- Amazon.co.jp ・電子書籍 (269ページ)
感想・レビュー・書評
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【どうして真夜中には光しかないの】
34歳フリー校閲者
友人も彼氏もなく
ひっそりと生きている冬子は
誕生日(12/24)の真夜中に
ふと1人で散歩に出た
夜の光だけが密かに祝ってくれた
酒、仕事、友人、恋、嘘…
こんなに美しくて悲しい物語を
私は他に知らない詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
どうしたらここまで拗らせられるのかと思うほど不器用に生きている冬子。自分の意志や考えをはっきり持たず、流されるままに生きている。
そんな冬子は周りの人からキツイ言葉を浴びせられることもある。特にショックだったのは、長らく会っていなかった友人が自分の近況を思う存分話した最後に、「もう冬子は自分の人生の登場人物じゃないから何でも話せる」という言葉。これは自分だったらかなり堪える。
そんな30代半ばの冬子が初めて、自分の話をしたいと思った初恋相手。言葉を噛み締め、2人の間に流れる静かで穏やかな時間は初々しくもあり大人の楽しみ方でもあるようで良かった。
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川上未映子先生による長編恋愛小説。
主人公の冬子はミドサーの校閲フリーランスで,自分に自信が持てない独身女性。偶然にも、出会った50代高校教諭の三束との大人の恋愛作品。
正直なところ、24歳の甘たれ坊主が共感できる内容ではなかった。終盤の「みんな各々考え方があり常識や強さは人それぞれである」といったシーンは非常に共感でき、少し押し付けつのある私も自分の行動を少し振り返る必要があると感じた。この大人の恋愛観に追いつけるようになりたいが、私はいつまでも子供のままでもいたいなと思った。 -
ゆっくりと進む展開なのに、はらはらしながら読みました。最後はホロリとさせられて、胸が締め付けられるお話し。主人公にとって、誰にとっても、こうした切ない経験が人生の大切な宝ものになるのだと共感しました。
おとなの純愛ですね✨ -
後半の冬子の夢と泣きながらの告白に胸を打たれた。初めて恋をした時の、胸の奥が痛くて切ない気持ちの表現がうまい。でもそれが幸せに感じられる。失ってもなお燃え続け、やがて嘘のように消えていく。
人生は選択の連続で、今の状況はすべて自分が選んだこと。(例外はあるけど)冬子も自分で選んできた訳で、ただそれが能動的ではなかったというだけ。
始まっているのかいないのかわからないけど、ただそこに幸せなひとときがあっただけの恋。それだけで終わってしまった恋。「私と寝たいと思ったことはありますか」 -
真夜中のように静かで全てを吸収するようなヒロイン、
恋した人、外形的には静かに始った恋を経ての、怒涛の感情の波に呑まれ、そして波は引いていき、恋の終わりに「言葉」が残る。
漆黒の闇を手探りでいるような掴みどころの無さ、漠然とした思い。
反するように他の登場人物達は真昼のように生(なま)で雄弁でカラフルで主人公たちのモノクロームさが浮かびあがる。
三束さんは本当に謎の人で、
掴みどころの無い人に惹かれるというのもあるんだろう。 -
主人公自身の感覚とつながったものが描かれているところはフィットするのだけれど、主人公の外側で完結している部分の描かれ方が私にはフィットしなかったなぁって感じがしました。主人公の心に澱を溜めていく周囲の人々が主人公とは関係ないことで語る場面が多いのですけども、そこが恣意的にキツめに書かれている感じがしたというか…その人たちの内にもある本当は割り切れない部分の四捨五入の仕方が、少し嘘っぽさをはらんでしまってるように感じられました。
でも、主人公が、生き抜くことの必死さの反映のように三束さんを好きになったり、生きていくのが苦しくてなんにも頑張れなくなってしまったり、好きという気持ちがついに決壊してしまったりするときの堪らない感じは、共感できるものがありました。