日経サイエンス2015年07号

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  • 日本経済新聞出版社 (2015年5月25日発売)
  • Amazon.co.jp ・雑誌
  • / ISBN・EAN: 4910071150756

日経サイエンス2015年07号の感想・レビュー・書評

  • 事象の地平面は時空の終焉。エピジェネチックは次のトンデモ科学の格好のネタか。ちっさいテイラノサウルス。トキソプラズマが人間に与える影響。中国の食の脅威。

  • 遺伝するエピジェネティック変異
    脳を操る寄生生物 トキソプラズマ

  • 特集の「炎熱のブラックホール」から。
    「ブラックホールにも壁がある」のお話。
    ブラックホールに近づいていくと、引き返し不可能となる「事象の地平」が存在する。従来、そこを通る当人は、特別な感じを受けることなく、ただただ奈落へと転落していくと考えられてきた。記事の執筆者は、量子力学的見地から再検討したところ、事象地平に高エネルギー粒子の「ファイアウォール」があるという結論に達したという。不幸にもここに到達した宇宙飛行士は、奈落に落ちる前にそこで即死すると考えられる。ここはまた、時空の終端である可能性もあるという。
    はて何やらよくわからんな、と思うお話だが、量子論が常識的な感覚からは理解しにくいのはよくあること。提唱者も弟子も半信半疑だというが、ひも理論を元に考察していくとそうなるらしい。
    そして壁の向こう側では、なんと、時空が欠如しているかもしれないという。
    何もない、「無」。
    ・・・難しすぎる・・・。

    スリリングな記事が多かった今月。
    「DNAとは別の道筋」は遺伝するエピジェネティック変異の話題。エピジェネティクスは近年非常に注目されている。ヒトの遺伝暗号はDNAの塩基配列(A、T、G、C)に刻まれているが、受け継がれていく遺伝子はまた、環境要因によっても影響を受ける。遺伝子が設計図であるならば、どこを読むかを決めるのがエピジェネティクスだ。メチル化やヒストン(細胞内でDNAが巻き付くタンパク質)の修飾によって、どこを読むか読まないかが制御されているのだ。これは従来、後成的なもの(環境等によって変化するもの)と考えられてきたが、どうやら遺伝するものもあるらしい。母親が有害な環境にさらされ、子供に影響が出る例ならば胎内で曝露されたと考えることも可能だが、数世代に渡ってエピジェネティック変異が伝えられ、子孫に影響が出る場合があるようなのだ。
    筆者らは肥満や糖尿病が増えた一因として(もちろん、大きな理由は生活様式や食糧事情の変化だとしても)、例えばDTTなどの影響もあるかもしれないと考えている。
    さらに精査が必要だろうが、子孫に受け継がれるものはこれまで考えられてきたよりも複雑な背景を持っているのかもしれない。

    細胞生物学の話題から「細胞の運命を決める機械的な力」。
    これが個人的に今号で一番おもしろかった話題。
    癌などの増殖異常は、発現する遺伝子のブレーキが外れたり、働くべきものが働かなくなる、いわばバランスが崩れた状態だと考えられてきた。何らかの形で遺伝子の改変が起こり、そうした変化を引き起こすというのが定説だった。
    ところが、近年、細胞に機械的な力を加えただけで(例えば引っ張って伸ばしただけで)、正常な細胞が癌細胞のような異常な分裂を始めるという現象が発見された。遺伝子に傷が入らなくても、物理的な力だけで細胞が癌化するというのだ。
    考えてみれば、体内の細胞にはそれぞれ物理的な力がかかっている。十分なスペースがある場合、細胞は分裂を続けるが、密集してくると増殖が遅くなったり止まったりするのが普通だ。そうして通常は臓器が異常に肥大したりすることがないように制御されているわけだ。そうなると、細胞に物理的な力を感知する「スイッチ」があると考えるのは自然な流れだろう。
    このスイッチの1つとして、著者らはYAPとTAZと呼ばれるタンパク質を発見した。細胞が密集している場合、YAPやTAZは阻害分子にトラップされている。ところが細胞が広がる余地が十分にあるとき、阻害分子がぴんと張った細胞骨格に引っかかるような形で拘束されてしまう。そうなるとYAPやTAZは自由に核に移動し、細胞増殖を促すスイッチとなるというのだ。
    癌の治療や組織再生へと今後、さまざまな広がりがありそうである。

    もう1つスリリングだったのは、「デー... 続きを読む

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