「自分」の壁(新潮新書) 「壁」シリーズ [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 印象に残ったところメモ。
    ・自分と世界の区別がつくのは、脳がそう線引きをしているから
    ・誰かが感情的な批判をするときは、そのどこかに嘘がある。
    ・すんなり馴染めないからこそ、私は世間を関心の対象としてきました。
    ・世間をよくしたい、と本気で考えるならば、その人は、まず世間に入らなくてはなりません、そうすると、いろんな人がいる、いろんな考えがあるということが、よくわかるはずです。
    ・ネット経由のつきあいにおいては、どうしても「ノイズ」が消えていく。(→良い部分、あるいは悪い部分のみが抽出され、極端に強調される)
    ・誰がやってもたいへんだけれども、誰かがしなくてはいけないことをやる。...仕事というもの自体が、本質的に「個」をつっぱるわけにはいかないものです。
    ・私は、ある種の苦しさ、つまり負荷があったほうが生きていることを実感できるのではないか、と考えています。それが生きているということなんだろう、と。
    ・常に他人と関わり、状況を背負うということをしているうちに、なんとなく自分の「胃袋」の強さが見えてくるのです。...自分がどの程度のものまで飲み込むことができるのか。さまざまな人とつきあうことは、それを知るために役に立ちます。
    ・なにかにぶつかり、迷い、挑戦し、失敗し、ということを繰り返すことになります。しかし、そうやって自分で育ててきた感覚のことを「自信」というのです。

  • 久しぶりに養老孟司の本を読んだ。別の本で読んだ内容が含まれるため読みやすく感じる。毎度のことながら「老人の知恵はすごいな」と思う。しかし、巷の高齢者を見れば、視野が狭くわがままな人がほとんどである。それは「老い」が「頭が硬くなること」とほぼ同義であることを示している。
    養老先生の本を読むとその内容よりも、
    ・勉強すること
    ・本をよむこと
    ・自分の頭で考えること
    ・体を動かして身につけること
    が大事であることを痛感する。
    そして、記述内容の上位に位置する「メタメッセージ」が本書を貫くキーワードである。それは、インターネットによって情報そのものと同時に増えている。受け取った情報からメタ的な概念を創出し、知らず知らずのうちに前提としてしまうメタメッセージには落とし穴があるのではないか、または、そのメタメッセージ同士がぶつかるような現場もまた増えるのではないか、というのは慧眼であろう。
    ちなみに、以下の6冊を「壁シリーズ」と呼ぶらしい。
    『バカの壁』:2003 年発刊
    『死の壁』:2004 年発刊
    『超バカの壁』:2006 年発刊
    『「自分」の壁』:2014 年発刊
    『遺言』:2017 年発刊
    『ヒトの壁』:2021 年発刊

  • 自分が学生の頃の20年程前、自分探し、アイデンティティという言葉が流行った。個性が大事と言われる環境で私も生きてきたが、本当の自分を探すといっても、じゃあそれを探している自分は誰何だとなる。自己とか個性が大事というが、世の中は流動的であり、自分とは大きな地図の中の矢印、現在位置でしかない。生物学的にもヒトは体内で細菌やウイルスと共生し、食物から身体は作られる。ヒトは環境の一部に過ぎない。バカの壁を読んだ中で、「個性」についての話があり、いまいちピンと来なかったが、養老先生が言いたいことがこの本で少し分かった気がした。
    本の最後に自信についての記述がある。社会での生活は自分だけで完結するものではなく、壁にぶつかることも多々ある。楽することはできるし、そういう気持ちは生まれるが、時々違和感を持つことがある。迷い、失敗しながらでないと自信という感覚は育たない、そういう気持ちを思い出したい時には、またこの本を読み返してみたい。

  • キーワード:自分という矢印、自分と世界の一体化、生物の本質(共同体)

    全体を通して著者の体験から構成されているが、読みながら「人生への捉え方や考え方」が今まで触れたことのないものだった。

    誰もが遅かれ早かれ、「自分というものは何か」「自分は人生において何がしたいのか」ということを考える時期が来る。
    そこでほとんどの人は矢印が「自分」にしか向いていない。
    この「自分」は単体で成り立っているのではなくあらゆる人とのつながりで成り立っているということが頭に入っていない。
    そこで著者は「生物の本質」「共同体」という言葉を使って「個」がどうやってできているかを分かりやすく説明している。

    つまり「自分は人生において何がやりたいのか」ではなく、「自分と世界の一体化」を意識して「自分は人に、世の中に対して何ができるか」と問うことが大事。

    そしてさらに「特攻隊」を例に挙げている。
    特攻隊の人たちは何のために自らの命を懸けて戦争に行くのか?それは家族、国民、大切な人たちを守るためだと言っている。これも矢印が他者に向いている。
    他者貢献、社会貢献を目的にすると、自分の内から湧いてくるエネルギー量が違うのだろうか。特攻隊は少し極端な例かもしれないので、自己犠牲と他者貢献のバランスも大事になってくるだろう。

    人それぞれ人生の目的があるかもしれないが、今一度、自分への問いかけを「自分中心」から「他者思考」に変えてみることによってまた違った答えがでるのではないだろうか。

著者プロフィール

養老 孟司(ようろう・たけし):1937年神奈川県鎌倉市生まれ。東京大学名誉教授。医学博士(解剖学)。『からだの見方』でサントリー学芸賞受賞。『バカの壁』(新潮社)で毎日出版文化賞特別賞受賞。同書は450万部を超えるベストセラー。対談、共著、講演録を含め、著書は200冊近い。近著に『養老先生、病院へ行く』『養老先生、再び病院へ行く』(中川恵一共著、エクスナレッジ)『〈自分〉を知りたい君たちへ 読書の壁』(毎日新聞出版)、『ものがわかるということ』(祥伝社)など。

「2023年 『ヒトの幸福とはなにか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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