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- / ISBN・EAN: 4529264169606
感想・レビュー・書評
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◆◇ 闇に捧げた心が模索する愛 ◇◆
イングリット役に扮されたエレン・ドリト・ピーターセンという女優さん、一見若かりし頃のシシー・スペイセクに印象が似ているような。
透き通るような色の白さから、私は彼女の失明がアルビノに因るものでは?とも思えたのですが。線の細さ、鋭角的な感性の持ち主といった役柄にあって、彼女は適役かと感じました。
これは彼女の妄想なのか?現実なのか?
妖しく揺れ動く空想の世界観でイングリットの執筆するPC小説で登場するエリン(夫の浮気相手)、エイナー(夫の友人)の絡みが絶妙でなかなかの演出だと思いました。
突如目が見えなくなったエリンがトイレで化粧直しをしテーブルに着席。その顔を見たモートンが、唇から大きくはみ出して引かれている口紅に唖然となる辺り、女目線でないと描けません。
イングリットの妊娠=エリンの妊娠で、そのことをモートンに報告する際、携帯のメール読み上げ機能の大きな音声が周囲の者を冷笑させるというシチュエーションは、有り得る現実を感じ背筋がちょっと寒くなりましたね。
暗闇の世界に生きるイングリットが心を閉ざし自我の殻に閉じ籠りPCに打ち込んでいく物語。
想像している時に、ふと見せるイングリットの笑い顔が、何とも複雑で、ある種の怖さもあり凄い演技だと思いました。
//最後になりましたが…ふれておきたいことに、本編で流れた音楽3曲がひじょうに印象に残りました。//
確か・・・
*フランソワーズ・アルディ「もう森へなんか行かない」
*ドビュッシー「月の光」
*「サニー」 が流れたかと。
特に私を唸らせたのは、個人的に大好きなフランソワーズ・アルディの「もう森へなんか行かない」を、冒頭でエイナーが女性を眺めるシーンのBGMで使用されていたこと。
この歌の歌詞が主人公イングリットの心情をありのまま伝えているに他ならないと感じられ…
〝私たちはもう森へなんか行かない
もう一緒に行くことはない
私の青春が逃げて行く
あなたの歩みに合わせて…
青春はどれほどあなたに似ているか
あなたが知っていたなら…
でも、あなたはそれを知らない(最終の歌詞より抜粋)〟
【追記】
サブタイトル「視線のエロス」は余計だと思いました。原題に留めておいたほうが、遥かに本作は秀作で居られたはず。そう思います。
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