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- / ISBN・EAN: 4988013227385
感想・レビュー・書評
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アラサー非モテ女子の停滞と鬱屈と前進を、全編モノクロームの映像と、レトロ音楽を用いて、巧みかつ愛情たっぷりに描いた作品。
27歳のフランシスは、モダンダンサーになるのが夢だけど、現実は研修生どまりで、うまくいっていない。しかも、彼氏と別れた直後に親友ソフィーとのルームシェアは解消する羽目になるし、所属劇団とのダンサー契約も更新されなかった。
もう若いとも言えないお年頃になってきて、周囲が結婚や出産など落ち着き始めているのとは対照的に、踏んだり蹴ったり状態で宿無し&職なしになった彼女は、それでもへんに強がりながら半分ヤケクソ気味にニューヨーク中を転々として…。
不器用に夢を追い続けて大人になりきれず、しかも、空気が読めない、イタイというかちょっと幼稚なところがあるフランシス。
でも頑張って日々を生きている彼女はなんだかとても愛おしい。
ちょっとびっくりするぐらいの、親友ソフィーへの強い執着とある種の依存傾向は、きっと、ソフィーとの時間が、無邪気で幸せだった若かりし日々の象徴というか、もがいていた彼女の最後の砦みたいなものになっていたからなんだろうなあ、と、フランシスの年齢を越えた私はどことなく共感して妙に胸に染みてしまったり。
けれど、モヤモヤしたりつまづいたりしながらも、フランシスは、やがて現実を直視し、新しい仕事と生活の環境を作っていきます。
物語のラスト、少し成長して、漸く、少し胸を張ってソフィーと向き合えるようになったフランシスがこれまた愛おしい。
この映画のタイトル「フランシス・ハ」の由来となったエピソードは、あいかわらずの彼女の不器用さと半端さを体現していて、おもわず笑ってしまうけど。
物語開始直後は現代的な映像にはミスマッチに感じたモノクロームの色彩が、観ているうちに、なんだか、不思議と脳内でカラフルなイメージを伴ってきて、想像の色であるだけ、無限な広がりを持って迫ってきました。
最後には、とても気持ちよく見終えた、よくできた作品でした。
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特に才能に恵まれているわけではない
友達とも、恋人とも計算高くなんて立ち回れない
自分に甘かったり、妬んだり、うらやんだりと
大人になりきれないフランシス。
でも憎めないんだなぁ・・・。
彼女の日常の中に見え隠れしている
等身大の葛藤する女性の姿が掬い取られていて
「何かイイ」という空気感のする映画でした。
脚本も、映像もさらりと作られているようだが
一朝一夕にできるもんじゃない
微妙なさじ加減の利いた監督の手腕を感じます。
映画の最後の最後に分かるこのタイトルをつけた
センスにもうなる。
見た後にあのウェス・アンダーソンのスタッフだと知り
なるほどなとも。
同じくモノクロで描かれた「コーヒーをめぐる冒険」や
大人になりきれない葛藤が主題の「ロミー&ミッシェル」や
「ヤングアダルト」を思い出す。 -
独身27歳女子って色々と悩むことが多いようで、周囲の変化に戸惑うダンサーのお話。27歳は日本もアメリカも同じような状況に落ち込むお年頃なのだなと思う。モノクロ映像のコントラストが絶妙で『こんな写真が撮りたい』と思うシーンがたくさんある映画だった。
この映画を観ながら頭の片隅に、邦画でこんな映画あったんじゃないかなぁと思いながら観ていたのだけど思い出せない。『花とアリス』じゃないし、日本でリメイクしたらヒロインは蒼井優ちゃんかな、とかとか…。踊れる女優さんてあまりいないんだよなぁ。
フランシス・ハってなんで『ハ』なのかというのは一番最後のカットで分かる。David Bowie - Modern Loveが流れ、そしてエンドロール、終わり良ければ全て良し。 -
最近使われ過ぎててほとんど意味分からなくなってる「女子」ですが、これ観ると「女子」の神髄が怖いほどよくわかります。
大学の同級生でNYでルームシェアをしているフランシスとソフィーは「わたしたち、セックスするのをやめたレズビアンカップルみたいね」と言っちゃうくらいの親密さ。ボーイフレンドとつまんなさそーに別れ話をしているフランシスが、ソフィーからの電話に「アイラブユ~」とノリノリで答えてるのがウケる。しかも同棲する気だったボーイフレンドに「独り者の男が猫2匹ってw」とか言ってるし(笑)。
いつも2人でふざけあい酒を飲んでおバカをやって一緒に寝る。そんな完璧な女子ライフはソフィーが出ていったことで突然に終わりを告げ、大ショックを受けるフランシス。ダンサーの仕事もうまくいかず、お金も尽きて住むアパートもないのに、つまらない見栄をはり、輝いていた「女子」ライフが帰ってくることを期待し続けているフランシス、痛すぎです。女子力の高い男子とオシャレアパートにシェアハウスするも家賃が1200ドルもして当然払えないとか、ディテールがうまい。パーティでひとりだけ噛み合わないノリでふるまったり、借金までしてパリに2日だけ寝に行ってみたりと、痛い行動を重ねた末に、自分を置き去りにして男と結婚する人生を選んだように見えたソフィーとひさしぶりに親密な時間を過ごすフランシス。と同時に、いつまでも2人いっしょにいられた時代には戻れないことをも思い知らされます。
27歳にもなって大学時代の友だちといつまでもつるんでいたいフランシスはただ子どもっぽいだけにも見えるけど、じゃあ大人になるって、結婚したり仕事で成功して落ちつくことなの?たぶんその種の混乱が、この国で「未婚」の女を「女子」と錯覚させてるものなんでしょう。宙ぶらりんの不安を紛らわしてくれるもうひとりの自分を求めてたフランシスが、たとえ離れていてもつながっていられる親友を再発見した時、彼女はようやく一人で生活できるようになる。ちゃんと自分の名前を表札に書けないダメな大人であることには変わりないけど。「ハンパな私で生きていく」というコピーがうまいですね。 -
映画館
音楽が鳴ると、そこは一気にフィルムの中から舞台上に早変わり。説明の仕方が分からないんだけど、とにかく音楽と映像がぴったり合ってるの。しかも音楽はT.Rexとかだからね。なかなか大人になれないフランシスが一人前になろうと頑張る話なんだけど、オシャレで元気が出る!オシャレで元気が出る映画って最高じゃない?フランシスは落ち込んだりもするんだけど、画面は常にコミカル。全く鬱々とした雰囲気に持ち込まない。かなりすごい手腕だ。あと英語がめちゃくちゃ聴き取りやすい。家でDVD流しときたいなって思える映画です。(最大限の賛辞) -
FRANCES HA
2012年 アメリカ 86分
監督:ノア・バームバック
出演:グレタ・ガーウィグ/ミッキー・サムナー/アダム・ドライバー
モダンバレエダンサーを目指す27歳のフランシス(グレタ・ガーウィグ)は、学生時代からの親友ソフィー(ミッキー・サムナー)とブルックリンで部屋をシェアして暮らしている。彼氏と同棲しようと言われてもソフィーとの同居を選ぶほどの仲良し。しかしある日ソフィーからあっさり別のルームメイトをみつけて引っ越しすることを告げられ…。
モノクロなのに、それを忘れるくらいビビットな印象の残る映画だった。とにかくフランシスがいつも走っていたのが印象的。彼女はプロのダンサーを目指しているが、所属しているカンパニーではまだ研究生。27歳、プロを目指すにはもはや若くないギリギリの年齢。
彼氏を振ってまで選んだ親友ソフィーに去られ、ひとりで家賃を払えなくなった彼女は、ソフィーとの共通の知人であるレヴ(アダム・ドライバー)とベンジー(マイケル・ゼゲン)の部屋に移る。どちらかと恋人になる展開かと思いきや、アダム・ドライバーとも何も起こらない(笑)そしてあてにしていたカンパニーの公演から外されたフランシスは収入もなく、またその部屋を出て別の友人のところへ…。
こんな調子で、恋も仕事もうまくいかないまま、フランシスは部屋を転々としていく。なんていうかライクアローリングストーンって感じ。でもいつもフランシスは前向きなので(めっちゃ空気読まないタイプだけどね)転落感や悲愴感はなく、壁にぶち当たってもどんどん突き進んでいく。
アダム・ドライバーと食事をして、私が奢るわ、と言ったのにカードが使えず現金も手元になかったフランシスが、ATMを探して走り回る場面がとても印象に残った。彼女の人生を象徴しているかのようで。別にその場では友人にお金を借りてあとで返せば良いだけなのに、彼女は店の外に駆けだしてしまうんだよなあ。そしてみつけたATMは故障していたり、やっとお金をおろして戻る途中でスっ転んで怪我したりして。でも彼女は走る。
とにかくグレタ・ガーウィグの魅力爆発でした。ソフィー役の女優さんも知的メガネ姿がとても個性的で素敵だったのだけど、ミッキー・サムナーってスティングの娘なんですね。音楽はトリュフォー映画リスペクトだったようですが私はそれほどトリュフォーみてないのであまり気付かず、わかるのはデヴィッド・ボウイのModern Love(https://www.youtube.com/watch?v=HivQqTtiHVw)だけでした。 -
何とも不思議な映画で、とても、魅力的なのにうまく世渡りできないのかな?イヤ正直すぎるのか?
応援したくなってしまう。 -
タイトルが秀逸。そしてこれをそのまま邦題にした日本の関係者に拍手を送りたい。
とにかく収まりきらなくて、我慢せず、行動して、ぶつかって、挫折して、行動して。満足しない。自分って何か。恋愛とか人生とか。いろんな思いや葛藤は漏らさず燃料となり、全てに硬直することなく突き進んだ彼女の現在地が「フランシス・ハ」。90分の全てが「フランシス・ハ」に凝縮されているのだから、脚本と構成力の上手さに感嘆する。
パリに行く直前に彼女がふと語った恋愛哲学、人生哲学がなんとも良かった。 -
ニューヨークでダンサーを目指す27歳のフランシスの物語。夢を持って出てきたはいいが、なんとも「うだつの上がらない」貧乏見習い生活。ルームメイトである親友との関係にもすきま風が吹き、なんだか生活がうまくいかない。
しかも、周囲の友人たちは、わりと人生がうまくいっていたり、アーティスト指向の人も親が金持ちだったりするので、どうもこのモヤモヤを共有できなくて切ない。
主人公が、自身のパッとしない生活を繕うために(見栄を張るために)、場当たり的に嘘をついたり、ショックを隠すためにやたらめったら喋りまくって空回りする様子が、わりと痛々しい。というか、全体的に落ち着きがなくて、見ていてハラハラする。
27歳という、「だんだん年を取ってくるし周りも落ち着いてくるけど、まだ大人とも言えない」というアラサー期の悩みが表現されている映画と言って良いと思う。特にダンサーという夢を追っているフランシスの場合、そう簡単に「生活のため」にその夢をあきらめることもできない。じゃあどうするのか。人はどうやって大人になるのか。というか大人になるというのはなんなのか。いつまでも馬鹿騒ぎする若者のように、楽しく暮らすことはできないのか。
モノクロームの映像がテンポよく流れていくので、雰囲気としては楽しめる。良い映画かどうかはよくわからないけれど、観た後の気分は悪くない、という感じ。