マルクス・アウレーリウス 自省録 (岩波文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 実はミステリという勿れというドラマを見ていて、出てきたので読んでみた。最初はローマの皇帝が本を書いてて、それが残ってる?という感じで、全く存在を知らなかったのだった。図書館で少し待ってようやく手にした感想。
    20代の頃のような熱量で自分を戒めたり鼓舞したりする内容を最初から最後まで書き綴っているのが凄い。
    大きな帝国を統治した実務的な人であったろうに、あるいは政敵にも悩まされて苦労の多い生活でもあったろうに、「すべて自然にかなう言動は君にふさわしいものと考えるべし~私は自然にかなう道を歩み、そして時が来れば倒れて休息し、毎日吸い込んでいた空気の中へ最後の息を吐きだし…」という淡々とした気持ちで過ごしていた、あるいはそうあろうとしていた哲学者としての姿勢が強かった点にも驚いた。

  • 【心に残った名言】
    ・これ以上理性を奴隷の状態におくな。利己的な衝動にあやつられるがままにしておくな。また現在与えられているものにたいして不満を持ち、未来に来るべきものにたいして不安をいだくことを許すな。

    ・思い起せ、君はどれほど前からこれらのことを延期しているか、またいくたび神々から機会を与えて頂いておきながらこれを利用しなかったか。しかし今こそ自覚しなくてはならない、君がいかなる宇宙の一部分であるか、その宇宙のいかなる支配者の放射物であるかということを。そして君には一定の時の制限が加えられており、その時を用いて心に光明をとり入れないなら、時は過ぎ去り、君も過ぎ去り、機会は二度と再び君のものとならないであろうことを。

    ・公益を目的とするのでないかぎり、他人に関する思いで君の余生を消耗してしまうな。なぜならばそうすることによって君は他の仕事をする機会を失うのだ。すなわち、だれそれはなにをしているだろう、とか、なぜとか、なにをして、なにを考え、なにを企んでいるかとか、こんなことがみな君を呆然とさせ、自己の内なる 指導理性 を注意深く見守る妨げとなるのだ。

    ・もっともよい復讐の方法は自分まで同じような行為をしないこと

    ・一緒になって大きな声で嘆かぬこと、騒がぬこと

    ・あらゆる行動に際して一歩ごとに立止まり、自ら問うて見よ。「死ねばこれができなくなるという理由で死が恐るべきものとなるだろうか」と。

    【総括】
    約2000年前の人間が現代の生活にも通ずる数々の悩みを抱き、それに対して自問し答えをだそうとしていた姿勢に感動しました。
    また彼は大帝国ローマの皇帝でありながらも哲学を手放さなかった点からも、哲学のという学問の大切さを感じました。

  • ローマの皇帝だった人のものだということですが、
    読むと思いのほか自己啓発本じみている。

    日々の振返りや本を読んで感じたことや気に入った文章などが
    細かい断章となって構成されていてSNSがあったら
    どっぷり浸かってそうな皇帝ですね。

    言葉として表れているのは
    背筋が伸びるようなものが多いですが、
    それは彫刻のようにビシッとしてたからというわけではないでしょう。

    皇帝という立場はあれこれ言われるし、厄介事も入ってくるし
    それで泣き言もあんま言えないしで、そのたびにこうやって振り返ることで
    冷静さと明晰さを保とうとしたんでしょうね。

    冷静に見える言葉を書き記す向こう側に
    動揺を鎮めようとする皇帝の姿を思うと
    日々の惑いは大昔の皇帝でもさして変わらないものがあるんだなと親近感を感じます。

    SNSでの儲け方は書いてありませんが、
    意志の弱さに悩む人の手元にあれば支えてくれる一冊だと思います。



    >>
    これ以上さまよい歩くな。君はもう君の覚書や古代ローマ・ギリシア人の言行録や晩年のために取っておいた書物の抄録などを読む機会はないだろう。だから終局の目的に向かっていそげ。そしてもし自分のことが気にかかるならば、空しい希望を棄てて許されている間に自分自身を救うがよい。(p.46)
    <<

    この覚書が本書のことか定かでないと訳注は入っているものの
    この文章のアンビバレントな状況は明らかで皇帝の動揺が窺える。

    >>
    君は理性を持っているのか?「持っている。」それならなぜそれを使わないのか。もしそれがその分を果たしているならば、そのうえ何を望むのか。(p.54)
    <<

    皇帝は人間に許された善性である理性を尊んでいると同時に
    その行使の難しさも感じている。現代人と同じように。

    >>
    すべてかりそめにすぎない。おぼえる者もおぼえられる者も。(p.63)
    <<

    ときに、儚げな世をぼそっとつぶやく。

    >>
    君が善事をなし、他人が君のおかげで善い思いをしたときに、なぜ君は馬鹿者どものごとく、そのほかにまだ第三のものを求め、善いことをしたという評判や、その報酬を受けたいなどと考えるのか。(p.140)
    <<

    ちょいちょい毒を吐く皇帝。
    レスバ皇帝。

    >>
    善い人間のあり方如何について論ずるのはもういい加減で切り上げて善い人間になったらどうだ。(p.197)
    <<

    とはいえ、矛先はおそらくこれも自分についてであろう。
    善い人間のあり方如何についてたくさん書いてきたからね。

    もう少し長い断章もありますが、取り上げやすいので短いやつからの紹介でした。

  • ドラマ「ミステリと云う勿れ」で登場してきたので、興味を惹かれて購入してみました。
    自省録の名の通り、古代ローマ皇帝だったマルクス・アウレーリウスが哲学的に自身の人生を振り返り、教訓として残しています。
    2023年のいまでも当てはまることが多く、人の生における問題は根本的にはあまり変わらないのだなと思い知ります。
    若者はもちろん、齢を重ねた人も、何より政治家の皆さんに読んでいただきたい一冊です。
    十分に値段だけの価値はありました。

  • 毎日少しずつ読んで、ようやく読了。難しかった。



    ==以下、いくつか印象に残った文章==


    ▼第四巻
    一七 あたかも一万年も生きるかのように行動するな。不可避のものが君の上にかかっている。生きているうちに、許されている間に、善き人たれ。

    ▼第六巻
    六 もっともよい復讐の方法は自分まで同じような行為をしないことだ。

    ▼第九巻
    五 あることをなしたために不正である場合のみならず、あることをなさないために不正である場合も少なくない。

    ▼第一一巻
    一八(一部抜粋) ひどく腹が立ったり悲しかったりするときには、人間の一生は短いこと、まもなく我々はみな墓に横たえられることを考えるがよい。

    一八(一部抜粋) 怒るのは男らしいことではない。柔和で礼節あることこそ一層人間らしく、同じく一層男らしいのである。

  • 人生を良い方向に変えてくれた

  • 一自分の内を見よ。内にこそ善の泉があり、この泉は君がたえず掘り下げさえすれば、たえず湧き出るであろう。
    一すべては主観にすぎないことを思え。その主観は君の力でどうにでもなるのだ。
    一この世界で大きな価値のあることはただ一つ、嘘つきや不正の人びとにたいしては寛大な心をいだきつつ、真実と正義の中に一生を過すことである。
    一人類はお互い同士のために創られた。ゆえに彼らを教えるか、さもなくば耐え忍べ。

    自分自身の生き方の指針となる。
    道に迷った時に読み返したい本。


  • 「コントロールできないことは、軽くみてコントロールできることに重きを置く」
    とくに人。クソヤロウはどこまでいっても、クソヤロウだ。コントロールできない人には、引っ張られるな。

    見返りを求めず、ただ与えよ。
    ギブアンドテイクから降りる。
    ただただ与えたい、その気持ちを大事にするんだ。


    コントロールできないことは、軽くみてコントロールできることに重きを置くことは、前に伝えた通り。
    これは未来や過去についても同じだ。未来や過去なぞ、コントロールできない。今、この瞬間をただ楽しむ。生きるのだ。
    投資なんか本当は、してる暇はない。

  • 2000年前の為政者とは思えない考え方に驚きました。

  • なんと、神谷恵美子さんが翻訳していたとは!?
    何にも知らずにAudibleで手に取って聴き、最後に神谷恵美子さんこの名前が出てビックリしました。

    Audibleで垂れ流していたので、聴けてるところと聴けてないところがありますが、何となく全体的にインディアンの教えに似たような感覚が湧きました。特にインディアンの教えに詳しいわけではないですが、大地に耳を傾け、自然に寄り添って生きていこうとするならば、自省録では、うちなる自分に耳を傾けて、自然に寄り添って生きていこう、と言ってる気がしました。
    自省録の中で自然という単語がよく出てきましたが、インディアンのいう自然と、内なる声のような仏教用語の自然(じねん)のことなのかは、実はよく分からなかったです。

    最後の解説で、マルクス・アウレリウスは特に新しい思想を言っておらず、ストラ哲学をただ実践しただけと言っていましたが、西暦150年くらいの大昔の実践録が、現代でもその悩みが理解できるのが、なんか人間ってこんなもんなのかなって思わせてくれました。

    理性を大事にしよう
    自分のうちなる声に従おう

    自分の人生を歩もうと言ってくれたアドラー心理学と実は同じことを言っていて、1800年近く変わらない幸福になる道なのかもなって思いました。

    記憶に残っているフレーズはないのですが、いちじくが例えで出てきたことがなんか印象に残っていて、1800年もの大昔にもいちじくはあったんだな、味は今と同じなのかなと、今と昔がつながる共通項が出てテンション上がりました。

    古典から変わらないものを考えよう

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著者プロフィール

1914-1979。岡山に生まれる。1935年津田英学塾卒業。1938年渡米、1940年からコロンビア大学医学進学課程で学ぶ。1941年東京女子医学専門学校(現・東京女子医科大学)入学。1943年夏、長島愛生園で診療実習等を行う。1944年東京女子医専卒業。東京大学精神科医局入局。1952年大阪大学医学部神経科入局。1957-72年長島愛生園精神科勤務(1965-1967年精神科医長)。1960-64年神戸女学院大学教授。1963-76年津田塾大学教授。医学博士。1979年10月22日没。

「2020年 『ある作家の日記 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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