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感想・レビュー・書評
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さすがは幽霊屋敷モノの名作。
ゴシックホラーの典型的な展開だけど、題材のホテルがやっぱりいい味だしてる。
映画とは違うオチだけど、結末だけは原作の方が好き。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
映画もまた観たい!
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(01)
オーバールックホテルは、コロラドの山岳地帯の美しい景観がその魅力となっているが、高所からの見渡しと同時に、見落としや見逃しが含意されている。この擬人的な建物(*02)に、家族三人はそれぞれに、奇妙な同調と乱調を示す。
例えば、ジャックの癇癪は、ホテルのボイラーと同期しているかのようである。ダニーとトニーとの感性は鋭く、ホテルのいちいちの怪異に過敏に反応してしまうし、彼らが鍵となってジャックの悪性を解き放っているかのようでもある。ウェンディには霊感は少ないようであるが、ホテルが物理的にもたらす孤立によって、ジャックへの恐怖を募らせ、ダニーと連携してジャックをホテルとともに葬ろうという気分は、ホテルへの対抗力であると同時に、ホテルやジャックをより一層刺激してしまう。
(02)
そしてオーバールックは、動物的でもある。表に設えられた迷宮のトピアリーはライオンなどの動物を象っており、すずめばちは最後まで家族に悪さをしかける。アルコールに飢えているジャックは、癇癪にしても野生の解放を求めており、アルコールへの依存は野生動物としての人間の一面を浮き彫りにする。
オーバールックの歴史には、20世紀の観光ホテルや闇興行の暗黒が刻まれている。ジャックがこの歴史にアクセスする時、ホテルの生理と精神は、ジャックに染み込んでいくように感じられる。その時、ホテルが獲物を狙うのは、ホテルが有する動物性を駆使しているというよりも、人間の近代性のためにヒューマニズムが排除してきたもののようにも思える。つまり、子ども、女性、黒人、アルコールに依存する弱者、癇癪を起こしやすい弱者といった属性は、それぞれに近代社会が理由をつけて(*03)暗がりに押し込んだ何者かでもあったように感じる。
(03)
文体も楽しい。トランスしたような台詞には、前衛的なものよりも、むしろ戯曲の伝統を感じる。地の文にも豊富な暗示が集合しており、言いかけて終わる言葉(体言)には余韻が漂う。クロケーの木槌という小物が終盤に重要な役割を果たすが、その打ち込みの強さを示すように強調される文章がある。また、後半のハローランと現地とのクロスカッティングのような章構成は、映画的な手法の取り込みとも言える。章だけではなく、文の中にもクロースアップ効果も見えているようである。 -
ホテルが幽霊屋敷としての姿を現し、徐々に精神を取り込まれていくジャック。何というか、最初から好きなれないこの男の所為で起こる現象だと思うと、怖さよりも腹ただしさが先に立つ。ホラーよりも次に何が起こるかというサスペンス的な意味でのドキドキ感が強かったかな。スティーブンキング氏の作品で言えば、僕にとっては『ミザリー』の方が圧倒的に怖かった。
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2019/08/15
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映画もその映像と恐怖感の出し方で名作だと思うが、物語の骨格が同じというだけ。本小説の映画化という前提でキングが映画版を認めないのも理解できる。
登場人物のイメージも全く違うし、ストーリーの描くべき恐怖の内容も違う。
つまり、題名だけが同じということだ。
小説も名作、映画も名作。