コンテンツの秘密 ぼくがジブリで考えたこと (NHK出版新書) [Kindle]

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  • NHK出版
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感想・レビュー・書評

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  • 文章を読むとある程度書いた人の頭の中がどうなっているか分かる気がする。
    この筆者は普段からめちゃくちゃロジカルに世界を捉えてると思う。

    川上さんが宮崎駿監督のもとで何を考えながら働いていたのか、その思考のプロセスをまとめた一冊。独自の定義の言葉や考えを述べる部分もあるがどれもスッと納得できるように書かれてるからすごい。

    ジブリ作品を鑑賞する前にもう一度読みたい。
    ストーリーに対して感じていたモヤモヤ、なぜ何度見ても飽きないのか、という疑問に対する答えが書かれていた。

  • 3

  • コンテンツとクリエイターについての解釈。

  • コンテンツとは何か?
    ワンパターンになってしまう理由は?
    クリエイターとは誰を指すか?

    好まれるようなコンテンツを生み出すとき、過去摂取したコンテンツを(意図的でなくても)組み込む。
    違いがなければただの劣化版だ。

  •  コンテンツのお勉強。


     商業主義と結びついた現代のコンテンツ産業においては、消費者が認識するコンテンツとはやはりコンテンツの周辺にあるものすべてをひっくるめたものであって、つくり手側にとってもそれらすべてがコンテンツに含まれていると考えるほうが合理的だと思います。

     実際、ジブリに見習いプロデューサーとして入社して最初に驚いたのが、そういうパッケージのデザインやポスターなど、映画の映像そのものとは違う素材をどうつくるかのミーティングが非常に多かったことなのです。コンテンツをつくる仕事というのはそういうものなのです。

     クリエイターとはそもそもなにをする人のことでしょうか?
     ぼくが考えた結論を紹介すると、クリエイターとは「ある制限のもとでなにかを表現する人」のことです。「ある制限」というのがメディアと紐付いたコンテンツフォーマットであり、表現したものがコンテンツになるのです。

     人間が成長していく過程で、現実社会を学ぶための教材がコンテンツであると言っているわけです。

     人間を含む生物が現実世界の模倣を楽しいと思い、それによって現実世界を学習することで生存を有利にすること。これがコンテンツの起源であるという解釈はかなり正しいのではないかと思います。

     …人間の脳はコンテンツの情報をそのまま理解しているわけではなく、脳に理解しやすい形に変換して理解しているということが分かります。コンテンツとしての情報量と、脳が認識するときの情報量は、やっぱり、そもそも違うのです。この脳が認識する情報量こそが主観的情報量です。

     むしろ人間が現実を学ぶ教材として、現実の 代替 を務めるのがコンテンツであると考えるなら、少ない客観的情報で多くの主観的情報を提供するのがコンテンツであるということになるのではないでしょうか。  

     人間は現実世界のイメージを脳のなかに持っています。それは現実世界の情報をそのままコピーしているのではなく、特徴だけを抽出して組み合わせてイメージをつくっているのです。
     コンテンツのクリエイターとは、脳のなかにある「世界の特徴」を見つけ出して再現する人なのです。

     ぼくが思うに、クリエイターが創作で苦しむ原因は、生活苦とか世間の無理解とかは別にすると、次の三つだけです。
     ・脳のなかのイメージを再現する技術的な難しさ
     ・脳のなかのイメージを見つける難しさ
     ・自分の脳にはないイメージをつくる難しさ

     プロであればあるほど、とかく「本物」を届けることにこだわりがちです。しかし、長戸大幸さんがボーカルの声の聴き取りやすさを重視した例や、ぼくらの着メロサイトが音圧を上げることで支持された例のように、一般の消費者のなかでも感度の高い人たちこそ、プロやマニアが軽視しがちなコンテンツの原初的な特徴の「分かりやすさ」を求める傾向があるというのは、真面目に受け止めるべき事実であるようにぼくは思います。

     パターンに飽きるという現象を、「コンテンツとはクリエイターの脳のイメージを観客の脳のなかに再現するための媒介物である」というモデルから解釈すると、飽きられたパターンのコンテンツを消費しても、観客の脳のなかに新しいイメージはもはやコピーされない状況だと解釈できるでしょう。

     さて、コンテンツとはなにか。クリエイターとはなにをする人たちなのか。いろいろな説明をこれまでしてきました。
     ひとつは、脳のなかのイメージをコンテンツとして再現するのがクリエイターであるということ。
     そして、クリエイターとはオリジナリティを期待されているにもかかわらず、脳のなかのイメージとは、答えがひとつに収束する傾向があること。
     答えがひとつであるコンテンツの世界で、違う答えを出さなければいけないのがクリエイターの苦しみであること。
     高畑勲監督が言う、アーカイズム→クラシック→マニエリスム→バロックという美術史のサイクルは、コンテンツにおいて脳のなかのイメージがオリジナルを求めて、再現が比較的容易なものから作品となっていくプロセスであると理解できるのではないかということ。
     コンテンツの要素である「対象」と「手法」では、「手法」のほうが多様性があるので、クリエイターは最終的には「手法」にこだわること。
     コンテンツをユーザー側から見た場合には、コンテンツを媒介にユーザーの脳のなかに再現されるイメージが、人間の情動と結びついていることが重要であること。
     コンテンツがユーザーの心とシンクロするためには、クリエイターがユーザーの心を理解している必要があること。

     天才とは自分のヴィジョンを表現してコンテンツをつくるときに、どんなものができるのかをシミュレーションする能力を持っている人である。

     コンテンツとは”双方向性のない遊び”をメディアに焼き付けたものである。
     そしてコンピューターの登場により、ゲームやウェブサービスのようにコンテンツに双方向性を付け加えることができるようになった現状では、右の定義はもっとシンプルに言い換えられるでしょう。
     コンテンツとは”遊び”をメディアに焼き付けたものである。

  • 『コンテンツの秘密 ぼくがジブリで考えたこと』(川上量生著/NHK出版)vol.417
    http://shirayu.com/blog/topstory/idea/4672.html

  •  映画でもアニメでもストーリーと表現とどっちが大事かという議論はおもしろいところで、多くのクリエーターは「表現」のほうにたどりつく。ストーリーは展開がでつくしているからということ。もちろん「表現」もでつくしているからクリエーターには常に生みの苦しみが伴う。

     過去の作品にないものを作るときの方法としては「わざとずらす」「わからない部分を作る(さいごまでわからなくてもいい)」がある。これは人の「わからないことをわかったときの快感」を考慮した手法。

     宮崎駿のアニメーションは客観的であるように見えてとても主観的に描かれている。例えば風立ちぬの飛行機は普通のサイズよりも大きく描かれている。これは間違った構図ではなく人の脳が認識するその時代、その人物にとっての飛行機はそれくらいの大きさがあったように見えた「主観」なのだそうだ。

     表現としては脳の中の主観をわかりやすく、ストーリーとしてはわざとわからない部分を入れる。作品はだまし絵のようなものになったとき観ている人は好奇心をそそられるのだろう。

  • コンテンツとは何か、クリエイターは何をやっているか?
    の本質に肉薄する一冊。ドワンゴの川上社長がジブリに弟子入りしていた頃から
    考え続けてきているこの問に対して様々なクリエイターとの問答と歴史の中から
    独自の解釈が紹介されていて、論理的なアプローチで納得感が高い

    ・クリエイターとはある制約のもとで何かを表現する人
     制約とはコンテンツフォーマット
    ・生物が現実の模倣を楽しみ、模倣から学ぶ習性を持つ
    ・コンテンツとは現実の模倣
    ・情報量が多いアニメは面白い、情報量とは線の多さ
    ・クリエイターとは脳の中にある特徴を表現する人
    ・客観的情報量が多いだけだと面白くない。主観的情報量が多いこと。
    ・完全なる再現よりも、特徴のある再現。例えば着メロは音割れしていても主旋律の音圧が高いほうが好まれた
    ・作品を見る時には、その人がなにを表現したかったかを見れば良い

    一つの結論は、良質なコンテンツとは人間の脳が求める主観的要素とどれだけマッチしているか

  • 「コンテンツ」というものの定義についてまとめれた良書
    ただし、「ゲーム」・「ウェブサービス」のような双方向性を持たないものについてのみ なので、是非上述の双方向性要素を含んだ考察を持ったものも読みたい

  • エピソード記録。でもこういうのは数値で表すのがなかなか難しい。教育に似ている。

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著者プロフィール

かわかみ・のぶお 1968年愛媛県生まれ。91年京都大学工学部卒業。97年8月ドワンゴを設立。株式会社KADOKAWA・DWANGO代表取締役会長を経て、現在はKADOKAWA取締役、ドワンゴ顧問、学校法人角川ドワンゴ学園理事などを務める。

「2021年 『人と数学のあいだ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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