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- Amazon.co.jp ・電子書籍 (193ページ)
感想・レビュー・書評
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藤原辰史著『縁食論』の中で紹介されていた本。東京の貧民街とされるところで生まれ育った筆者の回想録。1938年生まれ、戦争前から戦中・戦後にかけての思い出が綴られている。まだ戦争が始まったばかりの頃は、貧しさより、むき出しの個性的な大人たちの描写がすごい。この時期の描写には、貧しさゆえにお互い助け合いながら暮らす暖かめな雰囲気がある。本格的な貧困が始まる戦後の話はすさまじい。筆者の家庭は父親がおらず、母親の少ない稼ぎで得られる食料を分け合わなくてはならない。この家の分け前を当てにしている戦災孤児に対して、とうとうあげる食糧がなくなり、その後の顛末が本当に悲しかった。暴力、喧嘩の描写がリアル。筆者の武勇伝(?)と共に、様々な激しいエピソードが並ぶ。そんな貧しさの中にあっても、自分の育った地、出会った大人たちへの描写に、筆者の深い愛情を感じた。貧しさの悲しさを感じると共に、殴り合いの本物の喧嘩は何か人を育てる要素があるのか?そういうことに無縁な私は何か大切なことが欠けているの?と変なことも感じてしまいました。
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