孤独の価値 [Kindle]

著者 :
  • 幻冬舎
3.57
  • (11)
  • (27)
  • (23)
  • (4)
  • (3)
本棚登録 : 296
感想 : 28
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (125ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • JOKERとあいちトリエンナーレの騒動を体験したあとに読んだのは象徴的だった。
    “芸術というのは、人間の最も醜いもの、最も虚しいもの、最も悲しいもの、そういったマイナスのものをプラスに変換する行為”
    映画や読書の感想で「刺さった」という表現がある。なにかが刺されば痛みを伴う。ひとは痛みを嫌悪する。科学的には痛みは身体的に危険な状況のウォーニング。嫌悪すべき痛みは「知恵」をもたらす。そう考えれば、「芸術」とは心地よくさせるデパートのショーケースではなく、「ひとを痛みで進歩させるもの」と言える。
    JOKERをハリウッドテンプレで作ればサイコ・スリラーになったろう。あの映画はぼくにとって抜けない刺でありおそらく一生ついて回る問いになった。
    その問いを言葉で説明しようとするとどれも上滑りで置いた言葉になってしまう。この問いはシェアする内容ではなく自分ひとりが孤独に抱え込む闇だ。それは自分の大きな荷物かと思っていたけど、本書を読んで孤独に問えることって幸せなことなのかもと思った。
    テレビでも映画でも政治の世界でも「断言する人間」って苦手だ。彼彼女らが断言するのは相手に考えさせたくないから。相手の考える時間を空虚な言葉で埋めて消し去りたいから。
    孤独とは自分に問える時間があること。そして同時にその結果に自分で責任を取ることと言える。

    おそらく現代のコミュニケーションに欠けているのは共感力ではなく、孤独感、言い換えれば距離感なのかもしれない。自ら完結せずしてひとの事を思いやることは出来ない。

    本の感想とは違うかたちになったけど、自分の考え方の一助になった内容だった。

  • 孤独は悪いといった価値観がリアルやテレビやネットで当たり前の価値観として浸透している。しかし、孤独の時間があるから想像できるし、思考も整理される。だから孤独の時間は決して無駄ではないし、人間にとって必ず必要。孤独を悪いと思い込む方がよっぽど良くない。自分は1人の時間で読書をしたり思考する時間が好きである。この時間があるからこそ知識が増えるし、自分の中で大事にしたいことに気づけたりする。孤独は悪いものでないし、これからも世間の価値観に流されずに自分はどうなのか?考えれる人でありたい。

    ◎ページ
    59.60.63.64.65.66.75.78.80.86.106.108

  • 生きる上で「孤独」という感覚は避けられないもの、心の底に多かれ少なかれ、ずっと維持されるイメージでいた。人は所詮1人、というか、わかり合うということの幻想というか。
    それよりも、この本では振り子のような形で孤独の有無を表現していて、その点が意外だった。
    あまり重厚な内容ではないが、数時間でさらっと読めて良かった。

  • 孤独を恐れて自分を見失ってはいけないということですね。小さい頃は人に合わせる、人と競うということを徹底的にやらされるので、そこから外れた人間は孤独を感じるのでしょうけど、実際はそれは孤独ではない。
    そう考えると、最近のメンタルとか引きこもりとか自殺の問題って、幼少時の教育の問題のような気がしてきました。もっと自由に人と触れ合って、自分に素直な子供を育てなければいけないということですね。

  • 特別な魅力や才能がなくていてもいなくてもいいような存在だから孤独を感じるというようなことが書いてあって、本当にその通りだなと思った。

  • 孤独、寂しさ、自由

  • 話題の作家、森博嗣さんのエッセイ。
    タイトル的にジャケ買いした。
    小説などは読んだことないのだが、まずエッセイから入るのが私の流派。
    森さんは国家公務員を勤め上げた後、作家となり、最近では田舎に引っ込んで静かに暮らしているようだ。
    特に1日における仕事の時間を1時間と決めており、それによってストレスが大幅に削減されたという。
    そんな思考するには十分な環境において、孤独の価値について言及している。

    あくまで一個人の見解ではあるが、孤独こそが創作における源泉であるということには納得した。
    人と接している時にアイデアは出ても、クリエイティブ性はそんなにないからだ。
    創発性は、その時の接触により他家受粉し、その後花開くというのが持論。
    とにかく、興味深い考察だったし、200P以下なので、サクッと読めるしおすすめ。

    ■目次
    第1章 何故孤独は寂しいのか
    (孤独とは何か 孤独を感じる条件 ほか)
    第2章 何故寂しいといけないのか
    (寂しさという感覚 孤独を怖れる理由 ほか)
    第3章 人間には孤独が必要である
    (個人でも生きやすくなった 僕はほとんど人に会わない ほか)
    第4章 孤独から生まれる美意識
    (人間の仕事の変遷 わびさびの文化 ほか)
    第5章 孤独を受け入れる方法
    (詩を作ってみよう 逃げ道を探す ほか)

著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

森博嗣の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×