Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2015年 3/31号 [中国の新常態]

  • CCCメディアハウス
0.00
  • (0)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 8
感想 : 2
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・雑誌
  • / ISBN・EAN: 4910252550351

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • p.18 プーチン核発言が招く軍拡競争と米同盟国の危機感
    ウクライナ新政府が、黒海の制海権を握るロシア黒海艦隊本拠地のセバストポリ制圧を狙っており、また、アメリカが黒海にイージス艦を派遣したことから、核戦争に至ることを心配したプーチンが核使用の可能性があったことに言及した発言は、オバマ就任時の「核のない世界」という目標を吹き飛ばし、2017年開催予定の核安全保障サミットの構想も変更を迫られる。
    広い領土を守るには、核抑止はロシアにとって不可欠な手段。
    プーチンの核発言は、これからの米露の核兵器をめぐる課題にも影を落とす。
    まずは、長距離核、いわゆる戦略核の制限のための新START条約が2021年に失効したあとに、現有戦略核弾頭をどの程度更新・近代化するかという問題。
    次に、中距離核戦力全廃条約により完全廃棄が誓われた中距離核ミサイルの復活。現在、ロシアは中国・北朝鮮・イランの核ミサイルを抑止する手段を持たないが、アメリカは、ロシアが中距離ミサイルの開発・実験を行っていると批判しており、極東に配備されれば日本も射程に入る。
    また、ロシアが保有する短距離核、すなわち戦術核や、ヨーロッパにアメリカが配備し、ドイツが発射要請権を持ち、冷戦崩壊後は撤廃の声が高まっていた戦術核も、保持・近代化に向かう可能性がある。
    アジアでは、中国・北朝鮮が核配備を増やす一方で、潜水艦発射の巡航ミサイル「トマホーク」から核弾頭が撤去されるなど、アメリカの核の傘は薄くなった。現在日本への核攻撃を抑止するのは、米軍爆撃機の爆弾か、潜水艦発射の弾道ミサイルくらいしかない。共同開発中のMDは百発百中ではなく、また、海上発射の巡航ミサイルに対処できない。アメリカが検討中の宇宙兵器などの非核の戦略兵器の威力も未知数だ。
    NPTにより、核兵器の不保持を誓った日本はアメリカから獲得したプルトニウム保有の権利をわずかな抑止手段としているが、原発撤廃が進むにつれ、今後の核抑止政策を決めていかなければならない。日米原子力協定は2018年には期限を迎える。核の面で抑止力を維持しなければ、日本は中露の核による威嚇に弱い国になってしまう。

    確かに、アメリカの、核使用に対する懲罰的抑止力の低下は懸念に値するが、北朝鮮という不安定で予測が困難な要因の脅威が増すなかでは、日米は、懲罰的抑止よりも、相手が万一行動を起こしてもそれを無効にする拒否的抑止、すなわちMDの強化に力を入れざるをえないのが実情だと思う。中国がロシアにならって核による恫喝に踏み込む予兆があるときには、懲罰的抑止力の再強化も検討しなければならないだろうが、そこに日本が関与できる部分は少なく、アメリカ頼みになってしまいそう。だからこそ、軍事的な懲罰的抑止力を欠く日本は、中国のことを考えるとやはり、対等な日米同盟の強化によりアメリカに確実にその役割を担ってもらうように求めていくしかないのではないかと思った。

  • プーチンは持前の負けん気から核をひけらかすことで、冷戦後閉じていたパンドラの箱を再び開け、自国の立場を悪くしてしまった。アメリカとの無茶な軍拡競争が命取りになったソ連の亡霊が見える。

全2件中 1 - 2件を表示
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×