マーケット感覚を身につけよう---「これから何が売れるのか?」わかる人になる5つの方法 [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 【市場の構造を理解するための要素】
    ①取引される価値
    ②買い手=需要者(価値を入手する人)
    ③売り手=供給者(価値を提供する人)
    ④取引条件(価格など)

    【市場の動きを理解し、予測・利用するための要素】
    ⑤買い手と売り手が取引する動機
    ⑥それぞれの要素に起こりうる今後の変化
    ⑦市場の中で選ばれるための方法

     私は、ジャパネットたかたが売っているのは「孫のアドバイス」だと思っています。実際の孫は、祖父母の買い物に、毎回つきあってくれたりはしません。自分たちの生活やニーズも、そこまで把握してくれていません。
     …
     ここで重要なのは、その説明の合理性ではありません。説明を聞く前から、顧客側が、「この人は、私が信じられる人だ」「この人は、自分に合う商品を理解してくれている」と感じていることが重要なのです。

    ・プライシング
    ①自分にとって、この商品(サービス)の価値はいくらか?

    ②他の誰かにとって、この商品(サービス)の価値はいくらか?

    ③そのまた別の誰かにとって、この商品(サービス)の価値はいくらか?

    ④この商品(サービス)を最も高く評価する人は、どのような人たちか?

    ⑤この商品(サービス)を、誰に向けて売れば、価格は一番高くできるのか?もしくは、一番たくさん売れるのか?

     もうひとつの組織と市場の意思決定方法の違いは、組織が「決めてから→やる」のに対し、市場は「やってみてから→決める」という点にあります。

    ■マーケット感覚を鍛える5つの方法
    その1 プライシング能力を身につける
    その2 インセンティブシステムを理解する
    その3 市場に評価される方法を学ぶ
    その4 失敗と成功の関係を理解する
    その5 市場性の高い環境に身を置く


    その4 失敗と成功の関係を理解する
     マーケット感覚を鍛えるための4つめのポイントは、成功と失敗の関係を正しく理解することです。日本人はよく、「シリコンバレーは失敗に寛容だが、日本社会は失敗した人を許さない」と言いますが、この理解は完全に間違っています。シリコンバレーは失敗に寛容なのではなく、「失敗経験のない人など、まったく評価しない」のです。
     なぜなら「失敗経験のない」ということは、「これまでの人生において、チャレンジをしてきていない」と見なされるからです。「できる範囲のことしかやってこなかったのでは?」「高い目標を掲げた経験がないのでは?」と疑われるのです。

     特に失敗を成功の反対概念と捉え、避けるべきもだと考えていると、失敗を怖がるあまり、市場での学びのプロセスになかなか踏み出せません。


     私が学生に、最初から日本の大企業や公的機関で働くのを勧めない理由も同じです。大きな組織になればなるほど分業が進み、市場から遠い部門で働く人が多くなります。組織が整っていないベンチャー企業や、ラーメン屋などの自営業の場合、社長からアルバイトまで、全員が常に市場に向き合っているのとは対照的です。

  • 同じモノが、見る人によって全然違うものに見える。そこから感じる価値に差がある。その価値を感じる力がマーケット力。

    →身近なところで言えば、お客さんとの会話の中でビジネスになるネタを拾えるかどうか、それは成功体験を伝えていくことで広めていく。

    そのマーケット力はセンスではない、磨くことができる。
    ファッションセンスと一緒。

    シリコンバレーでは失敗していない人を全く評価しない。
    失敗していない=挑戦していない
    →行動量ファースト

    ↓メモ
    ★あるときふと自分の足もとを見ると、そこに大きな金塊があったとします。大人なら誰でも、びっくり仰天するでしょう。慌てて家族や友人を呼んだり、スマホで写真を撮ったり、持ち上げて重さを確認したりと大興奮しますよね。なぜなら私たちは、「金塊には価値がある」と知っているからです。 ところが幼児や動物の足もとに金塊を置いても、それは単に、キレイな石に過ぎません。

    その人に足りないのは「価値ある能力」ではなく、「価値ある能力に、気がつく能力」です。

    ★マーケット感覚の有無によって、同じモノが、同じ人が、そしてまったく同じ環境が、「なんの取り柄もないモノ」に見えたり、「大きな価値のある、これからの世の中で強く求められるモノ=売れるモノ」に見えたりします。

    ★同様に、マーケット感覚のように一見「センス」系に見える能力も、必ずしも一部の人だけが持つ天賦の才ではありません。洋服のセンスがとても素敵な人は、小さい頃から洋服選びに長い時間や思考シェア(モノを考えている時間のうち、洋服について考えている時間の比率)を割き、おこづかいの大半を被服費に投じて、他の人の何倍も多くの失敗を経験したうえで、周囲から一目置かれるセンスを獲得したのです。それらは決して「生まれつきのセンス」などではありません。

    市場化が進む社会で高く売れるのは、「よい商品」ではなく、「需要に比べて供給が少ない商品」

    大きな枠組みとして「お金を使う世界」と「お金を貯める世界」の競争がある。

    ★特に若い人は、むやみに貯金ばかりしていては、将来に向けて必要な経験が得られません。今年100万円分の貯金が増えたと喜んでいる人は、自分はもしかしてこの1年で、100万円分の貴重な経験を逃がしてしまったのではないかと、振り返ってみるべき。

    私に言わせれば、彼に足りないのは学歴でも年収でもありません。足りないのは、マーケット感覚です。若さやルックスや性格など、自分の強みが活きる市場を選んで婚活を行なっていれば、こんな男性が200連敗するなんてありえません。

    自分をどこで売るべきか、自分が高く売れる市場はどれなのか。「一生懸命頑張る!」前に、どの市場で頑張るべきなのかという市場の選択にこそ、マーケット感覚を働かせる必要があるのです。

    ★そういった視聴方法では、コマーシャルはスキップされ、消費者に届きません。このため、リアルタイムで見てもらえるスポーツコンテンツの価格だけが、高止まりしているのです。

    日本の消費者は要求水準が非常に高いため、その市場が、テストマーケティングやブランドの信用補強にとても役立つのです。 海外のメーカーの中には「日本で売れれば、自信をもって世界で売れる」と考えている企業もあり、「日本で売れた」は、一昔前の「全米が泣いた!」といった映画のコピーと同様、「あの厳しい水準の市場で通用した」というクレジット(信用力)として通用します。日本の消費市場は、その目利き力によって、高く評価されているのです。

    プロスポーツの市場で取引されているのは(=観客が求めているのは)、「思わず感嘆してしまうほど高いレベルの技や、手に汗握るパフォーマンス」という価値ですが、高校野球では「全力で戦ったにもかかわらず、時の運で勝ったり負けたりする理不尽さや、技術レベルが低くても、気合いと根性でカバーしようとする若者たちの物語」が取引されています。つまりプロ野球と高校野球では、観客に提供されている価値が異なるのです。

    ★シリコンバレー は 失敗 に 寛容 なのでは なく、「 失敗 経験 の ない 人 など、 まったく 評価 し ない」 の です。 なぜなら「 失敗 経験 が ない」 という こと は、「 これ までの 人生 において、 チャレンジ を し て き て い ない」 と 見なさ れる から です。「 できる 範囲 の こと しか やってこ なかっ た のでは?」「 高い 目標 を 掲げ た 経験 が ない のでは?」 と 疑わ れる の です。

    たとえば 小説家 志望 で、 プロット は 考え た し 第 1 章 は 書け た けれど、 その後 が どうしても 進ま ない、 という 状態 に なっ たら、 その 時点 で 第 1 章 だけを ネット 上 に 開示 し て しまっ ても いい の です。 そう すれ ば、 第 1 章 の 内容 について も、 そして 今後 の 展開 について も、 市場 からの フィードバック が 得 られ ます。

  • ちきりん3部作の2番目。どんな分野にもマーケット(市場)はあるという考察。
    非営利(ボランティア)の分野でも市場はあるというのは、なるほどと思った。
    このブログもストックがめちゃくちゃあるので何とかならないかとは思ってるが。

  • 少なくとも自分はそうだったのだけど、子供の頃は将来やりたい仕事なんてなかった。正直、今もやりたい仕事などない。できることなら、仕事はせずに生きて行きたいが、そうはいかないので仕方なしに働いている。今の子供も、私と同じように働いている大人も、特段仕事で実現したいことはなく、何となく将来に何らかの不安を抱えながら生活している人は少なからずいるのではないかというのが実感だ。

    そんな勝手な前提に立っての話ではあるけれど、日々、子供達に限らず「将来の夢圧力」があるように思う。仕事を通して自己実現する「将来の夢」なるものが存在し、それを持つことこそがあるべき姿だとする、ような同調圧力である「将来の夢圧力」とは別に、職能として英会話やITスキルなどの「スキル」の必要性が広告媒体を通して拡散されてもいる。それらの「スキル」があれば、よい仕事につけるかのようなことを語り方だ。この「スキル」も一種の圧力になってきているように感じる。

    アクセスできる情報量は日々飛躍的に増えているし、手を替え品を替えいろいろな広告情報がアクセスしてくる。そんな中で、情報に流されているなと感じてすらいなかった自分としては、一度立ち止まって、自分の頭で考え判断するということを考え直すきっかけになったと思う。

    英語やITといった「スキル」を手にしさえすれば安泰とかと問われれば、確かに、ないよりはあったほうが職は得やすいかもしれないが、その状況が今後ずっと続くとは限らないし、そんなことは多くの人は分かっているはずだ。では、どうしたらよいのか。

    既に社会的に「価値」があるとされている、資格、英語やITといったスキルは過当競争に陥りがちで、需給バランスの観点から、コモディティ化され、その「価値」は低くなるリスクがある。そのため、世の中の動向に目を配り、自分で考えて、まだ見出されていない「価値」を発見するため感覚を身に付けることだが重要だという。そのことを本書ではマーケット感覚と呼んる。

    そのマーケット感覚とは何なのか?
    「一言で言えば、社会や人が動く根源的な仕組みを理解する能力がマーケット感覚で、その仕組みを活かして、何らかの目的を達成するための手法がマーケティングなのです。」

    では、世の中の動きを敏感に察知した上、深い洞察を加えて新しい「価値」を見出せたとしよう。ただ「価値」を見出しただけでは、何も始まらない。その「価値」を取り巻くマーケットを作り出す挑戦が必要だ。まだ見出されていない「価値」であるため、どうしたら必要な人に届くのか、一から考え行動する必要がある。挑戦には失敗がつきものだ。失敗を通しての学びの必要性もうったえている。

    「また、失敗経験のない人は「成功するのに必要な学びを得ていない」とも思われます。失敗から得られる学びは非常に大きく、成功のために不可欠な経験と考えられているため、一流大学を出ていても失敗経験のない人は、学びの量や質が足りていないと判断されていまいます。」

    著者はちきりんと名乗る有名ブロガー。元々、日記を書いていて、それをブログとして公開し続け、人気を獲得していった。当初は会社員のかたわらブログを更新していたが、現在は文筆家として独立している。著者自身、ブログでの情報発信に「価値」を見出して、自分のマーケットを開拓してきたのだから、説得力がある。

    本書のキーワードは「マーケット感覚」と「失敗からの学び」だと感じた。世の中の動きをゼロベースで捉え直し、新たな「価値」を見出し、その「価値」の市場を作り出すことができれば、社会はより豊かになるし、だいいち、物事を異なる視点から見直してその見方を広めていくという行為自体、ワクワクするに決まっているのだから。

  • マーケット感覚を身に着けたくて手にとってみたけど、ちょっとタイトルに釣られた感じはあります。新たな知見や視座はあまり得られなかったですね。とは言え平易な文章でとても読みやすいので「マーケット」という言葉に興味ある方にはお勧めです。

  • 『プライシング能力』相場ではなく、自分の価値観で値を見極める。 コスト発想でなくて、マーケット発想。 “規制ではなく、インセンティブを付けてコントロールする発想へ。” 当たり前のポイントだが、どれも本質。ガツン!と腹落ちした。

  • これこらの社会を生き抜くには、論理的思考力ともう一つのスキル、マーケット感覚が必要だ。その理由と定義、身につけるための手段までまとめた一冊。

    感覚というのは、論理的に考えた先にあるんじゃないかなぁ。対になっている、という表現に違和感を覚えた。

著者プロフィール

ちきりん

関西出身。バブル最盛期に証券会社で働いた後、米国の大学院留学を経て外資系
企業に転職。2005年に書き始めた社会派ブログ「Chikirinの日記」は日本有数の人
気ブログとなり、ツイッターのフォロワーは30万人を数える。2011年からは独立
し、文筆活動に専念。デビュー作となった本書のほか、『自分のアタマで考えよ
う』(ダイヤモンド社)、『社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう』(大和書房)、
『未来の働き方を考えよう』(文藝春秋)などの著作がある。

ブログ    https://chikirin.hatenablog.com/
ツイッター  https://twitter.com/InsideCHIKIRIN

「2013年 『ゆるく考えよう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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