この闇と光 (角川文庫) [Kindle]

著者 :
  • KADOKAWA
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感想・レビュー・書評

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  • なんとも独特の世界観から始まり、途中で、えーっ⁉️て驚き、最後、え?あれ?どっちがどう?って感じな結末でした。
    本書がミステリーかで意見が別れるみたいですが、作者はきっとこういう世界を描きたかったのかな、と思いました。面白かったです。

  • 森の奥の邸宅で軟禁状態で暮らす「盲目の王女」である主人公は敵国の意地悪な「使用人の女」と「兵士」に睨まれ外に出ることは叶わぬものの優しい父王である「おとうさま」にドレスと物語と知識と愛を惜しみなく与えられ甘く幸せな日々を送る…が、しかし。

    衝撃の展開があるぞ、すごいどんでん返しがあるぞ、との触れ込みだったので身構えて慎重に読み進めたので真相は9割くらい当たり。兵士の存在だけは読みきれませんでした。

    ミステリとしてはその誤認トリックとホワイダニット物でしょうか。中盤で主人公は唐突に闇から開放されて光を得たものの思い描いていた美しい世界とは全く違う凡庸さと醜さに幻滅し、終章で「おとうさま」と再会しその深い闇に再び取り込まれるような形で幕引き。おそらくそこまでが計算の内なのでしょう。

    なるほどこれがメリーバッドエンドってやつですか。

  • 予備知識なく読んで、「ヤラれた!」感を楽しんで欲しい、と言う紹介を見て購入。

    とりあえずどんでん返し的な何かがあるんだろう、くらいに読み始める。

    読み始めたら読み切れ!がモットーなのだけども、序盤、前半はつらい。

    想像力が微妙な、若い人向けに書かれた西洋ファンタジーなのか?でもところどころ現代のものが紛れ込んでる。英語圏と現代で戦争してる王国で、西洋的メルヘンなピクニックが可能で、それを楽しむ国って?夏目漱石が翻訳されて、音声で出回ってるような時代?何なの?の不可解のオンパレード…という意味で。

    どんでん返しがあるという前提を知らなきゃ絶対読まないであろう書き方の前半。トーンが掴めん。

    …その種明かしの後半。

    そこは面白かった。思う以上に、二転三転の返しがあった。

    美しいものだけに囲まれて生きることって、可能なのかしら?

    清濁併せ呑む度量がないと、人を見下すか、脳内お花畑な人間にしかならない。さもなくば、その不具合を補うだけの突き抜け方をしなくては、きっとこの世では生き残れない。

    そしてその主義を貫いて子を育てるなら、最期まで面倒見ろよ?さもなくば、悲劇にしかならんだろ?

    …ということなのだろうか。

    色んな情報を得られ、色んな生き方のできる現代において、過去の「美しいもののイメージの断片」をつなぎ合わせて、「自分にとっての美しさ」を規定する選択があって良いと思うけれども、「新しい美しさの価値」を規定する選択だって、あっていい。ただその両方の牌が既に、埋まってしまっている場合、我々は何を持って美しいものを、決めていけるんだろう?新たな価値を、考える必要を、少し思った。

  • それまで形作られ自分のすべてだと思われた世界がガラッと一変する時の快感。小さな箱庭で歪な愛が織りなす光と音と感触のみの曖昧な世界が本当に美しかった。
    ラストがとても好きだ。これまで読んできた「レイア 一」「レイア 二」は主人公の体験談であること、その原稿を「父」=「原口孝夫」=「D」に添削してもらうこと、つまり物語上に描かれる「父」の姿は「レイア」視点のものであり、「父」の思惑については想像でしかなく真実は闇の中である。自分が経験した物語を「神」に献上する、「神」は真実を一切語らず、物語について「あなたには文才がある」と評するだけだ。蒸し返す夏の逆光の中で笑う彼はまさに光と闇の神、アブラクサスであり、物語の真相は「父」…神のみぞ知るのである。

  • レビューは未定。

    評価は4.5つ星です✩

  • 超どんでん返しを期待してしまっていた、、
    「神の意思はランダム」

  • 耽美な世界観で、どんでん返しがある、というのだけ聞いていたので注意しながら読んでみたら、途中の違和感から真相は想像できた。

    敵国に捕らえられ軟禁生活を送りながらも父王からの愛を惜しみなく与えられて育った盲目の王女レイア。ある日その生活が一変し全てを失ってしまうが…


    盲目の闇の世界から突如解放されて現実の世界を知る主人公だが、見えなかった頃の世界の美しさと現実の醜さ、凡俗さとのギャップがすごい。

    映像化は絶対できない作品だよなぁ…こういう文章ならではの仕掛けは大好き。

  • 面白いから読んでみて!と貸したら、絶対2、3日で帰ってくる本。そしてみんな興奮して自分なりの考察を話してくれる。

    自分の見ていた世界が崩壊していくのが、なんとも言えない気持ちよさ。
    自分よりも非力な弱い存在の瞳の中にかつて非力だった自分が見えてしまった王様も寂しいが、負の財産を受け取ってしまったレイア姫も相当寂しい。

    P126「神の意志はランダム!」

  • 中盤あたりからは驚きっぱなし。先入観を打ち砕かれた面白い作品。

  • どんでん返しがあるっていう情報だけ持って、読み進めていったけど見事に騙された!なんかおかしいなって思うところもあったけど、結局分からなかったし、思ってたよりも早めにどんでん返しがくるんだなと思いました。ラストの父の反応も予想外でした。真実を話すと思ってたのに知らないふりをするとは…

著者プロフィール

1948年生まれ。版画家。日仏現代美術展でビブリオティック・デ・ザール賞受賞。『時のアラベスク』で横溝正史賞を受賞しデビュー。著書に『この闇と光』、『一八八八 切り裂きジャック』(角川文庫)など。

「2019年 『最後の楽園 服部まゆみ全短編集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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