儚い羊たちの祝宴(新潮文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 個人的米澤穂信フェア開催中♫
    これも面白かった。

    夢想家のお嬢様たちが集う大学の読書サークル〈バベルの会〉。
    バベルの会に関わる5つの事件。
    どんな読書会なのかは実際に参加してる場面は描かれない。
    5つの物語にほんの少し〈バベルの会〉が文字だけで登場するのみ。

    お嬢様たちの生活や悩み、同じ年ごろの使用人がいて、敷地も広いお屋敷にお住まいで、なんとも庶民の生活からかけ離れた世界を描いてます。
    いったい時代背景はいつ頃の感じだろうか。
    1960年代くらいかな。


    それが一変しておどろおどろしい結末へと向かう。
    どの話も清々しさとか全然無し。
    現実感とはほど遠い。
    軟禁されてしまう物語が一番辛いかも。

  • 夢想家の良家の子女が集う『バベルの会』という読書サークルに関連した短編集。
    震えた。黒かった。この世界観、纏わりつくような仄暗さ、閉塞感、悍ましさ。今までよんだ米澤作品と全く違っていた。ポーの作品のような読後感だった。
    どれも良かったんだが、敢えて挙げると表題作の「儚い羊たちの祝宴」と「玉野五十鈴の誉れ」かな。

  • 『氷菓』『インシテミル』で有名な米澤穂信の作品。『氷菓』は読んでないが。

    内容はちょっとゾッとする短編集といった趣き。
    「バベルの会」というものがそれぞれの短編に出てきて薄っすら繋がっているものの、基本的には独立した作品である。

    それぞれが人間の怖さというか、裕福な一族に関係する、何らかの感情が抜け落ちた感じの人が織りなす恐怖みたいなものを書いている。
    で、だいたいが最後の1行(1ブロック?)でゾクッとさせるような構成になっている。

    上手いし怖いのだが、ある種ワンパターンでもあり、まぁ簡単に人殺すね、みたいな印象もある。
    (ただ『山荘秘聞』はその更に裏をかいた感じなので逆に新鮮だった)

    しかし人間ってのは裕福になって没落しつつあると、謎の狂気を生み出してしまうのだろうか?
    と感じてしまう。

    物凄い謎をスパッと解く!みたいなミステリーではないが、狭い地域で起きた小さな謎が恐怖と共に解決される、みたいなのが好きな人には良いかも。

  • お屋敷と名家と使用人がテーマの味わい深い短編集5作。
    「身内に不幸がありまして」
    「北の館の罪人」
    「山荘秘聞」
    「玉野五十鈴の誉れ」
    「儚い羊たちの晩餐」
    個人的には「儚い羊たちの晩餐」が一番好き。
    厨娘としてお屋敷で雇われた夏は珍味を用いた絶品の料理を提供するが、そのたびにあり得ない量の食材を注文する。何でも調理できる彼女にアミルスタン羊を振る舞うようマリエは指示するが、このアミルスタン羊とは「人間」の隠語。そしてこのアミルスタン羊の狩り場として、彼女を拒絶した「バベルの会」の合宿場を指定する。誰を殺してくるかなと待っている間に、厨娘の本当の仕事を知る。厨娘とは、食材のごく一部のみ使用し、残りをすべて捨ててしまうことで贅沢を演出する職業のこと。ということは、殺されるのは一人ではない、、、というゾクッとするお話。

  • うーん、前評判を耳にして期待値が高すぎたか、思ったほどの驚きはなかった。「どんでん返し」の惹句は興味を惹く一方で、無意識に警戒もしてしまうから難しいところ。
    時代設定としては昭和30-40年代くらいか。各話を「バベルの会」という読書サークルが緩くつなぐ連作短編集。どの話も所謂「名家」を舞台としていて、設定はとても好み。ジャンルとしてはミステリよりホラー寄りで結構陰惨な描写もあるのだが、著者の筆致からそこまでのおどろおどろしさはなく読めた。


    以下、各話の感想

    ○「身内に不幸がありまして」
    最後の一行に「落語のオチかーい!」と突っ込んでしまった。ホラーかミステリだと思っていたけどブラックユーモアなのか?と一瞬混乱した。
    作中に出てくる本の共通点は気付かず、明かされてなるほどね、と感心。
    それにしても人が何人もあっさり殺されてる割には真犯人に辿り着かないのは流石に無理があるような(それを言ってはおしまいだが)

    ○「北の館の罪人」
    死因についてはまるで意外性がなかったが、おそらく作者が書きたかったのであろう最後の一文には、思い浮かぶ映像的な美しさも相俟って、あっと言わされた。二番目に印象に残った作品。

    ○「山荘秘聞」
    “ミザリー”もの。
    ミスリードはあからさまにちらつかせすぎていて引っかからず。
    最後の「触れれば切れそうな煉瓦のような塊」を凶器ととるか札束ととるかで解釈が変わるということなんだろうな。
    この記述をどちらととるかで屋島が行っていた「特別な渉外」の内容も変わってくるのが面白い。

    ○「玉野五十鈴の誉れ」
    一番好みの作品。私はどうにも主従の絆を描いたものに弱い。
    とはいえ、この作品を読み始めた時には前の三作を読了していたわけで、「で、また主従のどっちかが裏切るんでしょ?五十鈴?純香?」などと疑いながら読んでいた。
    五十鈴が家族を火事で亡くしていたり、以前いた辺りが別のお屋敷があるあたりだったり、他の家事は完璧なのに煮炊きだけ苦手だったりという描写があったので、五十鈴は元お嬢様なのでは?などと深読みしていたがこれは当たらず。
    使用人で「はじめちょろちょろ、中ぱっぱ」という定番を知らないの?煮炊きもやったことなかったというまでは分かるけど、そんなになかなか身につけられないか??というのは最後までひっかかっていたが、残念ながら納得できる解は得られなかった。
    単に厨房担当じゃなかった&生来料理には向いてない、ということで無理やり納得するしかないかな。

    物語は純香の一人語りで綴られ、五十鈴が何を考えているか分からないため真意が掴めず先が気になってページを繰った。
    そしてたどり着いたあの結末。
    太白のことを考えると悼ましすぎてあまり想像したくないし、純香の想像した通りの事実ならば、どう考えても狂気な振る舞いだ。
    だが、そこまでの忠誠にある種の美しさを感じ、どうしても惹かれてしまう。
    五十鈴がその真意を自身の口から語ることなく物語が閉じられるのがとてもいい。

    ○「儚い羊たちの晩餐」
    この物語自体は、「特別な料理を作る料理人」が登場し、見栄っ張りで食通を気取る成金がその料理人を雇った時点で人肉系が出るのも読めてしまい、そこに驚きはない。厨娘の描写は面白かったが。
    あと複数人殺してその場で足がつかずに戻ってくるとか、厨娘が有能殺人者すぎるのには笑ってしまった。

    どちらかというと、本作では存在感の薄かった「バベルの会」がやっと出てくることの方が重要だろう。
    バベルの会は、会長曰く、「幻想と現実を混乱してしまう儚いものたちの聖域」。
    そう考えると、ここに至るまでの4作品については「バベルの会」の関係者、すなわち所謂「信頼できない語り手」の話であり、書かれた内容は果たして真実なのか?という見方ができる、ということなのだろう。
    だが、「北の館の罪人」と「山荘秘聞」については他の作品と違って語り手が読書に耽っている描写はなく、そういった「夢想家の語り」と見るのは難しい。(屋島は令嬢に請われて怪談を披露してはいるが読書会から追い出されてはいるし読書に耽溺している印象はない)
    恐らく世間でこの短編集が評価されている理由としては、各話の仕掛けのみならず、この、本作を読む視点に対して信頼性の揺らぎを提示したからではないかと思うのだが、そうであれば全作品の語り手を、本を耽読する人物にしてほしかった。個人的にそこがとても惜しい。
    また、正直、すれた本読みにとっては一人称の語り手の話す内容を信用できないことがあるのは織り込み済みのため、今更そこまでの驚きを持てないのもある。
    この本を手に取っている読者自身が、本作中の「いつか訪れる儚い者」ということなんだろうけど、いかんせん、そう思わせられるほどの説得力に欠ける。繰り返しになるが、それならもっと「バベルの会」の存在感を全作品で漂わせて欲しかった。もしくは、少なくとも語り手は「儚い者」たちにして欲しかった。

    まあそれはともかく、この作品自体は「夢想家」である大寺鞠絵の一人語りなので、犠牲になったアミルスタン羊はいなかったのかもしれない。


    期待が大きかった分どうしても辛口になってしまうが、読んでいる間は先が気になって一気に読み終わったのは事実。
    機会があれば別作品も読んでみたい。

  • うーん
    これもまた途中からわけわからんくなってしまった、、
    ボトルネックもそうだったけど言い回しが独特なのかな、、?あんまりハマらん笑

    ただインシテミルは読みやすく安かった気がする。

  • 【味わえ、絶対零度の恐怖を】


    読書サークル“バベルの会”で繋がる短編集。
    “ラスト1行で世界が反転”の帯に惹かれ読んだ。
       
    ミステリーというより人怖なホラー感強め。
    主な登場人物は家主と仕える使用人。
    物語の全体の雰囲気としては、『本当は怖いグリム童話』を読んでいるような感じだ。

    どの物語もラスト1行は読んでいて騙された.ᐟ.ᐟという感じというより、ラストでゾクッとするような終わりになっている。
    また、含みをもたせたラストなので、読了後は考察サイトを見たり、誰かと語りたくなるような構成も面白い。
    “あれは、ああいう事だよな”と反芻してはまたゾクッとする二度楽しめる作品だ。

    短編集なので隙間時間でも手に取りやすく文章も読みやすい。


    こんな人におすすめ.ᐟ.ᐟ
    ・人怖が好きなひと
    ・どんでん返しが好きなひと
    ・意味がわかると怖い話が好きなひと

  • とある読書会でうっすらと繋がった短編が5篇収録されていた。ミステリとしてのカタルシスはそこまでないが、根本的に変化も成長もない陰鬱とした雰囲気に引き込まれた。漢文のおばあちゃんの話が好き。

  • 「大どんでん返し!」をはじめとする売り文句に惹かれて購入したが、肩透かしをくらったような…というのが正直な感想。なるほど、と思わせられる一文はあるが個人的にはもう少し謎の深いミステリを期待していた。機会があれば別の作品も読んでみたいとは思う。

  • 面白かった!と単純に言っていいのかを迷ってしまうけれど、素晴らしい短編集でした。
    時代背景や語り口、「バベルの会」とは…?
    物語の中で、私が知らない著作が沢山でてきますが、それらの内容をすぐに想像できる方は更にぞくっと面白いのではないでしょうか。
    私は古谷一行さんや石坂浩二さんが昔演じていた金田一シリーズの映像が浮かんできました。仄暗いおどろおどろしい雰囲気。

    「身内に不幸がありまして」
    一気にこの「儚い…」の世界に連れて行かれます。
    ただまだ序章だったのだとあとから気付くのですが。
    お嬢様と使用人という関係性を植え付けられた気もします。
    泉鏡花の外科室など、沢山の作品が登場します。
    途中で知らない作品をググってみると、更にその傾倒に、その世界に惹かれていく2人の共通している感性に、生涯良い友人でいられただろうに…と残念にも思います。
    殺害動機は他人からみたらくだらないのかもしれないけれど、当事者には真剣な問題なんでしょうね。

    「北の館の罪人」
    童話、宮沢賢治の「名前のないレストラン」のような感じで読んでいました。「何かあるよね、何かあるよね」って。
    絵画の材料など毎度のことながら米澤穂信さんの知識の豊富さに感心もしました。

    「山荘秘聞」
    管理人屋島守子。こういう生真面目な人っているよねーと思いながら読み進め、実は前の主人、前降家当主はそれの行き過ぎた危うさに気付いて解任したのでは…などと深読みしてしまいました。ひとりで人里離れた別荘で働いていたらどんどん融通は効かず、思い込みが強くなるばかりなんでしょうね…。

    「玉野五十鈴の誉れ」
    私はこの作品が一番印象的でした。
    これほど最後の一行が…。
    真実はわからないけど、タイトルにある「誉れ」。
    玉野五十鈴が本当は本当は生きている意味を、純香と過ごした日々の楽しさをわかっていたら良いなと。

    「儚い羊たちの祝宴」
    「羊たち」の意味が判明する最終章。
    ここにもまた厨娘という主人にある意味従順な使用人。
    どうしてそこまで仕えることが出来るのだろうか。
    語り手である「私」は誰なのだろう…という興味を残して終わる。

    どの作品も読んでいる途中で想像していたものとは異なる結末。そうきたかーという感じです。
    また米澤穂信さんの引き出しの多さに驚き、次に読む作品に期待せずにはいられません。

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著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

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