任を自覚した人間は、生きることから降りられない。まさに、自分が「なぜ」存在するかを知っているので、ほとんどあらゆる「どのように」にも耐えられるのだ

  • 強制収容所という想像を絶する劣悪な環境にあっても人間が人間らしくあることを選択することはできること、そのためには人生の意義について問うことをやめ、自らが人生から問われるていることを知るべきであること。うーむ。

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