シャイニング(下) (文春文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • さすがは幽霊屋敷モノの名作。
    ゴシックホラーの典型的な展開だけど、題材のホテルがやっぱりいい味だしてる。

    映画とは違うオチだけど、結末だけは原作の方が好き。

  • 映画もまた観たい!

  • (上下あわせて)映画と比べるとウェンディが重傷だったが、ハロランが生き残ってくれてうれしい。ダニーがジャックを追い払ったくだりは頭良くてよかった。
    ジャックのモノローグが自分勝手すぎて気分が悪くなってくる。こういうヤバい奴の心理描写がリアルですごい。間違ったマッチョ思想のせいで状況を悪化させて、しかも自分のせいだと思いたくないから無理やり人のせいにして過剰に攻撃するという…。
    映画はジャックの内面やこれまでのやらかしについてはあまり説明がなかったが、演出と演技であのやばさがきっちり再現されていたと思うとすごいな。
    スティーヴン・キングの作品は登場人物が親や兄弟に対して何かしらわだかまりや不和を抱えていることが多くて親近感がわく。

  • (01)
    オーバールックホテルは、コロラドの山岳地帯の美しい景観がその魅力となっているが、高所からの見渡しと同時に、見落としや見逃しが含意されている。この擬人的な建物(*02)に、家族三人はそれぞれに、奇妙な同調と乱調を示す。
    例えば、ジャックの癇癪は、ホテルのボイラーと同期しているかのようである。ダニーとトニーとの感性は鋭く、ホテルのいちいちの怪異に過敏に反応してしまうし、彼らが鍵となってジャックの悪性を解き放っているかのようでもある。ウェンディには霊感は少ないようであるが、ホテルが物理的にもたらす孤立によって、ジャックへの恐怖を募らせ、ダニーと連携してジャックをホテルとともに葬ろうという気分は、ホテルへの対抗力であると同時に、ホテルやジャックをより一層刺激してしまう。

    (02)
    そしてオーバールックは、動物的でもある。表に設えられた迷宮のトピアリーはライオンなどの動物を象っており、すずめばちは最後まで家族に悪さをしかける。アルコールに飢えているジャックは、癇癪にしても野生の解放を求めており、アルコールへの依存は野生動物としての人間の一面を浮き彫りにする。
    オーバールックの歴史には、20世紀の観光ホテルや闇興行の暗黒が刻まれている。ジャックがこの歴史にアクセスする時、ホテルの生理と精神は、ジャックに染み込んでいくように感じられる。その時、ホテルが獲物を狙うのは、ホテルが有する動物性を駆使しているというよりも、人間の近代性のためにヒューマニズムが排除してきたもののようにも思える。つまり、子ども、女性、黒人、アルコールに依存する弱者、癇癪を起こしやすい弱者といった属性は、それぞれに近代社会が理由をつけて(*03)暗がりに押し込んだ何者かでもあったように感じる。

    (03)
    文体も楽しい。トランスしたような台詞には、前衛的なものよりも、むしろ戯曲の伝統を感じる。地の文にも豊富な暗示が集合しており、言いかけて終わる言葉(体言)には余韻が漂う。クロケーの木槌という小物が終盤に重要な役割を果たすが、その打ち込みの強さを示すように強調される文章がある。また、後半のハローランと現地とのクロスカッティングのような章構成は、映画的な手法の取り込みとも言える。章だけではなく、文の中にもクロースアップ効果も見えているようである。

  • 映画見て、ドクタースリープも読み切ってからの感想

    ・キューブリックなんでほんとハローラン殺してしまったの???
    ・映画版で謎だった犬男の答えが結構えぐく感じた(なんとなくだけどキングって邪悪なものはとことん邪悪に書くよね)
    ・他の作品はまだ読んでないからわからないけど、悪がとにかく悪な分、主人公たちがいわゆる「彼らにもこんな事情があるんだ!」って敵みたいな中身になってる印象
    ・キューブリックの動く生垣の代わりに巨大迷路の改変はとても良いし、恐らく児童遊園の姿を見ることはなかった子供の代わりに双子ちゃん足したのもほんと天才だと思う
    ・だけどなぜアルコール依存症の父親のことを描写してくれなかったのか
    ・どうして父親が最後正気一瞬戻す姿を描いてくれなかったのか
    ・おかげで映画版ドクタースリープのラストがやりきれない
    ・とにかく映画を見た人、もしくはこれから見る人もちゃんとドクタースリープまで読んでほしい
    ・依存症へ立ち向かう人と、その家族の物語
    ・ジャック・トランスは頑張ったんだ、ただあのホテルに行く運命になってしまったことだけがサイアクだったんだ

  • 弱い環であるのはダニーではない。この自分なのだ。

    徐々に悪霊が姿を現し始めた上巻を経て、怪奇現象が頻発する第4部、そしていよいよ悪霊に取り憑かれた父と対決する第5部が下巻になります。

    悪霊は様々な力を見せますが、生垣の動物のような例外を除き、基本的には父をよりしろにしないと物理的な危害は加えられません。父の攻撃も母の反撃も、木槌や包丁など平凡な道具によるものです。

    また、助けの手がなかなか到着できない、という「ペット・セマタリー」にもあったシーンについても、理由もなく車が動かなくなるなど超自然的な力が強かった「ペット〜」と異なり、こちらはスピード違反が警察に見つかる、吹雪で道が通行止めになるなど、現実的な理由によるものです。

    そのため、こちらもよりリアルな形で恐怖を感じることとなり、圧倒的に無力な妻子が逃げまどう第5部は、途中でやめられず最後まで読んでしまいました。

    終盤391ページからの展開がやや唐突に思えた(「IT」でも同様の感想を持ちました。)のだけが残念でしたが、傑作だと思います。

  • 2020.5.20
    キングが映画版シャイニングを認めていない理由がなんとなく分かる。映画版は映画版で素晴らしいけれど、わたしはこの小説版の繊細な感じの方が好きだ。

    ジャックが自我と闘いながらも取り込まれていく姿は恐ろしいながらも切ないな。
    終盤、ダニーと3階でのやり取りでジャックが自分を制しようとしたところは、映画版ではとても考えられない。笑

    ハローランがちゃんと活躍してて嬉しかった。
    映画みたいにすぐ死んで、なんで来たのか分かんない感じにならなくてよかった。


    メモ
    下巻始めの方でエレベーターが勝手に動き出して家族が恐怖するシーンと、
    ジャックがバーでパーティーを楽しむシーンがお気に入り。

  • ホテルが幽霊屋敷としての姿を現し、徐々に精神を取り込まれていくジャック。何というか、最初から好きなれないこの男の所為で起こる現象だと思うと、怖さよりも腹ただしさが先に立つ。ホラーよりも次に何が起こるかというサスペンス的な意味でのドキドキ感が強かったかな。スティーブンキング氏の作品で言えば、僕にとっては『ミザリー』の方が圧倒的に怖かった。

  • 2019/08/15

  • 映画もその映像と恐怖感の出し方で名作だと思うが、物語の骨格が同じというだけ。本小説の映画化という前提でキングが映画版を認めないのも理解できる。
    登場人物のイメージも全く違うし、ストーリーの描くべき恐怖の内容も違う。
    つまり、題名だけが同じということだ。

    小説も名作、映画も名作。

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著者プロフィール

1947年メイン州生まれ。高校教師、ボイラーマンといった仕事のかたわら、執筆を続ける。74年に「キャリー」でデビューし、好評を博した。その後、『呪われた町』『デッド・ゾーン』など、次々とベストセラーを叩き出し、「モダン・ホラーの帝王」と呼ばれる。代表作に『シャイニング』『IT』『グリーン・マイル』など。「ダーク・タワー」シリーズは、これまでのキング作品の登場人物が縦断して出てきたりと、著者の集大成といえる大作である。全米図書賞特別功労賞、O・ヘンリ賞、世界幻想文学大賞、ブラム・ストーカー賞など受賞多数。

「2017年 『ダークタワー VII 暗黒の塔 下 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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