NATIONAL GEOGRAPHIC (ナショナル ジオグラフィック) 日本版 2015年 5月号 [雑誌]
- 日経ナショナルジオグラフィック社 (2015年4月30日発売)
- Amazon.co.jp ・雑誌 (140ページ)
- / ISBN・EAN: 4910068470553
感想・レビュー・書評
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デトロイト。
かつては自動車産業の拠点として繁栄を誇った街である。
この地が傾いてきたのはいつからか。巨大なアメ車が日本車に押されて衰退したイメージがあるが、実は都市としての斜陽が始まったのはそれよりずっと以前、1950年に高速道路が整備され始めた頃だという。交通網の整備とともに、郊外へ流出する住民が続出、そして1967年のデトロイト暴動を機に、白人層が一気にデトロイト中心部に見切りをつける。
1970年代からは日本車の台頭でその没落には歯止めがきかず、ついには2013年、財政破綻に陥る。負債総額は180億ドルといわれ、財政破綻した自治体の負債総額としては全米一の規模となった。
個人的な話になるが、かれこれ20年ほど前、デトロイト近郊に数年住んでいた。
普段はデトロイトには縁がないのだが、大都市であるし、日本領事館もあるし、観光に、事務処理に、何度か訪れる機会があった。
ルネサンス・センター、タイガー・スタジアム、グリーク・タウン、少し離れてフォード・ミュージアム。そう、空港も使うのはデトロイト空港だった。
そうしたスポットは、それなりに都市の賑わいもあり、楽しい場所だったのだけれど、ひとたびそこを外れると、広がるのはスラムであり、廃墟だった。
ガソリンスタンド併設の売店に入っても、レジは防弾ガラスで囲まれ、お金の出し入れはカウンターとガラスの間、数センチの隙間から。ATMも人通りの少ないところは危ないから近づいてはいけない。
一度、TOEFLの試験を受けに行ったのだったか、1人で車を運転してデトロイトに行ったときのこと。帰りに道に迷った。閑散とした街。軒並み割れている家々の窓ガラス。色あせた"For Sale"の看板。人影が見えると逆に怖いと思うよな荒れようだった。
その街が今、再び立ち上がろうとしているのだという。
今号、最後の記事「デトロイトを取り戻せ!」。
ナショジオならではの説得力ある写真には、胸を張る何人もの人々。
生まれ故郷だった地に戻ってきた人。別の都市にない刺激を感じて外国からやってきた人。ずっと住み続けている人。そしてこの地に根ざし、裁判官になって市民生活に貢献したいと考える若い人。
皮肉と言えなくもないが、この街では、衰退そのものが1つの原動力である。少ない資金で家や土地を手に入れることができ、大きなことができる「可能性」を秘めているのだ。
失うものがないことはある意味、強さなのか。
中の1人が言う。「デトロイトを救うんじゃない。自分がデトロイトになるんだ」。
気概を持って立ち上がる人々。数年後、数十年後のデトロイトを見てみたい。
不思議な感動を呼ぶ記事である。
*雑誌のレビューは日経サイエンスだけにしておこうと思っていたのですが、あまりの懐かしさに(^^;)。
*「希望のミツバチ」、「ダム建設に揺れるメコン川」も、続報が知りたいと思わせるよい記事でした。表紙のイルカもかわいい(^^)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
いるかと話がしたい。
いるかさん、助けて。。