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- / ISBN・EAN: 4988142078919
感想・レビュー・書評
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英国映画らしい映画であった。
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優しく受け入れてくれた養父、実は優しかった養母、初恋のルディ、ユダヤ人のマックス、本の世界へと導いてくれた市長夫人。ナチスに抑圧された戦時下でも、人間味ある交流を丁寧に描くことで名作になりました。息苦しいのは日本の戦時下の特徴と思っていたら、ドイツもそっくりですね。読み書きの出来なかったリーゼルが、本を通じて学び、読み語ることで人を救う場面も感動しました。中味が濃くて二度三度の鑑賞に耐える作品です。
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ナチスドイツが猛威をふるった時代、里親の元で過ごした少女リーゼルの姿を描いた作品。マークース・ズーサックの「本泥棒」が原作。
ヒトラー率いるナチス政権下のドイツ。
共産党員の母は生きづらさから里親夫婦に少女のリーゼルを預けて姿をくらませてしまう。まだ幼い弟は里親の元に向かう汽車の中で死んだ。
孤独な彼女に常に優しく寄り添う養父ハンスと、言葉や態度は一見冷たいけど実はとても愛情深い養母のローザ、そして、隣家の少年ルディに囲まれながら、彼女は貧しくも穏やかな日常を過ごすけど、ユダヤ人狩りに象徴されるナチスの狂気の支配と、戦争の激化は止まらなくて…。
一映画としての完成度は決して低いわけではない。むしろ、うまくまとまっている。
でも、それは原作の持ち味を捨て去った犠牲の上になりたっているので、没個性な作品に仕上がってしまっていて、なんとも残念。
原作を読んで楽しみに映画を観た者からすると、なんでこんな中途半端なものを作ってしまったのだろうとばかり思ってしまう。
ズーサックの原作は、最初から最後まで、とある「死神」が回顧録的にリーゼルの人生を語るので、結末を知っている者の視点による人生の機微や不可思議さみたいな伏線の妙を味わえる。
でも映画ではそれが全部抜け落ちてしまっている。
いや、本作にも「死神」のナレーションが何回か挟まってはいるのだけど、それ、別に死神の言葉でなくてもいいよね、という程度の短くて薄い言葉でしかなく、伏線的な役割が全く果たせていない。
というか、それならリーゼル自身が過去を振り返る言葉として挟んだほうがよほど効果的な演出になったのではと思う。原作を読んでない人は、なぜここで死神としての言葉が出てくるかきっとわからないのでは?とさえ思う。
そして、タイトルの「本泥棒」が示す、リーゼルが度々本を盗む行為。
あれは原作では彼女の内面の渇望や精神安定といった様々な要素を秘めており、とても意味深い行為。
でも映画では演出不足のおかげでなんとなく泥棒してるだけな感じになってる…。
原作を読んでなければ、ナチス時代の一少女を描いた作品としてサラリと楽しめるかもしれないけれど、原作好きとしては残念な作品でした。-
おっしゃるとおりですね。私も映画を観てガッカリした一人です。
この作品は、せいぜい数時間の映画になど収まりきらないものだと思います...おっしゃるとおりですね。私も映画を観てガッカリした一人です。
この作品は、せいぜい数時間の映画になど収まりきらないものだと思います。リーゼルとその周りの人たちとの間の出来事のひとつひとつを時間を掛けて大切に描いて初めて、その後の悲劇が心に訴えるのだと思います。映画は単なる「あらすじ」になってしまっていると感じます。2018/12/26 -
シャクナゲとエビネさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
「あらすじになってしまっている」お言葉のとおりですね。
ちょっと手厳し...シャクナゲとエビネさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
「あらすじになってしまっている」お言葉のとおりですね。
ちょっと手厳しい感想にしてしまったかと思ったので、同じような感想の方がいらっしゃって、ホッとしています。2018/12/26
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戦時中のドイツでの本好きの少女の運命
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アマゾンで好評だったので見てみた。善人でもなく悪人でもない、戦争に翻弄される市井の人々の日々を淡々と描くので、もっとスリリングなものを期待していた私はいつ悪人出て来るんだ・・・いつショッキングなことが・・・アレッ?てなった(笑)レモン色の髪の少年がせつない。
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この作品は劇場未公開作。
でも「じゃ、つまんないんじゃない」とスルーするにはもったいない感動的な作品でした。
ベストセラー小説を『ダウントン・アビー』のブライアン・パーシヴァル監督が映画化。
ナチス政権下のドイツ。
とある理由から里親に預けられる事になったリーゼル。
一緒に預けられる予定だった弟は旅の途中で亡くなり、ひとり見知らぬ土地で見知らぬ人々の間で暮らすことに...。
里親は優しい父と厳しくキツい母。
字が読めないことで学校の同級生からバカにされるが持ち前の頭の良さと負けん気で反撃。隣に住む少年とも仲良くなる。そこに大きな図書室をもつ町長さんや家でかくまう事になったユダヤ人青年との交流もあり...。
リーゼル役の女優さんソフィー・ネリッセが可愛い!
顔は似てないけどシアーシャ・ローナンを『つぐない』で初めて見たときのような興奮。これから活躍してほしいなあ。
里親ふたりのバランスもいい。
ジェフリー・ラッシュの穏やかな優しさもいいが、エミリー・ワトソンの「最初の印象最悪。でもそれは誤解で実は不器用で愛情深い人」のキャラがすごく良い。
感動とクスッとするユーモア、ハラハラするサスペンスのバランスも良くって感心。サスペンスってキャラがどうでもいいと際立たないからなー。ピンチに陥ってもどうでもいいよってなってしまう。その点この映画は細部のキャラまで感情移入できる。
ユダヤ人青年マックスとのエピソードは感じ入るものが多く、いちいち泣いていた。
特に
「外の天気は?」
「曇りよ」
「違うよ、あなたの目で見て、感じた言葉で言って」
のエピソードが好きです。 -
戦時下のドイツ。
本を読むことから生み出されるもの。 -
過酷な時代の中描かれる、身寄りのない少女の、周囲の人々との温かい交流。孤独で親切な町長夫人、温かい養父、一見厳しいが愛情深い養母…なんとなく古きよき昔の作品…小公女セイラや赤毛のアンなどを思わせる。
それぞれ登場人物を丁寧に描いていて、もっと会いたくなる。特に純粋で心優しい屈託ない笑顔の持ち主、隣人ルディとリーゼルの交流は映画のなかでも、まるで早朝の柔らかな光のように綺麗で軽やかで温かく愛おしい。
ユダヤ人マックスとの心温まる会話や想像力豊かなやり取りも魅力的。特にリーゼルのお天気の描写は、お気に入り。一人一人が、この物語にいなくてはならない存在。
心踊る秘密の遊び場はいつも屋根裏や地下室…過酷な時代背景の裏にも、大人を巻き込んでの束の間の笑いや作中に流れるアコーディオンなど魅力的な描写が心に残る。
語り手が死神であることや本という着眼点など面白い設定に、原作も読んでみたくなった。 -
珍しい視点だった第二次世界大戦中のドイツ国内の市民の話だった。フランスなどならいくらでも作品の記憶はある。「ドレスデン」などは数少ない猛爆を喰らったドイツ国民の話だ。冒頭の語り部はずっと神だと思っていた。神だが神ではないような気もするが、結局は神だった。
個人的には5つ星でもいいとは思ったが、主人公を好きになれない。彼女の最後に残った希望がマックスだったのかもしれないが、ルディの死と向き合うことができない主人公のリーゼルをいつも見盛り続けたルディを……神はいないんだなぁ……
「やさしい本泥棒」
https://www.youtube.com/watch?v=Eg7Li8d6Bqs
ドイツ国内で友人の息子でユダヤ人をかくまう家族。優しい義父にきつい義母。ただ、夫婦がとんでもない二人でした。父親役のジェフリー・ラッシュに母親役のエミリー・ワトソン。この名優二人を新人女優が従える形なのだが、役不足に感じる。本当はそうでもないのかもしれないが、ルディの死を見てさらに彼女を受け入れられなくなった。
本当にいい作品だとは思うがどこか納得しきれない思いでいっぱいだった。 -
全員がとてもいい。雰囲気によくなじみ、描写に無駄がなく、そして包み込むような温かみがある。継母の神経質な言動とは対照的に継父は補うように穏やかで、主人公のリーゼルにとって複雑な心境が見え隠れして、隣人の少年がおてんば、とあだ名をつけて愛情を向けている純粋な姿は、いい。
ユダヤ人である男性を匿ってからの、緊迫感や、湖畔で二人、ヒトラーを貶すあたりには戦争の憤りや、苦しさを感じさせ、誰かに告発されるのではという緊張感も見せるいい場面。やさしい本泥棒が見せる、世界は誰かを非難するようなことはなく、ただひたむきに人々を想う。死神が抱きとめる、彼らの魂は、どうか幸福なものでありますように、と願わずにはいられない。良作です。