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- / ISBN・EAN: 4933672246000
感想・レビュー・書評
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どんよりとした曇り空の田舎の村と石造りのお城のような暗いお屋敷の映像。
物語に暗い影を落とすのは、内戦によって両親に生まれた混沌とした思いによるものだろうが、アナと姉のイザベルはそれを知る由もなく、彼女たちだけの世界で生きている。
静けさの中で描かれる彼らは、ちゃんとした家族でありながら、個別の世界の中で生きていて、埋まらない壁があるような不思議な関係に見えた。
昔この作品を観た時は、大きな瞳のアナの圧倒的な可愛らしさや、姉妹の着る白いレースの洋服などに胸を躍らせつつも、その静けさや暗さに負けて眠くなってしまった想い出がある。
しかし今改めて観ると、少女たちの構図や夕日や焚き火の光でアナを照らすオレンジの光と影のコントラストがとても素晴らしく、現実の世界を描きながらもその幻想的な雰囲気にどんどん吸い込まれていった。
移動映画で観た「フランケンシュタイン」の存在を信じるアナは、イザベルの冗談を真に受けて次第に現実と妄想の世界を行き来するようになる。
そして後半村はずれの小屋に住む負傷兵と交流し始めることによって、ただの幼い少女だっただけのアナに確かに自我が芽生え始めるが、この重要な「少女の通過儀礼
」の描写にさえもほとんど台詞がなく、彼女の大きな瞳だけで演技をさせているということにも驚かされる。
この作品が名作と言われる所以は、この年頃の少女が持つ漠然とした生と死への解釈を、あくまでも子どもの心に繊細に寄り添った優しい視点で描かれたことだと思うが、その他にもこの時代のスペインの政権情勢に対する父親(監督自身も?)の持つ思いを、彼が管理する蜂の観察日記という形で間接的にオブラートに包みながら表現したことなど、最後まで文学的な表現にこだわる上品さにもあるような気がする。
子どもの視点で描かれた作品としてはすこぶる静かで暗いので、子どもが観るには難解ですが、少女たちのシーンはどこを切り取っても神秘的で美しく、これらも含めてずっと映画史に残っていってほしいと願う作品だった。
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