紙の月 DVD スタンダード・エディション

監督 : 吉田大八 
出演 : 宮沢りえ  池松壮亮  大島優子  田辺誠一 
  • ポニーキャニオン
3.32
  • (41)
  • (147)
  • (193)
  • (58)
  • (14)
本棚登録 : 904
感想 : 196
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988013254985

感想・レビュー・書評

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  • 当時原作を読んだのが、文庫の出版時。本棚から引っ張り出して発行時期を見たら2014年。意外とちゃんと、ブクログでも残してた。この時はすでに映画化も決まってて、解説はこの作品の監督である吉田大八さんが書いていて、表紙も映画用のものが使用されているので、主人公が宮沢りえであると分かっていて読んでいたはずだ。けれど、その時から主人公の雰囲気が宮沢りえとうまく重ならなかった。そして今日、映画を観て、また思った。なんか違う。かと言ってじゃあ誰が演じるのがベストなのかと言われると、誰も出てこないのだけれど。

    満たされない日々を送っている銀行員の梨花(宮沢りえ)が、静かに横領と逢瀬を重ねていくお話。

    最初は、誰でもやっちゃいそうな、小さなことから始まる。でも、それはうまくいくとどんどん人間の欲望をかきたて、エスカレートしていく。最初はたったの一万円。それがいつしか膨大な金額になっている。
    それは、とても静かに始まる。ちょっとだけ一万円を、そんな感覚。光太(池松壮亮)への気持ちも同じで、強烈な欲情のような気持ちで始まっているわけではない。お金と異性への欲望は、外には出さなくても、目の前に広がっていれば目がくらむ。ゆっくりと訪れ、急激にのみこまれてしまう。両者が重なり合って、とても巧い描き方だなと思った。この、何か大きなことから始まるのではない、日常の中に潜んでいる感じ。
    原作はスリリングで一気読みだったけれど、映画はどちらかというと、何気ない日常がどんどん浸食されていくような、そんな描き方をしている。
    個人的には、もっとはっきりとぶっ壊れていく梨花が見たかったな…原作がスリリングでぐいぐい引き込まれただけに、そんな風に思ってしまう。

    梨花が悪だくみをした時のBGMがよかった!

    • moboyokohamaさん
      確かに宮沢りえさんには一般行員にしては華がありすぎるかもしれませんね。
      もっと真面目で堅そうな地味な、私の感覚でいうと細身でチョット暗いくら...
      確かに宮沢りえさんには一般行員にしては華がありすぎるかもしれませんね。
      もっと真面目で堅そうな地味な、私の感覚でいうと細身でチョット暗いくらい静かなフツーの女性が良いかな。
      小林聡美さんがさすがだと思いました。
      2020/06/02
    • ぶーちんさん
      私も宮沢りえさんはイメージと違いましたね〜。大塚寧々さんとか稲森いずみさんとかどうですかね?弱気な感じも頑固な感じも流される感じも演じること...
      私も宮沢りえさんはイメージと違いましたね〜。大塚寧々さんとか稲森いずみさんとかどうですかね?弱気な感じも頑固な感じも流される感じも演じることができそうな。
      2021/10/04
    • naonaonao16gさん
      ぶーちんさん

      おはようございます!
      コメントありがとうございます^^

      やはり宮沢りえさんはイメージと違いましたよね!
      大塚寧々さん!いい...
      ぶーちんさん

      おはようございます!
      コメントありがとうございます^^

      やはり宮沢りえさんはイメージと違いましたよね!
      大塚寧々さん!いいですね!
      表情をあまり出さずに犯罪を重ねていくのにはぴったりかもしれませんね!(褒めてる)
      稲森いずみさんも、あの儚げながらも芯の強そうな感じは合ってるかもしれませんね!

      ちなみに、前クールのドラマ、東京MERの稲森いずみさんはなんか違いました…
      すごい無理してる感じがして…
      余談でした。
      2021/10/05
  • 銀行の金を横領し、男に貢ぐ主婦の話。

    丁寧な脚本なので、ストーリーが分かりやすく、安心して観ていられる。伏線が必ず回収される。また、象徴的な題材をストーリーと二重写しにする、登場人物も皆がキャラクタがはっきりしている。など、演出がロジカル。ただ図式的な印象も受ける。

    人間の業というか、誤った部分、平常時にもまぎれている闇を描いているはずなので、個人的には軌道が外れたような凄みがほしいのだが、映画の構造が安定しているので、狂気のようなヒリヒリさは感じなかった。(だんだん常軌を逸する凄みのようなものはあったが、ロジカルだから変な説得力があるというか。まあそうだよねと思ってしまう。)

    宮沢りえの存在感がこの映画の魅力。
    歳をとった凄みと妙な色気。

    音楽がある意味ベタで、男と会ったときのロマンチックな音楽、横領している時のハラハラさせる音楽など、かなりどう観てほしいかを分かりやすく音楽で表現されていて、もう少し音楽が主張しないで背景に水彩画のように流れていて欲しかった。

    そしてエンディングの主題歌「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ」の「宿命の女(Femme Fatale)」
    これもタイトルから持ってきていてベタすぎるというか、曲の持つ60年代のアシッドな雰囲気とこの話が合っているのかな?と個人的には違和感があった。
    映画の宣伝見ると、この曲がアピールポイントになっているみたいで、監督が好きな曲なんでしょうね。
    ロックにおいては超有名曲。有名な海外ブランドを「大枚はたいて遂に買えたよ。いいでしょ。」と見せびらかされているような気分。

    どうせならニューウェイブかマンチェムーブメントのころのダンサブルな曲で、見せかけのきらきらさを表現した方が、描いた時代的にもマッチしたのではないかと思う。

  • 2014年 日本 126分
    監督:吉田大八
    原作:角田光代『紙の月』
    出演:宮沢りえ/池松壮亮/大島優子/田辺誠一/近藤芳正/石橋蓮司/小林聡美
    主題歌 ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ「Femme Fetale」
    http://kaminotsuki.jp/

    横領し逃亡する女性銀行員、そして小林聡美、なにかがデジャブすると思ったら、もう10年以上前の作品だけど大好きだったドラマ「すいか」でした。3億円横領して逃走中のキョンキョンが、元同僚の小林聡美に電話してきて「苦しいよ」と泣きながら訴えるシーンを思い出すだけで今でも泣けてくる。ごく普通の真面目な会社員だった女性が突然起こした横領事件、小林聡美演じる元同僚はそれが犯罪と知りながらも心のどこかで「逃げおおせてくれ」と願っていたのだと思う。

    この映画の横領犯はキョンキョンではなく宮沢りえ。小林聡美はベテランの先輩で、わかりやすくいえば「お局」的立場。主人公の犯罪を見逃すことができず暴こうとするけれど、終盤、二人が対峙するシーンの緊迫感は素晴らしかった。二人の選ぶ道は正反対だけれど、それは一人の人間に用意されている二つの岐路でもある。主人公の犯罪を糾弾する立場にありながら、心のどこかで一緒に「あちら側」に行ってしまいたいという願望も彼女にはあったのだと思わされ、いちばん心に残る場面でした。原作未読なんですが、この小林聡美が演じた役は映画のオリジナルのようですね。犯罪や不倫に心底共感はでいない観客のためには必要な視点になる良い役だったと思います。

    しかし残念だったのは、肝心の、主人公が犯罪に至る心理の描写がいまいち不十分だと感じてしまったこと。夫=田辺誠一、若いヒモ=池松壮亮というキャスティングのせいもあるけれど、ていうかもうこれ言うと単に好みの問題だけど、どっち取るって言われたら私なら田辺誠一(笑)いやまあ好みの問題は置いといても、けして悪い夫じゃないんですよね。多少空気読めない失言もあるけれど、田辺誠一だと悪気のない天然にしか見えないし、有能で稼ぎもけして悪くはないし、爽やかなイケメン。この夫をもっと感じの悪いモラハラ夫として描かないと、主人公の鬱屈は観客には理解できなかったんじゃないか。

    一方、池松壮亮も良い役者さんだとは思うけれど、すべてを捨ててまでのめりこませるほどの説得力(色気や魅力)はなかったし、なにより主人公が彼に魅かれる過程がばっさり端折られていて、いきなりホテル直行というのもどうだろう。けしてヒモ体質ではなかったこの若者に主人公が勝手にどんどん貢いでいく心情も共感しにくい。

    女学生時代に募金のために親の財布からお金を盗んだ過去エピソードは印象的だったけれど、つまり彼女は、夫への不満以前にもともとそういう資質(金銭に対する倫理観がおかしい)があっただけだということになってしまうので、彼女が感じていた虚無感を逆にぼやかしてしまったようにも思いました。

    良かったのは音楽。どろどろになりかねない不倫ベッドシーンに軽やかなリトルモア。回想シーンその他で印象的に使われる讃美歌、銀行での緊迫したシーンに流れるBGMも良かったし、エンディングがニコの歌うファム・ファタルというのも象徴的。あと大島優子の「ありがち」ないまどきOLっぷりもなかなか良かったです。

    • yamaitsuさん
      円軌道の外さん、こちらこそ嬉しいコメントありがとうございます。文章を褒めていただけたのも嬉しい。日記感覚でだらだら書いてしまうんですが、ブク...
      円軌道の外さん、こちらこそ嬉しいコメントありがとうございます。文章を褒めていただけたのも嬉しい。日記感覚でだらだら書いてしまうんですが、ブクログユーザーさんはさすがに読書好きだけに長めの感想も読んでくださる方がいるのでありがたいです。かくいう私も書評というよりはエッセイ感覚で他の方の感想を読んでいるので、円軌道の外さんのレビューは読みごたえがあって楽しいです。

      『紙の月』ドラマ版は観てないんですが、旦那役が光石研・・・想像するだに感じ悪い嫌な旦那っぽいです(笑)映画『共食い』での最低な父親役を見て以来、テレビなどで良い人の役をやっていても悪い奴に見えて困っている役者さんです(笑)それなら主人公の浮気も納得できたかも。

      吉田大八監督、私も好きです。「腑抜けども~」も良かったし「桐島~」も良かった。「パーマネント~」は小池栄子の芝居が大好きでした。

      あ、最後になりましたが、やはりほぼ同世代ですね。私のほうが数年おねえさん(笑)ですが。京都生まれの京都育ち、二十歳で東京に出てきてはや二十数年・・・といったところです。

      映画はもっぱら名画座系で観てるので、見逃したものも結構拾えます。東京は結構ロードショー終わった作品を二本立てで見れたりする映画館多いのですよね。「紙の月」もつい昨日くらいまで池袋の新文芸坐でかかっていたかも。もしお近くにあったら名画座通い、おすすめです。http://miwaku-meigaza.com/joho.htm
      2015/05/14
    • 円軌道の外さん

      yamaitsuさん、お久しぶりです!
      鬱陶しい梅雨空が続いてますが、お元気にされてますか?
      僕はさほど雨が嫌いではないので、雨の音...

      yamaitsuさん、お久しぶりです!
      鬱陶しい梅雨空が続いてますが、お元気にされてますか?
      僕はさほど雨が嫌いではないので、雨の音を聞きながらの読書に心ときめかせています。

      昨日レビュー読ませてもらって思ったんですが、
      yamaitsuさんの文章は難しい言葉を使わずに簡潔にポイントが押さえてあるので
      読み手からしたら分かりやすいんだと思います。
      それプラス、必ずyamaitsuさんが感じたこと、それを評価する理由、受け付けなかった理由、その他パーソナルな情報が散りばめられていたり、
      特に音楽のレビューは好きが溢れまくってて(笑)
      上質なエッセイを読んだ時と同じ
      心地よさがあるんです。
      (普通長いレビューは書き手の人間力が見えてこないと途中で飽きるけど、yamaitsuさんのは人間力をビシバシ感じるから、楽しく読めちゃうのです)

      まさに僕が目指す理想のレビューなんで、ホンマ勉強になります( >_<)
      (音楽レビューも知らなかった情報が知れてまた新鮮な気持ちで聞き直せるし、アルバムや曲の雰囲気をちゃんと書いてくれてるので知らないアーティストを知るきっかけになります!)


      あはは(笑)
      役が異常にハマってる役者を観ると、
      それ以来、何を観てもその役のイメージで見てしまうってありますよね(笑)

      僕も単純で影響受けやすいタチなので
      インパクトある役柄を観ちゃうと
      その役者をずっとその役名で呼んでたりして(笑)、
      友達の前でいざその役者の名前を言いたい時にも
      役名でしか出てこないので、誰にも分かってもらえないという…(汗)( ̄○ ̄)

      あっ、「腑抜けども ~」は大ボケ連発やった永作博美が印象的やったし、
      「パーマネント~」は何度男に裏切られても恋することを諦めない女の悲哀を小池栄子が上手く演じていて、ホンマ泣けました。

      あっ、もしやとは思ったけど
      僕のほうが年下やったんかぁ~(^^;)
      けど、やはり同世代でしたね(笑)

      京都いいですよね~
      神社仏閣や和菓子や和紙や和柄の小物など好きなので、
      大阪にいる時はよく阪急や京阪乗って京都までブラブラしてました。
      上京してそれだけ長いと、yamaitsuさんは東京では
      標準語でしゃべってるんですか?

      僕は関西弁バリバリらしくて(笑)
      (なるべく目立たぬよう生きてるのですが…)
      どこにいても目立ってしまいます(^^;)

      あと、わざわざ名画座情報ありがとうございます!(T_T)
      最近はなかなか時間がないので劇場には見に行けてないのですが、
      せっかく映画や演劇やイベントに関しては
      関西よりかなり充実している東京にいるんやし、
      これから活用させてもらいます。
      ちなみにyamaitsuさんは
      お気に入りの名画座ってありますか?
      ここは居心地いいよ~とか
      また教えてくれたら嬉しいです(笑)


      つか、気付けばめっちゃ長いコメントになってました!すいません!(汗)((((((゜ロ゜;

      東京の友達がホンマ少ないし、
      音楽や映画を話せる人はこっちでは皆無なので(笑)、 
      末永くよろしくお願いします!


      2015/06/29
    • yamaitsuさん
      お久しぶりです円軌道の外さん。嬉しいコメントをたくさんありがとうございます!円軌道の外さんのレビューのどこかにコメント残しに行こうと思いつつ...
      お久しぶりです円軌道の外さん。嬉しいコメントをたくさんありがとうございます!円軌道の外さんのレビューのどこかにコメント残しに行こうと思いつつ、なかなかタイミングが掴めず・・・ブクログさんのコメント機能があまり頻繁なコミュニケーションに向いていない仕様なので、どうやってお返事しようかオロオロしてしまったり(苦笑)こちら見ていただけて助かりました。

      私は仕事のときはバリバリの標準語です。演劇部だったので標準語得意(?)なんですよ(笑)関西弁は、男性のほうが抜けにくいみたいですね。とはいえ、私もときどき固有名詞のイントネーションがおかしかったり、標準語だと信じていた言葉が関西限定だったというのはちょいちょいありますが(苦笑)

      名画座、私がよく行くのは飯田橋のギンレイホールかな。こちら名画座唯一の年間パスポート(会員カード)制で、1年間1万円で見放題なんです。なのでいっぱい観なくちゃ損だと思って活用しちゃいます(笑)DVDより断然映画館派なもので助かってます。

      池袋の新文芸坐はザ・名画座という感じのラインナップで(高倉健特集とか・笑)、立地は怪しいですが劇場内はとても綺麗だし音響も良いのでおすすめ。だいたいどこも2本立てで1300~1500くらいでお得だし、オールナイトで面白い企画やってるところも多いので男性は行きやすいかも。

      確かに東京は映画も演劇もライブも関西より充実してますよね。ぜひぜひ円軌道の外さんもエンジョイしてください!
      2015/06/30
  • バブル崩壊直後の1994年。夫と2人暮らしの主婦・梅澤梨花(宮沢りえ)は、銀行の契約社員として外回りの仕事をしている。
    気配りや丁寧な仕事ぶりが上司や顧客に評価され、何不自由ない生活を送っているように見えた梨花だったが、自分への関心が薄い夫との間には、空虚感が漂いはじめていた。
    そんなある日、梨花は年下の大学生・光太(池松壮亮)と出会う。
    光太と過ごすうちに、ついに顧客の預金に手をつけてしまう梨花。
    最初はたった1万円を借りたつもりだけだったが、しだいに金銭感覚と日常が少しずつ歪みだす。
    角田光代の同名小説を映画化。
    高校生の時にボランティアに熱中した時のように、年下の彼氏に尽くしている時だけは、自分に無関心な夫への怒りを忘れ必要とされている喜びを感じることが出来たこと、徐々に自分の金と顧客の金の区別がつかなくなり暴走していく主人公を細やかに演じる宮沢りえ、銀行や社会の理不尽さに我慢しながら踏みとどまって不自然な記録や書類の不備に気づいて主人公を追い詰める小林聡美、無意識に主人公を悪に誘うが立ち回りの上手い大島優子、三者三様の女性の葛藤と選択が細やかに描かれている女性目線のサスペンス映画の傑作です。
    ラストの宮沢りえの全力疾走は、家庭や仕事や道徳からも解き放たれる開放感すら表現している爽快感あふれるラストでした。

  • 銀行勤務の女性の横領の物語。

    一見優しいようでいて主人公の気持ちに鈍感で、独善的な夫に愛想笑いで合わせる生活。
    一方で、自分を求めてくれる彼氏との、甘く、手放し難い生活。

    そして真面目な主人公は、"善いこと"のために"少しの悪いこと"を行う。一度の成功は繰り返しに繋がり、やがて穴埋めのために止めることができなくなる。

    本作は、そういった行動に走らせた主人公や周りの状況を、登場人物の表情や視線、言葉遣いでうまく描いている点が素晴らしいと思う。

    ラストで主人公は「作り物の幸せ」と主人公は言った。それは若い彼氏との生活のことかと思ったが、それとも夫との乾いた生活のことなのかもしれないと感じた。

    お金と幸せについて、考えさせられる作品でもあった。ぜひ。

  • 中盤、やや冗長な気がして退屈に感じるところもあったものの、終盤がそれを補って余りある。
    邦画には2種類ある。お金儲けをほぼ全ての目的としてアホがアホのために作りそのアホが高評価するアホ映画と、少しでも他にはない何かを目指して、いい作品を作ろうとして職人たちが創意工夫を重ねて作り上げ、真面目な批評を受けた映画との2種類。本作は後者である。
    やはり終盤の展開は秀逸としか言いようがない。個人的にあまり好きなタイプのシナリオではないが、映画として良く出来ている。

  • うーん…。
    原作読んでから観たからかすべてに消化不良で終わった。

    光太とああなった経緯も、横領に手を染める過程も、夫の正文のチクチクした嫌味も、子どもができない葛藤も。
    細かい描写は126分では無理なのかなぁ。
    映画って難しいね。

    宮沢りえはキレイだけれど、お芝居は…。
    逆に小林聡美はさすがだなと思った。

  • なかなか良かった。原作は確か読んでいた気がするがすっかり忘れていたので新鮮だった。この女優さんはあまり好きじゃないんだけどこの役のできは認めざるを得ない。

  •  衝撃でした。序盤の描き方がとてもいい。これから不穏なことが起こるんだろうなという気配がじわじわと伝わってきます。全編を通して雰囲気の作り方がとても巧みでした。どこかぎこちない感じや不自然さ、ぎくしゃくした会話や関係の描き方が違和感のない範囲で不安を煽ってきます。
     劇中における要素を一つずつ抜き出したら大したことはないようにも見えます。それこそ「よくある」ことです。しかしそれらが積み重なっていくと、点でしかなかった要素が段々とつながっていき、大きな染みとなって心を締めつけてきました。
     俳優さんたちもすばらしいです。まず宮沢りえさんという主役。清らかさや美しさを感じられる人に不安をかき立てる行動を取らせる。これがとても効果的でした。まさに適役です。
     次に大島優子さん。軽薄そうでありながらもなにか鋭いところがある人物として物語を彩っていました。そんなことを言うのかと驚くようなせりふがあったりと、見ていておもしろいキャラクターです。
     最後に小林聡美さん。この人なくしてこの映画は盛り上がらないというくらい、とても魅力的でした。あの厳格な隅という人物がいたからこそ緊張感がありましたし、彼女が日常と非日常の(もしくは現実と幻との)一つの境目になっていたようにも思います。
     女性ばかりを挙げましたが、もちろん男性陣の活躍もすばらしかったです。夫役の田辺誠一さんは妻への気遣いのなさから来る主人公へのストレスの与え方がうまかったですし、近藤芳正さんは変革を示すようで保身的な優秀には見えない上司としての振る舞いが見事でした。
     そのほかにもお客様役の方々はどなたも適切な役割で主人公と関わっていました。人がよさそうな方ばかりで、そんな方々を利用して悪事を働いているのかと考えると見ているこちらがつらくなってきます。
     感情的になる場面が少ないのもこの作品における美点かもしれません。特に負の感情は激しい表現がなかったように思います。楽しそうな場面では思いっきりはしゃいでいましたが、それも主人公が抱える葛藤から来るものっだったのでしょうか。
     鑑賞し終わってしばらく経っても、まだまだ余韻に浸っていたくなります。静かな映画ではありますが、心に受ける衝撃は確かなものでした。

  •  まあまあ面白かった。
     が、ヒロインの銀行員(宮沢りえ)が大学生と不倫に陥るまでと、そこから横領を始めるまでのプロセスに、ものすごく唐突感があった。
     そこに至るまでの心の葛藤とか、不倫の前提となる夫との確執が、映画ではほとんど描かれていないのだ。

     当方、角田光代の原作は未読だが、おそらく原作ではそのへんが綿密に描き込まれていて、読者が自然にヒロインに感情移入できる(=共感はしなかったとしても、不倫と犯罪に走った心情が理解できる)ようになっているのだろう。

     この映画版は、横領が始まってからのサスペンス描写に的が絞られている。その分、横領に至るプロセスを端折りすぎだと思う。

     とはいえ、宮沢りえは大変な熱演だし、助演陣も総じて頑張っている。

     ベテラン銀行員役・小林聡美、次長役・近藤芳正の演技の評価が高いようだが、私はむしろ、ヒロインと不倫する大学生を演じた若手俳優・池松壮亮の演技に感心した。
     軽薄でちゃらちゃらして、年上の女性に甘える手練手管だけはすごいという、鼻持ちならない若者を見事に演じている。
     「ヒロインはなぜこんな奴のために人生を棒に振るのか」と、観ていて怒りさえ込み上げてくるほどの名演だ。

     なお、エンディングテーマに使われているのは、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの名曲「FEMME FATALE(宿命の女)」。「この曲しかないでしょ」という感じのハマり具合である。

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