- Amazon.co.jp ・電子書籍 (228ページ)
感想・レビュー・書評
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筆者の主観で犯罪者の心理を分析したり、プロファイリングなどで一気に犯人像をとらえる、といった刑事ドラマの延長のようなものではなく、統計学的な視点を取り入れることで犯罪を科学的に考察し、そして対策を考えるとても真面目な本。
構成は大きく下記のようになっている
犯罪者の生い立ちや分類
犯罪心理学の理論と検証
犯罪者が持っている因子(犯罪につながりやすい要素)の特定
犯罪者の治療(主に認知行動療法)
本書を読んで気づいたのは下記のような点。
犯罪の要因を過度に単純化しないこと
ある犯罪事件が起こった場合「~(社会・親)が悪い」といった過度の単純化をおこなわないこと。そうした思考は単に誤っているだけでなく、差別や偏見や逆に犯罪を助長する可能性がある。
統計学的な視点
いままでも心理学者が精神分析などで犯罪者の思考を分析したりしたものはあれど、過去の膨大なデータベースや学術論文から統計学的手法を用いて犯罪や犯罪者を分析したものは少なかっただろう。本書ではなるべく統計学的根拠を用いて、犯罪者の分析をおこなっており、非常に説得力がある
厳罰から治療へ
ここが一番目新しいかも。犯罪を減らす方法の1つとして、犯罪者の厳罰ではなく治療にフォーカスを当てている。ともすれば感情論に走りがちな犯罪に対して、どうすれば犯罪をへらせるかという点で最も真摯に考えている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
断片的な情報からの思いこみ、ベテランの勘などに頼って犯罪を単純化してしまうと、その後の防犯対策も失敗してしまうのでエビデンスに基づく捜査や犯人の治療が大事だということがいろいろ書いてあって参考になった。
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再犯防止のため犯罪者に行うべき心理療法を通して、物事の単純化における危険性・エビデンスの重要性・思い込みの暴走性を説いている。犯罪者の心理だけてなく、犯罪者を見るマスコミや我々の心理的バイアスに気づかされた。
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まさに目から鱗。
勘違いしていたことが多々あり、認識を改めさせられた。
というか、もっと早く読めばよかった。
不謹慎だが昔から殺人事件に興味があった。
私が高校生の頃にいわゆる「酒鬼薔薇事件」があり、その辺りからメディアに”犯罪心理学者”を名乗る方が出てきたような気がする。
よくも悪くも”ワイドショー”は”ショー”であることを痛感した。
本当に、もっと早く読めばよかった。 -
犯罪について体系的に構造的に整理されて、出版年時点で、わかってること、わかってないことを概観できた。
日本国においては雑な拷問と雑な裁判で雑に犯罪者にされる事例があったり、マスメディアで雑な報道が氾濫する現今で、このような研究があり、実地で実践されているのは、新鮮な驚きがあった。
6章「犯罪者治療の実際」は、他の章が統計や制度や先行研究などを淡々と整理し紹介していたのとは色彩が異なり、著者の実地の経験知が披露されている。その分、他の章とは異なり、どうしても見解のサンプル数が少なく、どこまでリーチできる手法なのかは読んでいて何ともわからなかった。
5章にチョロっと言及されてる「動機づけ面接法」は特に興味を惹かれた。
いわく、「反抗的で更生意欲のない犯罪者こそが、手厚い治療の対象であるのだが、実際に彼らを治療に乗せることなどできるのだろうか。昔から馬を水場に連れてくることはできても、無理やり水を飲ませることはできないと言うではないか。 そうした問題に対処すべく、心理学では、意欲の乏しい者に対して、その意欲を高めるための治療技法も開発されており、それには十分な効果があることが数多くの研究で実証されている。それは動機づけ面接法と呼ばれるテクニックである」。とても興味はある。が、にわかかじりは事故りそうなので、知識として持っとくに留めたい。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8B%95%E6%A9%9F%E3%81%A5%E3%81%91%E9%9D%A2%E6%8E%A5