紙の月 DVD スタンダード・エディション

監督 : 吉田大八 
出演 : 宮沢りえ  池松壮亮  大島優子  田辺誠一 
  • ポニーキャニオン
3.32
  • (41)
  • (147)
  • (193)
  • (58)
  • (14)
本棚登録 : 904
感想 : 197
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988013254985

感想・レビュー・書評

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  • 銀行の金を横領し、男に貢ぐ主婦の話。

    丁寧な脚本なので、ストーリーが分かりやすく、安心して観ていられる。伏線が必ず回収される。また、象徴的な題材をストーリーと二重写しにする、登場人物も皆がキャラクタがはっきりしている。など、演出がロジカル。ただ図式的な印象も受ける。

    人間の業というか、誤った部分、平常時にもまぎれている闇を描いているはずなので、個人的には軌道が外れたような凄みがほしいのだが、映画の構造が安定しているので、狂気のようなヒリヒリさは感じなかった。(だんだん常軌を逸する凄みのようなものはあったが、ロジカルだから変な説得力があるというか。まあそうだよねと思ってしまう。)

    宮沢りえの存在感がこの映画の魅力。
    歳をとった凄みと妙な色気。

    音楽がある意味ベタで、男と会ったときのロマンチックな音楽、横領している時のハラハラさせる音楽など、かなりどう観てほしいかを分かりやすく音楽で表現されていて、もう少し音楽が主張しないで背景に水彩画のように流れていて欲しかった。

    そしてエンディングの主題歌「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ」の「宿命の女(Femme Fatale)」
    これもタイトルから持ってきていてベタすぎるというか、曲の持つ60年代のアシッドな雰囲気とこの話が合っているのかな?と個人的には違和感があった。
    映画の宣伝見ると、この曲がアピールポイントになっているみたいで、監督が好きな曲なんでしょうね。
    ロックにおいては超有名曲。有名な海外ブランドを「大枚はたいて遂に買えたよ。いいでしょ。」と見せびらかされているような気分。

    どうせならニューウェイブかマンチェムーブメントのころのダンサブルな曲で、見せかけのきらきらさを表現した方が、描いた時代的にもマッチしたのではないかと思う。

  • 2014年 日本 126分
    監督:吉田大八
    原作:角田光代『紙の月』
    出演:宮沢りえ/池松壮亮/大島優子/田辺誠一/近藤芳正/石橋蓮司/小林聡美
    主題歌 ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ「Femme Fetale」
    http://kaminotsuki.jp/

    横領し逃亡する女性銀行員、そして小林聡美、なにかがデジャブすると思ったら、もう10年以上前の作品だけど大好きだったドラマ「すいか」でした。3億円横領して逃走中のキョンキョンが、元同僚の小林聡美に電話してきて「苦しいよ」と泣きながら訴えるシーンを思い出すだけで今でも泣けてくる。ごく普通の真面目な会社員だった女性が突然起こした横領事件、小林聡美演じる元同僚はそれが犯罪と知りながらも心のどこかで「逃げおおせてくれ」と願っていたのだと思う。

    この映画の横領犯はキョンキョンではなく宮沢りえ。小林聡美はベテランの先輩で、わかりやすくいえば「お局」的立場。主人公の犯罪を見逃すことができず暴こうとするけれど、終盤、二人が対峙するシーンの緊迫感は素晴らしかった。二人の選ぶ道は正反対だけれど、それは一人の人間に用意されている二つの岐路でもある。主人公の犯罪を糾弾する立場にありながら、心のどこかで一緒に「あちら側」に行ってしまいたいという願望も彼女にはあったのだと思わされ、いちばん心に残る場面でした。原作未読なんですが、この小林聡美が演じた役は映画のオリジナルのようですね。犯罪や不倫に心底共感はでいない観客のためには必要な視点になる良い役だったと思います。

    しかし残念だったのは、肝心の、主人公が犯罪に至る心理の描写がいまいち不十分だと感じてしまったこと。夫=田辺誠一、若いヒモ=池松壮亮というキャスティングのせいもあるけれど、ていうかもうこれ言うと単に好みの問題だけど、どっち取るって言われたら私なら田辺誠一(笑)いやまあ好みの問題は置いといても、けして悪い夫じゃないんですよね。多少空気読めない失言もあるけれど、田辺誠一だと悪気のない天然にしか見えないし、有能で稼ぎもけして悪くはないし、爽やかなイケメン。この夫をもっと感じの悪いモラハラ夫として描かないと、主人公の鬱屈は観客には理解できなかったんじゃないか。

    一方、池松壮亮も良い役者さんだとは思うけれど、すべてを捨ててまでのめりこませるほどの説得力(色気や魅力)はなかったし、なにより主人公が彼に魅かれる過程がばっさり端折られていて、いきなりホテル直行というのもどうだろう。けしてヒモ体質ではなかったこの若者に主人公が勝手にどんどん貢いでいく心情も共感しにくい。

    女学生時代に募金のために親の財布からお金を盗んだ過去エピソードは印象的だったけれど、つまり彼女は、夫への不満以前にもともとそういう資質(金銭に対する倫理観がおかしい)があっただけだということになってしまうので、彼女が感じていた虚無感を逆にぼやかしてしまったようにも思いました。

    良かったのは音楽。どろどろになりかねない不倫ベッドシーンに軽やかなリトルモア。回想シーンその他で印象的に使われる讃美歌、銀行での緊迫したシーンに流れるBGMも良かったし、エンディングがニコの歌うファム・ファタルというのも象徴的。あと大島優子の「ありがち」ないまどきOLっぷりもなかなか良かったです。

    • yamaitsuさん
      円軌道の外さん、こちらこそ嬉しいコメントありがとうございます。文章を褒めていただけたのも嬉しい。日記感覚でだらだら書いてしまうんですが、ブク...
      円軌道の外さん、こちらこそ嬉しいコメントありがとうございます。文章を褒めていただけたのも嬉しい。日記感覚でだらだら書いてしまうんですが、ブクログユーザーさんはさすがに読書好きだけに長めの感想も読んでくださる方がいるのでありがたいです。かくいう私も書評というよりはエッセイ感覚で他の方の感想を読んでいるので、円軌道の外さんのレビューは読みごたえがあって楽しいです。

      『紙の月』ドラマ版は観てないんですが、旦那役が光石研・・・想像するだに感じ悪い嫌な旦那っぽいです(笑)映画『共食い』での最低な父親役を見て以来、テレビなどで良い人の役をやっていても悪い奴に見えて困っている役者さんです(笑)それなら主人公の浮気も納得できたかも。

      吉田大八監督、私も好きです。「腑抜けども~」も良かったし「桐島~」も良かった。「パーマネント~」は小池栄子の芝居が大好きでした。

      あ、最後になりましたが、やはりほぼ同世代ですね。私のほうが数年おねえさん(笑)ですが。京都生まれの京都育ち、二十歳で東京に出てきてはや二十数年・・・といったところです。

      映画はもっぱら名画座系で観てるので、見逃したものも結構拾えます。東京は結構ロードショー終わった作品を二本立てで見れたりする映画館多いのですよね。「紙の月」もつい昨日くらいまで池袋の新文芸坐でかかっていたかも。もしお近くにあったら名画座通い、おすすめです。http://miwaku-meigaza.com/joho.htm
      2015/05/14
    • 円軌道の外さん

      yamaitsuさん、お久しぶりです!
      鬱陶しい梅雨空が続いてますが、お元気にされてますか?
      僕はさほど雨が嫌いではないので、雨の音...

      yamaitsuさん、お久しぶりです!
      鬱陶しい梅雨空が続いてますが、お元気にされてますか?
      僕はさほど雨が嫌いではないので、雨の音を聞きながらの読書に心ときめかせています。

      昨日レビュー読ませてもらって思ったんですが、
      yamaitsuさんの文章は難しい言葉を使わずに簡潔にポイントが押さえてあるので
      読み手からしたら分かりやすいんだと思います。
      それプラス、必ずyamaitsuさんが感じたこと、それを評価する理由、受け付けなかった理由、その他パーソナルな情報が散りばめられていたり、
      特に音楽のレビューは好きが溢れまくってて(笑)
      上質なエッセイを読んだ時と同じ
      心地よさがあるんです。
      (普通長いレビューは書き手の人間力が見えてこないと途中で飽きるけど、yamaitsuさんのは人間力をビシバシ感じるから、楽しく読めちゃうのです)

      まさに僕が目指す理想のレビューなんで、ホンマ勉強になります( >_<)
      (音楽レビューも知らなかった情報が知れてまた新鮮な気持ちで聞き直せるし、アルバムや曲の雰囲気をちゃんと書いてくれてるので知らないアーティストを知るきっかけになります!)


      あはは(笑)
      役が異常にハマってる役者を観ると、
      それ以来、何を観てもその役のイメージで見てしまうってありますよね(笑)

      僕も単純で影響受けやすいタチなので
      インパクトある役柄を観ちゃうと
      その役者をずっとその役名で呼んでたりして(笑)、
      友達の前でいざその役者の名前を言いたい時にも
      役名でしか出てこないので、誰にも分かってもらえないという…(汗)( ̄○ ̄)

      あっ、「腑抜けども ~」は大ボケ連発やった永作博美が印象的やったし、
      「パーマネント~」は何度男に裏切られても恋することを諦めない女の悲哀を小池栄子が上手く演じていて、ホンマ泣けました。

      あっ、もしやとは思ったけど
      僕のほうが年下やったんかぁ~(^^;)
      けど、やはり同世代でしたね(笑)

      京都いいですよね~
      神社仏閣や和菓子や和紙や和柄の小物など好きなので、
      大阪にいる時はよく阪急や京阪乗って京都までブラブラしてました。
      上京してそれだけ長いと、yamaitsuさんは東京では
      標準語でしゃべってるんですか?

      僕は関西弁バリバリらしくて(笑)
      (なるべく目立たぬよう生きてるのですが…)
      どこにいても目立ってしまいます(^^;)

      あと、わざわざ名画座情報ありがとうございます!(T_T)
      最近はなかなか時間がないので劇場には見に行けてないのですが、
      せっかく映画や演劇やイベントに関しては
      関西よりかなり充実している東京にいるんやし、
      これから活用させてもらいます。
      ちなみにyamaitsuさんは
      お気に入りの名画座ってありますか?
      ここは居心地いいよ~とか
      また教えてくれたら嬉しいです(笑)


      つか、気付けばめっちゃ長いコメントになってました!すいません!(汗)((((((゜ロ゜;

      東京の友達がホンマ少ないし、
      音楽や映画を話せる人はこっちでは皆無なので(笑)、 
      末永くよろしくお願いします!


      2015/06/29
    • yamaitsuさん
      お久しぶりです円軌道の外さん。嬉しいコメントをたくさんありがとうございます!円軌道の外さんのレビューのどこかにコメント残しに行こうと思いつつ...
      お久しぶりです円軌道の外さん。嬉しいコメントをたくさんありがとうございます!円軌道の外さんのレビューのどこかにコメント残しに行こうと思いつつ、なかなかタイミングが掴めず・・・ブクログさんのコメント機能があまり頻繁なコミュニケーションに向いていない仕様なので、どうやってお返事しようかオロオロしてしまったり(苦笑)こちら見ていただけて助かりました。

      私は仕事のときはバリバリの標準語です。演劇部だったので標準語得意(?)なんですよ(笑)関西弁は、男性のほうが抜けにくいみたいですね。とはいえ、私もときどき固有名詞のイントネーションがおかしかったり、標準語だと信じていた言葉が関西限定だったというのはちょいちょいありますが(苦笑)

      名画座、私がよく行くのは飯田橋のギンレイホールかな。こちら名画座唯一の年間パスポート(会員カード)制で、1年間1万円で見放題なんです。なのでいっぱい観なくちゃ損だと思って活用しちゃいます(笑)DVDより断然映画館派なもので助かってます。

      池袋の新文芸坐はザ・名画座という感じのラインナップで(高倉健特集とか・笑)、立地は怪しいですが劇場内はとても綺麗だし音響も良いのでおすすめ。だいたいどこも2本立てで1300~1500くらいでお得だし、オールナイトで面白い企画やってるところも多いので男性は行きやすいかも。

      確かに東京は映画も演劇もライブも関西より充実してますよね。ぜひぜひ円軌道の外さんもエンジョイしてください!
      2015/06/30
  • なかなか良かった。原作は確か読んでいた気がするがすっかり忘れていたので新鮮だった。この女優さんはあまり好きじゃないんだけどこの役のできは認めざるを得ない。

  •  まあまあ面白かった。
     が、ヒロインの銀行員(宮沢りえ)が大学生と不倫に陥るまでと、そこから横領を始めるまでのプロセスに、ものすごく唐突感があった。
     そこに至るまでの心の葛藤とか、不倫の前提となる夫との確執が、映画ではほとんど描かれていないのだ。

     当方、角田光代の原作は未読だが、おそらく原作ではそのへんが綿密に描き込まれていて、読者が自然にヒロインに感情移入できる(=共感はしなかったとしても、不倫と犯罪に走った心情が理解できる)ようになっているのだろう。

     この映画版は、横領が始まってからのサスペンス描写に的が絞られている。その分、横領に至るプロセスを端折りすぎだと思う。

     とはいえ、宮沢りえは大変な熱演だし、助演陣も総じて頑張っている。

     ベテラン銀行員役・小林聡美、次長役・近藤芳正の演技の評価が高いようだが、私はむしろ、ヒロインと不倫する大学生を演じた若手俳優・池松壮亮の演技に感心した。
     軽薄でちゃらちゃらして、年上の女性に甘える手練手管だけはすごいという、鼻持ちならない若者を見事に演じている。
     「ヒロインはなぜこんな奴のために人生を棒に振るのか」と、観ていて怒りさえ込み上げてくるほどの名演だ。

     なお、エンディングテーマに使われているのは、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの名曲「FEMME FATALE(宿命の女)」。「この曲しかないでしょ」という感じのハマり具合である。

  • 原作は未読。
    真面目に銀行で働いていた主婦が若い男にのめり込んで横領・・
    とりあえず若い男と不倫に走る展開が早すぎてついていけないw
    あんなに簡単に人は溺れちゃうものなのかね~?
    そこからは宮沢りえさんの旦那役の田辺誠一さんが気の毒でした。
    旦那もちょっと嫌味なとこ一瞬あったけど、すごく優しくていい感じやったので、この旦那を裏切ってまでつっぱしっていく姿に全く感情移入出来ない。そら出来んわな(笑)
    兎に角若い男に横領したお金で贅沢三昧させればさせる程虚しくなってくる。
    見てて痛々しいんですよ!!
    ラストも高飛びしちゃって・・何にも知らずに上海に単身赴任してた旦那が可哀相すぎました。
    田辺誠一さんと小林聡美さんの演技は凄く良かったです。

  • 自由とは何か?
    罪と罰とは何か?
    金とは何か?
    与えられる側と与える側
    幸せとは何か?
    考えるきっかけを与えられました。
    44歳男の感じたこと

  • 原作を読んでるのでずっと観たいと思いつつ、やっと観れました。
    宮沢りえも歳をとったなぁと思いながら、でも役に合わせてそう見えるようにしてるのかなとも。
    若い男の子に溺れる人妻・・・って悲しいなーと思いながら。
    逆はそう思えないのに女って年を取ると悲しい。
    横領されたお金はどうなったんだろうか。
    一生逃げ切れたんだろうか。
    ちょっとモヤモヤが残る終わり方だった。

  • 真面目に働く銀行員だったが、お客様の孫と関係を持ってしまう。
    最初は一度くらいと思って始めた横領だが、いつの間にか歯止めが効かず、ありとあらゆるところからお金をくすねるようになってしまう。
    もらうより与えるほうが幸せという教えに忠実に、何かをし尽くすことに快感を覚え、ブレーキのとまらなくなった銀行員は崩壊していく。
    世間的には安定して幸せにうつっているのかもしれないが、一線を超えた世界は刺激的で抜けだなせない。
    お金という紙切れに幸せを求め、脆くも崩れていく。
    本当の幸せとは何なのだろう。

  • 銀行勤めで契約社員になった主人公が客先の孫と不倫し貢ぐ話。貢ぐ金額も大きくなり、不正に金を得る。孫との接点があまりなく、なぜそこまで不倫関係に陥ったのかがあまり詳しく描写されていなかったが、後ほど少女時代から相手を喜ばせるためなら手段を選ばない性格だとわかった。紙の月というタイトルに込められた思いはお金は紙でまやかしのようなものだと感じた。お金では幸せにはなれないと当たり前のようだが大事なことだと思う。結局逃げ切っているところはその終わり方でいいのだろうか。

  • 金と欲に堕ちてゆく女と男。
    終わる事を知りつつ。

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