儚い羊たちの祝宴(新潮文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 面白かった!と単純に言っていいのかを迷ってしまうけれど、素晴らしい短編集でした。
    時代背景や語り口、「バベルの会」とは…?
    物語の中で、私が知らない著作が沢山でてきますが、それらの内容をすぐに想像できる方は更にぞくっと面白いのではないでしょうか。
    私は古谷一行さんや石坂浩二さんが昔演じていた金田一シリーズの映像が浮かんできました。仄暗いおどろおどろしい雰囲気。

    「身内に不幸がありまして」
    一気にこの「儚い…」の世界に連れて行かれます。
    ただまだ序章だったのだとあとから気付くのですが。
    お嬢様と使用人という関係性を植え付けられた気もします。
    泉鏡花の外科室など、沢山の作品が登場します。
    途中で知らない作品をググってみると、更にその傾倒に、その世界に惹かれていく2人の共通している感性に、生涯良い友人でいられただろうに…と残念にも思います。
    殺害動機は他人からみたらくだらないのかもしれないけれど、当事者には真剣な問題なんでしょうね。

    「北の館の罪人」
    童話、宮沢賢治の「名前のないレストラン」のような感じで読んでいました。「何かあるよね、何かあるよね」って。
    絵画の材料など毎度のことながら米澤穂信さんの知識の豊富さに感心もしました。

    「山荘秘聞」
    管理人屋島守子。こういう生真面目な人っているよねーと思いながら読み進め、実は前の主人、前降家当主はそれの行き過ぎた危うさに気付いて解任したのでは…などと深読みしてしまいました。ひとりで人里離れた別荘で働いていたらどんどん融通は効かず、思い込みが強くなるばかりなんでしょうね…。

    「玉野五十鈴の誉れ」
    私はこの作品が一番印象的でした。
    これほど最後の一行が…。
    真実はわからないけど、タイトルにある「誉れ」。
    玉野五十鈴が本当は本当は生きている意味を、純香と過ごした日々の楽しさをわかっていたら良いなと。

    「儚い羊たちの祝宴」
    「羊たち」の意味が判明する最終章。
    ここにもまた厨娘という主人にある意味従順な使用人。
    どうしてそこまで仕えることが出来るのだろうか。
    語り手である「私」は誰なのだろう…という興味を残して終わる。

    どの作品も読んでいる途中で想像していたものとは異なる結末。そうきたかーという感じです。
    また米澤穂信さんの引き出しの多さに驚き、次に読む作品に期待せずにはいられません。

  • 「バベルの会」というお嬢様たちの読書会にまつわるオムニバス小説。直接関わりのあるものから、ほんのりと存在をほのめかす程度のものまであり、どの短編も終わり方が美しくそして恐ろしくて個人的に好きだった。アミルスタン羊の本当の意味を知ったときの恐ろしさもヤバい。

  • どの章も最後まで読み終わるとフッと風が吹くようだった。一章一章読み終えるたび、しばらく気持ち悪さの余韻に浸っていたいような本だった。

  • 大好き

  • 五つの短編。共通するのは「バベルの会」という女子大生の読書サークル。しかし、それが前面に出てくることはない。多分、戦前の金持ちの家の子女と、それに仕える少女。家のために品行方正な生活を送り、読書好きで夢見がちなお嬢様が共通点。同年齢でありながら主従の関係、家という歪んだ存在の中で、幻想的でありながら残酷な死が訪れる。読後感はちょっと背筋が寒くなるものだけど、それぞれに面白かった。

  • 読み応えあったし良かった。「バベルの会」活動メインの本もあるのかな?と思ったけど、あの結末ではないか。
    にしても、あのお泊まり会、部員どんだけキャンセルすんねん、人集まってるんか?
    行かない方がいいと思うけども…。

    他の方の感想も見たら「後味悪い、癖がある」「万人受けしない」って結構書かれてて驚いた、独白調?だから文体に癖はあると思うけど、物語自体にそこまで癖はなくないか?

    ちなみに、私は表題作が好きです。
    この主人公、狡猾で夢想家ではなかったけれど、強くもなりきれず狂っちゃうのサイコー

  •  久しぶりに本を読む時に、この本を選んで良かったと思った。全ての話に登場する「バベルの会」というものがなんなのか、話を読み進めるにつれて少しずつ明らかになっていく。
     個人的には4つ目の「玉野五十鈴の誉れ」という話が1番心に残った。ラスト1行でのどんでん返しとはまさにこのことだなと感じた1作品である。

  • 面白かった。サスペンスで謎が残る形で終わり自分でとく必要のある小説もあり、短編のようで話が繋がっていくのだが、解説がないと理解しづらい所もあった。
    ただ、話の流れや文章など読みやすく入り込みやすかった。

    解説を読むと納得でき、秘められたストーリーに驚愕する。

  • 裕福な家庭に生まれ育った少女たちが、己の欲の為に残酷なことを平気でやってのける、この倫理観に欠けた感じが好き

  • 5篇からなる短編集ですが、いずれも何かしら『バベルの会』という読書サークルに関係する話。

    ダークミステリーなため、苦手意識はあったのですが、面白かったです。

    短編集のミステリーは、構成が難しく長編に比べ面白い!と感じる本が少ない、と個人的に感じていた中、本作は全て伏線が巧みに感じました。

    勿論、短編ですので、個々の登場人物は少なく、犯人や落ちが読めてしまうかもしれません。

    ただ、本作はそれぞれが上手だなと、感じました。
    米澤穂信さんは初めてでしたが、他の作品も読んでみたくなりました☺

著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

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