国盗り物語(一)(新潮文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 再読。素晴らしい行動力。

  • 前半は斎藤道三、そして後半はその道三の薫陶を受けた弟子筋である織田信長と明智光秀を主人公にして、戦国時代の日本に名を刻んだ風雲児たちを描く、エンターティメント性に富む歴史小説。
    ちょうど大河ドラマで明智光秀を主人公にしているところなので、このこれまで戦国武将の中でもあまり人気のなかった二人の稀代の人物、斎藤道三と明智光秀のことをもっとよく知りたいと思って読んでみた。
    長良川のスタジアムに行った折に、金華山の入り口まで散歩して、よくもまあこんな山の上に城を建てたもんだと呆れた思い出があるが、あれが道三が築城し、その後信長が岐阜と地名を変えた後に入城した稲葉山城、岐阜城だったのだなぁと懐かしく思い出す。
    荏胡麻油を売っていた男が成り上がり、一国の城主になるというサクセスストーリーももちろんだが、天下を取るまでは至らず、その夢、野望を自らの後継者と任ずる二人に託すというのがロマンがあっていい。

    当然ながら大河の描き方とはまったく違う捉え方をしているので、イメージとしては頭カッチンの融通の効かない根暗な武将という感じの明智光秀と、臣下の人物をほぼ道具のように扱い、つまりは氏素性ではなく単純に能力主義で評価するといった合理主義の冷酷な殿様である織田信長との関わり、そして豪放磊落を人物にした、という感じのただただ破天荒なキャラクターである斎藤道三が、司馬遼太郎ならではの筆致で常にどのようなエピソードも生き生きと描かれていて、非常に面白かった。

    こういう歴史を踏まえていないと、愛知県の中に尾張と三河という全く違う文化と人々の性格や嗜好をもつふたつの国があることや、滋賀県、つまり美濃とのかかわりなどがわからずじまいだったろう。実際に西三河に住んでみて、これは一般の人々のもつ愛知県のイメージとは全く違うと感じたのも、さもありなん。
    越中、西三河、駿河から遠江、そして阿波と。歴史的に非常に面白い文化を持った土地に短い間ながら実際に住むことができてとてもいい経験ができた。やはり住んでみないとわからないことが多いね。

  • “斎藤道三”は美濃(今の岐阜県)を治めていた大名です。
    美濃なので、尾張の織田信長が京都に登るにあたって最初に負けちゃった大名。
    僕もこの本を読むまでは、それくらいの知識しかありませんでした。

    ただ“斎藤道三”はとても変わっていた大名だったことがわかりました!
    一巻は「斎藤道三 前編」と題しています。

    斎藤道三(作中では松波庄九郎)は、妙覚寺という寺を飛び出して、乞食をしているところから始まる。
    ただそのときから「国主になりたい」とつぶやいていた。

    戦国の時代だったから、下剋上も多々あり全国統一を夢見ていた人物は多かったかもしれないが、武家の家でもない者がここまで思っていたのはすごいことだなと思う。

    大きな大きな勘違いと深い深い思い込み
    そのもの。

    そこまで大きな夢を持っていたこそ、なんの氏素性もない庄九郎が大名にまで上り詰めたのだろうなと思う。

    庄九郎のすごいところのひとつに、とくかくにこれまでの常識や古いしきたりを疑い、創意工夫することにある。

    戦いかた一つとっても、このほうがいいだろうと思ったことは試してみて、うまくいくか試してみる。
    かれが頼る唯一のものは、自分自身が編み出す工夫以外にないのである。

    作中でもこんな引用もある。

    いや、有年家だけがこうなのではない。諸国の武将はたいていこうしたものだ。伝統的なやり方ばかりを踏襲し、それを別なものに変えようとしない。
    いい言葉がある。
    西洋の軍人のことばだが、「歴史は、軍人どもが戦術を転換したがらないことを示している」というのだ。商業軍人というのもは、古今東西、頑固な伝統主義であり、愚にもつかぬ経験主義者である。太平洋戦争における日本軍の指揮官が、いったん負けた戦法をその後もくりかえし使って、アメリカ軍を苦笑させた。そういうことをいうのであろう。が、「しかしながら」と、この言葉はつづく。「と同時に、歴史は、戦術転換を断行した軍人が必ず勝つことを示している」
    失敗から学んで、それを改善するスピードの大切さを教えてくれる。

    そんな庄九郎は、一乞食だったのが京都随一の油屋の亭主になり、さらには美濃でクーデターを起こし、自分が担ぎ上げた城主を美濃の国主にまでしてしまった。
    自分はその国主の執事になった。

    1518年-1528年までのことが描かれている。
    たったの10年間である。
    そのスピード感、手法が見事すぎて、松波庄九郎に引き込まれるばかり。
    こんな人物がいたのかと驚くばかり。
    同時に怖いなとも思った。

  • 斎藤道三が、まだ松波庄九郎と名乗っていた頃から、物語は始まる。
    一介の素浪人から、如何にして、美濃国主まで成り上がったのか。
    どのようにして、蝮の道三になったのか、刮目すべし。

  • 歴史小説面白い!

  • 美濃の蝮と呼ばれた斎藤道山について描かれた名作。幼い頃から賢く神童として崇められ、弁舌たち、また舞や笛もでき、刀槍弓矢の術まで完璧にこなすエリート。寺から出た後、乞食となるがそこから京の油屋の娘を口説き落とし入婿となる。店を攻められても、自らの屋号を新たに受け店の当主となる。その後も国の主になる夢を叶える為、美濃に渡りその土地の権力者から領主を転々と口説き落とし、土岐頼芸に仕える中で側室の深芳野に惚れ手に入れる代わりに美濃の大名、兄の土岐頼武に撃つまでの話。

    この武将は完璧すぎて、男のバイブルになるのではないだろうか。こんな人、現代でいるのだろうか。文武両道はまさにこの人で、ただこの人曰くの「あく」が今後どういう形となっていき、また人々になにをもたらすのか。続編も楽しみ。

  • 国盗り物語1、読了。また、一人の武将の物語が始まった。

  • 斎藤道三カッコ良すぎる。

  • 良かった

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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