自殺のコスト [Kindle]

著者 :
  • 太田出版
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感想・レビュー・書評

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  • すごい本です。タイトルからして、既に嫌な気分にさせられるのですが、淡々とした筆致とユーモラスなコメントで決して暗くはならないという職人芸を発揮。そして、薬物自殺やリストカット(リストカット歴10年選手)など実際に経験している著者だからこそ書ける内容となっています。
    例えば、こんな書き出しをします。「飛び降り自殺は、首つりについで人気が高い自殺だ」「多い」ではなく「人気が高い」という言葉のチョイスがナイスです。
    さて、本書の内容ですが、自殺にかかわる様々なことを数字をベースに解説してゆきます。特に、保険会社の自殺免責期間リストなどは、業界一律ではなかった点が意外でした。過労自殺の損害賠償の計算式や市販薬(物)の成分別致死量(購入費用)などの一覧表もあり至れり尽くせり。(最も安い致死量のものが、パラゾール1個で98円!)
    また、飛び込み自殺の電車編では、JRと私鉄の対応の差が興味深い。(ちなみに、首都圏で発生する電車の遅延の3割以上が自殺によるもの)
    さらに、精神障害者最強説は殺人だけではなく自殺にも当てはまる。病院内で勝手に焼身自殺(未遂で手足に軽いけが)した女性は、病院を相手取って5800万円をゲット。(さらに、精神障害者であれば、健康保険が使え、保険の免責期間内でも保険金が支払われるという高待遇ぶり)
    著者は学校でのいじめ被害者でもあったようで、いじめ自殺訴訟の不当な判決を嘆いています。(自殺を本人の過失として損害賠償金から4割も過失相殺されたり、生徒が学校に通ってたから学校の責任ではなく親の責任だとか・・)つまり、子供を不登校させなかったことが親の過失になるという恐ろしい判決、裁判官の頭です。さらに、いじめ自殺訴訟の世間の風当たりもひどい。(学校からは、生徒を動揺させるという理由で事実関係を説明しない、父兄からは受験に影響するからやめてほしいといわれ、生徒からはあの程度で自殺するなんて理解できない、などといわれる)こうして、自殺にまで追い込まれた子供を持った親は、地域社会の中でも孤独な戦いを強いられている。そして、この章を筆者はこう締めくくる。「加害者への損害賠償にひるむ必要はまったくないだろう。いじめ自殺は文字通り子供の命を懸けた訴えであり、加害者への損害賠償請求は唯一出来る合法的な復讐なのだから」

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著者プロフィール

1975 年北海道生まれ。作家・活動家。「反貧困ネットワーク」世話人。フリーターなどを経て2000 年、『生き地獄天国』( 太田出版/ちくま文庫) でデビュー。主な著書に『生きさせろ! 難民化する若者たち』( 太田出版/ちくま文庫)、『相模原事件・裁判傍聴記 「役に立ちたい」と「障害者ヘイト」のあいだ』( 太田出版)、『コロナ禍、貧困の記録 2020 年、この国の底が抜けた』( かもがわ出版) など多数。

「2022年 『手塚マンガで学ぶ 憲法・環境・共生 全3巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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