切り裂きジャックの告白 刑事犬養隼人 「刑事犬養隼人」シリーズ (角川文庫) [Kindle]

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  • KADOKAWA
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感想・レビュー・書評

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  • 2回目の読了。この作者の作品は読んだ限りどれも好み。特に本作は二転三転があって面白い。

  • 最後にえいやってひっくり返された。
    絶対、外科医が犯人だと思ったのに!!笑

    臓器移植の倫理観が問われる作品。もちろん、ミステリーとして娯楽小説には変わらないんだけど、本当に考えさせられた。
    まだあたたかい家族が手術室から戻ってきた時には冷たくなって帰ってくる的な描写はぐさっとくるものがある。

    麻酔科医が麻酔薬を間違えて臓器障害が起こるかもしれないから、殺人を犯すってのは、わーおってかんじ

  • 2023.03.19
    気持ち的には⭐︎もうひとつつけたい。
    どんどん読み進めたくなったので。

  • 犬養刑事シリーズの第1作。
    他シリーズでお馴染みの古手川刑事や光崎教授なども登場し、中山七里ワールドが展開されるのが楽しい。犬養を育てた(?)毒島は残念ながら出てこない。
    本作は臓器移植の問題を取り上げており、その賛否論も興味深いが、早くiPS細胞による移植が実用化されないかな~と思いながら読んでいた。

  • 本作は中山七里の<犬養隼人シリーズ>というシリーズ物の一作である。本シリーズの第一作目であるらしい。これを手にしたのは、Amazonでタイムセールの対象となっていたため、いずれ読もうとは思っていたが急遽購入した。こんなことが、とある一冊の本との出会いとなることもある。

    本作では、臓器移植という重いテーマが通奏低音となる。物語が始まるや否や、すべての内臓が抉り取られた死体が発見される。川を挟んで警察署の目の前にある公園で、とても素人技とは思えない鮮やかな手さばきで、被害者のあらゆる内臓はきれいに抜き取られていた。
    この段階ではまだ臓器移植というテーマは完全に後景化されており、一見して猟奇殺人事件としか思われない。読者の多くも、そのイメージに誘われるだろう。
    だが平成の切り裂きジャックを自称した犯人は、マスコミや警視庁を手玉に取り、二人目そして三人目に手をかける。同時に臓器移植や脳死問題が、捜査過程が描かれる中で前景に表出してくる。捜査が進むにつれ、少しずつ犯人像は明らかになってゆくが、あと少しのところで同じドナーから臓器提供を受けた患者がジャックの手にかかる。残された患者はあと一人。絶対にジャックから守らねばならないという使命感と同時に、何としても最後の患者に接触するであろうジャックを確保しなければならない警視庁の刑事たちの焦燥は読みどころだろう。

    ミステリー小説としては、警察と自ら「切り裂きジャック」を名乗る犯人との息も詰まるような攻防が楽しめる。同時に、臓器移植手術という制度、ひいては「脳死」という概念に対して我が国が抱える問題点が浮き彫りにされる。著者の問題意識は、物語の中に散りばめられている。諸外国と同様、日本も法治国家を標榜しているが、それを支える法自体が利権が優先し、拙速な議論で作られているために、十分機能しないばかりか余計な軋轢をも呼んでしまうことがよくわかる。
    幸運にも臓器移植を受けられた患者が継続的に受ける苦痛も余すところなく描かれている。
    「脳死」という、いわば完全に「死」に至っていない段階についても、著者は筆を割いている。脳死患者から臓器を摘出する際に、患者には麻酔がかけられる。概念的には死んでいるはずの患者に、麻酔をかけなければならない矛盾。臓器移植にまつわるこうした矛盾を、著者は曖昧にしない。
    ゆえに、読者は一流のミステリーを楽しみながら、臓器移植や脳死といった制度の是非について思いを巡らすことになるだろう。現在に至るまで、日本の政治家が常に利権を優先し、自分とその周辺にのみ利益誘導を図った結果、さまざまな制度設計の欠陥が浮き彫りになる様を、この物語は臓器移植という側面から浮き彫りにする。

    物語の雰囲気は「社会派」というと大げさに聞こえてしまう気もする。だが、日本社会に巣食う病巣を明らかにするという意味では、社会派ミステリーに数えられるのではないだろうか。
    本シリーズには、映画にもなった『ドクター・デスの遺産』もその名を連ねる。それぞれに扱うテーマは異なるものの、社会問題となるようなテーマを扱う医療ミステリーという位置づけになるようである。個人的には嗜好のベクトルが一致する。中山七里氏の手になる極上のミステリー小説でもあり、このシリーズは引き続き読んでみたいと思う。

  • 臓器をすべてくり抜かれた若い女性の死体が発見されテレビ局にジャックと名乗る犯人から犯行声明文が送りつけられる。
    1888年に起きた切り裂きジャック事件の模倣かと思いきや、事件の様相は思わぬ方向へ…。
    さらに終盤に事件が解決するかと思っていたら、どんでん返しもあって面白かった。
    犬養刑事のシリーズは初めて読んだけれど、他の作品も読んでみたいです。

  • 久々に小説読んだけど最後まであっという間に読み終えた!面白かった
    全く犯人が分からず、世界観に引き込まれすぎてラストらへんのシーンでは心臓バクバクしてた笑
    臓器移植についてちゃんと考えたことなかったがもし自分がその立場になったらとか色々考えさせられた。

  • 東京都内の公園で臓器をすべてくり抜かれた若い女性の死体が発見された。

    やがてテレビ局に〝ジャック〟と名乗る犯人から声明文が送りつけられる。

    その直後、今度は川越で会社帰りのOLが同じ手口で殺害された。
    被害者2人に接点は見当たらない。怨恨か、無差別殺人か。

    捜査一課のエース犬養刑事が捜査を進めると、被害者の共通点としてある人物の名前が浮上した。

    ジャックと警察の息もつかせぬ熾烈な攻防がはじまる。

    **************************************

    臓器をすべて取り出すとなると、胸から下腹部に1本メスを入れると思ってた。

    でもこの本を読んで、それはI字切開法であって、一番効率のいい切開方法は、左右の鎖骨あたりから胸へ、その後、胸から下腹部にメスを入れるY字切開法であることを知った。

    まぁ、そんなことを知っても、今後、自分が手術を執刀する側になることはないから、別にいいねんけど、知らないことを知れた。

    この本は、犯人を捕まえる以前に、脳死、移植手術、ドナー、レシピエントについて書かれていて、自分の知らないことだらけ満載やった。

    でも、最後はやっぱり小説であって、本当の犯人が現れた時の、男女の思い込みの違いが切なかった。

  • 大好きな中山七里さんを読もう。
    今度は
    刑事犬養隼人シリーズを読んでいこうと決意(笑)。
    大どんでん返しは無いが、
    そう来たかと。
    臓器移植というテーマを
    切り裂きジャック事件になぞり、
    今に生きる我々にも警笛を鳴らす。
    この様な社会的テーマを周知し、
    作品化に挑むのは中山さんならでは。

  •  マラソンをしていたオトコが、深川署前の近くの公園で女性の死体を発見する。その惨殺死体は、まるごと内臓が抜き取られていた。鮮やかな手口。猟奇事件という単純なものではない。死亡推定時刻は直腸内の温度を測定して算出するのだが、直腸自体が存在しない。角膜の乾燥具合から心臓の停止時間を割り出した。
     捜査1課の刑事犬養隼人は、二度離婚している。最初の結婚の時に生まれた子、沙耶香は13歳で重い腎臓病にかかっていて、助かる道は腎臓移植しかなかった。
     切り裂きジャックは、19世紀のイギリスで起こった猟奇事件。娼婦ばかりを連続的に惨殺した。内臓を抉り出す手口だった。この殺人事件は未解決のままであり、嘘の情報も多く都市伝説を生み出した。そして、そのジャックを名乗るものから犯行声明がテレビ局に送られる。そして、第二の殺人が。二人の殺人の手口は同じ。犬養刑事は、埼玉県警の古手川刑事とコンビを組む。犬養は、オトコの犯人の検挙率が高い。犬養は「男の嘘はすぐわかる。眼球の動き、ちょっとした仕草、声の強弱、作話症でない限りは大抵の嘘は面に出る。しかし女は、騙される」という。古手川も、連戦練磨の強者で勘もいい。
     計画的犯罪であり、劇場型殺人。犯人のプロファイルが、かなり一般的なことしか出て来ない。
    犬養と古手川は、二人の被害者の共通点を見出す。それは、同じドナーから臓器移植したことだった。ふーむ。ここからの展開が、実に中山七里らしい。
     つまり、脳死判定は、臓器移植推進派の利権がらみだという。高額医療、抑制剤などが関与する。そして日本人の感覚で言えば、体温が温かくまだ心臓が動いている状態なのに、なぜ臓器移植するのか?という医療判断と人間の生の価値判断の食い違いをついてくる。脳死臨調の調査でも、医師の賛成は80%にたいし、法律家は50%にとどまっている。臓器移植法が十分な論議がされず、国会で通ったことへの反感をうまく、切り裂きジャックはついてくる。世論も、臓器移植は、本当にいいのか?という論議が始まる。そして、臓器移植を受けた人たちが切り裂きジャックを怖がることに。
     被害者の共通点がわかることで、事件を担当している現場経験が少ないエリートの鶴崎管理官は、テレビで切り裂きジャックに挑戦状を叩きつける。「ジャック。お前の狙いは何だ。お前の欲しいものはなんだ。もう二度とお前に犯行を起こさせない。すぐ首に縄をかけてやる」と呼びかけるのだ。そのことで、第三人目の被害者が出る。エリートの出世狙いのスタンドプレー。
     そして、第四人目は、やっと確定して警察は保護するのであるが、切り裂きジャックとしての犯人は?意外な人物が犯人として捕まえられるが、さらに真犯人は違った。犯人探しよりも、臓器移植の是非を問う論議がためになった。

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著者プロフィール

1961年岐阜県生まれ。『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビュー。2011年刊行の『贖罪の奏鳴曲(ルビ:ソナタ)』が各誌紙で話題になる。本作は『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』『追憶の夜想曲(ノクターン)』『恩讐の鎮魂曲(レクイエム)』『悪徳の輪舞曲(ロンド)』から続く「御子柴弁護士」シリーズの第5作目。本シリーズは「悪魔の弁護人・御子柴礼司~贖罪の奏鳴曲~(ソナタ)」としてドラマ化。他著に『銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2』『能面検事の奮迅』『鑑定人 氏家京太郎』『人面島』『棘の家』『ヒポクラテスの悔恨』『嗤う淑女二人』『作家刑事毒島の嘲笑』『護られなかった者たちへ』など多数ある。


「2023年 『復讐の協奏曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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