文學界2015年3月号 (文学界 2015年 03月号)

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  • 文藝春秋 (2015年2月6日発売)
  • Amazon.co.jp ・雑誌
  • / ISBN・EAN: 4910077070355

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文學界2015年3月号 (文学界 2015年 03月号)の感想・レビュー・書評

  • 今度、羽田圭介講演を聞きに行く。
    その前に、「スクラップアンドビルド」が掲載されていたので読んだ。
    タイトルからとつっきにくい印象を受けていたので敬遠してた。
    それが違った。じーちゃんと孫の話だった。
    介護することで自分でできることを減らし弱らせる。親切にしてるようでいて自由を奪う、福祉現場の問題にも言及しているようでそんな視点もあったのかと思った。
    あと、若者の失職の問題にも。
    同じ目薬を何個もあけているとこで、ばーちゃんを思い出した。生活に密着した作品。

  • 「文芸誌」を読むのはいつ以来だろう? 文藝春秋はときどき手に取るけれど、あれは文芸誌の括りじゃないだろうなぁ・・・。

    今年上半期の芥川賞はなかなか賑やかだった。現役芸人、又吉直樹氏の受賞で盛り上がりを見せた。又吉さんの作品は、エッセイも含め、まだ読んだことがないのだが、娘が受賞作を買うかもしれないと言っていたので、もしも買ったら借りて読もうかと思っている。
    一方で、「又吉じゃない方」と言われていた羽田圭介氏の作品は、いささか注目度が落ちていた。あらすじを聞いて興味を持ったのだが、受賞が決まった時点で単行本がなく、初出の文芸誌を借りるしかないか、と図書館に予約した。同じように思っていた人は意外に多かったようで、順番が回ってきたのが今だった。現時点では単行本も出ているし、両氏の受賞作両方が載っている文藝春秋2015年9月号も出ているので、何だか間が悪い。
    まぁこれも何かのご縁、隅々まで読んでみた。意外におもしろかった。

    「スクラップ・アンド・ビルド」(羽田圭介)。
    失業中の28歳の健斗は、母と祖父とともに暮らしている。祖父は87歳、痴呆気味で体力も衰え、「早う死にたか」が口癖である。働きながらの老父の介護に苛立つ健斗の母は、時にとげとげしい態度を取る。じいちゃんは本当にこんな状態で長生きして幸せなのか? 出来る限り早く死ねるようにした方がいいんじゃないか?と健斗は思う。じいちゃんの「尊厳死」を幇助するべく、健斗の人知れぬ奮闘が始まる。
    何だかちょっとズレているようでもあるが、妙に「正論」のようでもある健斗の論理と、「死にたい」と言いながら、本心がわからない飄々としたじいちゃんのやりとりがおかしい。じいちゃんの方言混じりの言葉に、著者の耳の良さが感じられる。
    ブラックでシュールなようでもあるが、社会制度の不公平を突く健斗の視線はかなり鋭い。「成功者」とは言えない立場にありつつ、前向きさ・明るさを失わないのは「若さ」のゆえだろうか。『徘徊タクシー』ともまた違う、若者と高齢者の関わりだが、不思議に希望を感じさせる。

    その他、印象に残ったものを簡単に。

    消えた男(横尾忠則)
    美術家として著名な著者だが、こちらは短編小説。昭和のSFを思い出させるような、ちょっと不思議な味わいの作品。新幹線の隣の席に座った男が席を立ったまま戻らなくなる。主人公はあれこれと妄想を働かせるが、常識的なおもしろくない想像しかできない。帰りに乗ったタクシーにも、不審な行方不明事件の張り紙がある。さて、2つの事件に関わりはあるのか・・・?

    切腹考(伊藤比呂美)
    詩人のエッセイ。新連載の1回目。冒頭から度肝を抜かれる。筆者は「切腹愛好家」だという。そして実際の切腹を見たことがあるという。え、いったい何だ、と思うわけだが、もちろん、武士の割腹の話ではない。・・・いや、世の中、いろんな嗜好があるものである。はしばしに感性の鋭さを感じさせ、陳腐な感想だが、さすが詩人だな、と思わされる。近著に「説経節」の口語訳があるが、筆者が大衆芸能に惹かれる道筋も何となくうっすら見えるようでもある。

    も詩も詩(穂村弘)
    歌人による、詩歌に関する連載エッセイ。twitterなどで見かける「偶然短歌」。通常の文章の中で、たまたま五七五七七が生まれることがある。実はこれ、こうした文字列を探すbot(自動化プログラム)までできているんだという。引用元をウィキペディアとする「偶然短歌bot」では、例えば、
    先端に手がついており、スイッチを入れると棒がどこまでも伸び(ドラえもんのひみつ道具)
    底にある振動板を高速で振動させて汚れを落とす(洗濯機)
    といった、現代短歌と見紛うような一節が抜き取られる。
    抽出の仕方を少し変えたり、引用元を替えたりすると、また違う味... 続きを読む

  • 新連載山崎ナオコーラ氏「墓参記」、芥川賞受賞記念エッセイ小野正嗣氏、平野啓一郎氏×金杭氏対談、横尾忠則氏「消えた男」など。

  • 芥川賞受賞作 羽田圭介 スクラップアンドビルド
    平野啓一郎と金杭の対談 憎悪はなぜ連鎖するのか

  • 羽田圭介「スクラップ・アンド・ビルド」掲載

  • 羽田圭介著「スクラップ・アンド・ビルド」読了。芥川賞候補作。前回の候補作はともかくとして、この著者の候補作をずっと読んでるけど、上手くなってる。老人の老人ぷりがいいし、ピザこっそり食べるとことかたまらない。面白かった。

  • 羽田圭介「スクラップ・アンド・ビルド」
    呆けが始まって「死にたい」と口癖のように言う(そのくせちゃっかりしている)祖父と、資格試験勉強と転職活動をしているマージナルな主人公。
    主人公は、祖父の「死にたい」を本心と受け取り、プラスの介護で体力と思考力を奪うことで緩慢な死へと導こうとする。
    主人公のある種偏ったストイックさが際立っていて、高齢化社会、介護問題を違った面から考えさせてくれる。
    私たちは、介護する側の面からばかり見て、介護される者の立場に本当には立ってみようとしていない。それを、主人公は屈強な体と頭を持った状態で試み、祖父の「死にたい」を叶えてあげようとする。
    が、祖父は風呂で溺れかけたところを助けられ、「ありがとう」「死ぬとこだった」と言う。
    違ったのか。自分は大きな思い違いをしていたのではないか。
    そう思う主人公は、就職が決まり家を出たとき、「自分より弱い肉体が、そばにない」「あらゆることが不安だ」と考える。
    双方の本音の一端を突いた作品だと思う。

  • "それはまあ、わたしはプログラムである、とは言える。こうして言える以上は言えている。具体的には以下のような構成を持つプログラムである。諸々の事情により、第一回から第八回までのわたしを、ここで検討するわたしとしておく。"[p.282_プロローグ]

    「プロローグ 第十回」円城塔

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