項羽と劉邦(上中下) 合本版(新潮文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 今まで司馬遼太郎の著作は読んだことがなく、故に読んだことのないタイプの小説で、最初は『これ、小説なの?』と少しばかり戸惑った。
    読み慣れない形式だったので、読み進めるのに時間がかかったように感じるが、いったん慣れて仕舞えば丁寧な描写と、華美な表現がなく、特に感情表現に関しては淡泊でありながら伝わりやすく、歴史上の人物とはいえ登場人物の為人が理解しやすいように思った。
    司馬遼太郎の作品はあくまで小説であり、歴史書ではないという言葉を見聞きしたことがある。その情報を踏まえて読めば、たしかに文体と良い表現と良い、論文調にも感じられるので、まるで歴史書のような風合いがあるのは事実で、『あーこれは史実として信じ込んで仕舞うのも無理はない』と思った。だって面白いんだもの……きちんと調べた上で書いてあるのは伝わるし……
    この本を読む前に、史記の解説書や、当該時代の人物解説書などを読んでいたので、それとの差異がとても楽しめた。
    本を読む前、項羽の最後はもちろん、劉邦の最後についても書かれているものと考えていたが、そこまでは書かれていなかったので、少しだけ拍子抜けした。しかし小説の〆としては見事な描き方だと思う。
    本書にはとても魅力的な登場人物が多く、『あ、きっと作者のお気に入りだな、この人は』と感じる人物に、まんまと魅力を感じて贔屓を覚えてしまう。当たり前に、彼らは過去の人物で、その最期は約束されているわけで、その最期についてが存外とさらっと書かれていたりして、食い足りない感覚もある。けれど、小説としてはそれが良いのだと思った。
    私が好きだな思ったのは、文官・蕭何 軍師・張良 軍人・韓信……ほとんど出番はないけれど、劉邦の妻である呂雉さんで、本作では全然出番もないのだけれど、人質になって殺されそうになっても折れることなかったし、子どもを大事にしていたみたいだし、なにより国自体はとても平和であったというし……この小説が書かれていた時代、この時代が研究されていた時代とは、また違った解釈が許されるのではなかろうかなと思った。
    最期に、この本を推薦してくれたフォロワーさんに心からの感謝を贈りたい。彼女からのお勧めがなかったら、おそらくこの著者の本を手にとることはなかった。

  • あんまり内容覚えてないけど、劉邦のようなサーバント型のリーダーっていいよねって思った

    一方で項羽みたいな圧倒的カリスマ(劉邦も一種のカリスマなんだろうけど)によるリーダーは自分には無理だなとも思った

  • 半分くらいで中断。
    物事の動きについて食い扶持や人々の期待感などの心理を交えて解説気味に語ってくれるのはいいが、あまりに地の文が多く、情感・躍動感に欠けて飽きてしまった。
    作者の解釈・主張がかなりむき出しになっている印象を受ける。
    鴻門之会より後は展開の勢いが衰え、脇役についての話の寄り道が続き、読み進められなくなって中断。

    昔高校漢文で習った鴻門之会をより楽しむための補完、肉付けとしてはよかった。

  • 私の項羽と劉邦のステレオタイプは本書から。いや日本人の多くがそうか。相変わらず司馬氏の本はどこから想像でどこから史実(もしくはそうみなされていること)なのかが不明確だが、そうは言ってもすごく面白いことに変わりはない。

  • なかなかうまく想像することができない遠い世界であるが、司馬遼太郎は、この時代の中国を日本の文化の一つの源泉として書いている。物語としてはあまりうまくない、だけど合理を超えた様式というのが少しは見えた気がする。

  • 正統的なできばえの楚漢戦争小説
    三皇五帝より範とするに現実みある劉邦と
    若さゆえに漢の浪漫を掻き立てる項羽
    なんだかよくわからんがとにかく業績はすごい韓信
    中央集権で全国に官を配する力がありながら
    その後の登場人物は無冠ばかりという秦のなぞめき具合
    女性陣もわずかな場面で印象深く
    さすがの作者の原作者に対する思い入れを感じさせる

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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