イスラーム国の衝撃 (文春新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 質、規模ともまったく違うが我が国で起こったオウム事件を連想させる。宗教が違ってもこうも似るのかと嫌な普遍性を感じさせる。だが奇妙な相対化は不要だ。やはり今起こっている人間の悪の行為を議論の中心に据えるべきだろう。
     そしてこれは世界秩序への挑戦でもある。人質にオレンジ服を着せることで法治主義を嘲笑っているのではないだろうか。力による自由を為さぬばならない時がある。それでもなお、我々は歴史を振り返り法の精神もまた必要な力として呼び覚ます必要あるだろう。

  • アル=カーイダのその後とグローバル・ジハードの台頭、アラブの春による混乱、カリフを名乗る思想とメディア戦略。この本でようやく背景が理解できた。

  • グローバルジハード。アラブの春による中東国家の弱体化。そこに生まれたイスラーム国。今起こっていることについて一定の理解を得ることができた。

  • 日本人拘束事件が起こった同じ日にたまたま出版された池内恵「イスラーム国の衝撃」文春新書

    たちまち売り切れ
    アマゾンで在庫切れ
    天王寺の旭屋には数冊置いてあった。

    複雑な中東の宗教、政治状勢を解きほぐし、どのようにして「イスラーム国」「グローバルジハード」が登場して来たかを説明している。

    驚くべきことに、グローバルジハード主義者達は、2000年から2020年までの行動計画を立てており、2001年の9.11は「目覚め」の時期に相当し、2013年ー2016年には国家の宣言の時期としており、2016年ー2020年は終末論的な全面戦争になるということ。

    そして「そのような終末論的な闘いに身を投じていると信じるジハード戦士の目には、陰惨な戦闘も、残酷な処刑も、聖なるものとして映るかもしれない。」と言っている。

    細かいことでは、人質にオレンジ色の囚人服を着せる意味や、斬首の映像の技術等も解説している。

    池内恵はマスコミには出ない。
    以下ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」
    http://chutoislam.blog.fc2.com/

  • ムスリム共同体を受け入れたマディナの人々は共にジハードに参加しイスラ厶を勝利へと導いた。以降、支援(ヌスラ)の手を差し伸べる人をアンサールと呼ばれ、組織名として使うジハード組織が数多くある。

  • 国家樹立まで宣言したテロ組織、イスラーム国について解説した本。

    常々なぜ中東の国では国家がテロ組織を壊滅出来ないのかと疑問だったのだが、政府の自治が及ばないエリアがあったり、地域によって宗派が違って対立している事などが原因だと分かった。

    これを読むとイスラム教徒といっても様々な宗派や考え方があり、お互い軍事衝突やテロなどを繰り返していて、一枚岩でない事がわかります。武力による解決を求めるテロ組織も多く、未開の地のような野蛮さに驚きます。

    かなり先まで中東に平和が訪れる事はないだろうなと、と思いました。平和な国に産まれて良かった。

  • 本書は、以下のような視点から「イスラーム国」の誕生と勢力拡大がもつ意味を解きあかす。
    どこが画期的なのか?
    これほど大規模に武装・組織化したのはなぜか?
    どのような組織的特徴をもっているか?
    資金源は?
    テロ行為だけでなく領域支配を実現できたのはなぜか?
    周辺地域にいかなる影響を与えるか?
    米国とイランの接近は何を意味するか?
    「イスラーム国」とイスラーム教(コーラン)はどのように関係しているか?
    「イスラーム国」にいかに対処すべきか?

  •  後藤健二氏と湯川遥菜氏が自称「イスラーム国」に誘拐、身代金要求などの後に殺害された一連の事件の直後に出版された本。執筆されたのはその前なのでこの事件のことは含まれていないが、背景を理解するには十分な内容だろう。

     日本にいると「イスラーム国」は極めて突然出現した組織のように見える。本書によれば、彼らがこの自称を使い始めたのは2014年6月からで、まだ1年に満たない。ISISと略される「イラクとシャームのイスラーム国」を名乗ったのも2013年4月からだという。しかし中東のこういった団体は頻繁に名前を変える上に離合集散も激しく、「イスラーム国」もルーツを辿ればアルカイダやタリバン、イラクのバース党(フセイン大統領の党)といった馴染みのある団体と関係があるようだ。

     本書は9.11から始まるアメリカの対テロ戦争との関係を含めて説き起こしており、全体の流れがかなり良く分かった。かなり速いペースで変転する状況を明らかにするためには現地での取材が不可欠だが、頻繁に誘拐事件が起きるようではまともな取材は期待できない。かと言って彼ら自身がネットを使って発信する情報ばかりを信じるのも別の意味で危ないだろう。

     今の所、日本に住んでいる我々はあまり直接的な影響を受けている印象がないが、中東の石油に頼っていることや、国内でテロを目論まれた場合に防ぐ手段が少ないことを考えると、遠い話とばかりも言えない。

     色々思うところも多いが、何が起きても慌てずに判断できるよう、心構えはしておきたい。

  • イスラーム国の衝撃を読み、最も衝撃だったのはイスラーム国自体が単なる破壊を好む集団ではなく、元来のカリフ制を伴う強固なイスラーム社会を目指した緻密な計画のもの活動をしている組織だと知ったことである。
    本著はイスラーム国の出現に至る経緯、中東地域の現状、イスラーム国の主張や特徴そして未来への考察が書かれている。なかなか一度で理解できる内容ではなかったが、彼らがどういう意図で活動しており何を要求しているのかヒントが見えた。

  • 「イスラム国」とは一体何なのか。その実態を、今の活動や中東などの歴史経緯などから解説されています。実態がわかりにくいと感じていましたが、それはそうする理由があり、宗教的な力を使った戦略があるということ。運による部分もあったと思うのですが、それをうまく使って今の状況を戦略的に形作っていったということ。一歩引いたところから冷静に判断して行動していることが本書を読んで感じました。イスラムに限ったことではないのですが、単眼的な目で見ていてはいけなくて、いろんな思惑がそこにはあるということも忘れかけていました。

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著者プロフィール

東京大学先端科学技術研究センター教授。専門はイスラーム政治思想史・中東研究。著書に『アラブ政治の今を読む』(中央公論新社)、『増補新版 イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社)『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』(新潮選書)、『シーア派とスンニ派』(新潮選書)など多数。

「2022年 『UP plus ウクライナ戦争と世界のゆくえ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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