ローマ世界の終焉──ローマ人の物語[電子版]XV [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 小学生か中学生の頃、児童図書館で「ローマの歴史」的な本を読んだ記憶がある。なんとかウスだらけの人名になじめず内容はほとんど覚えていないが、最後の方で「優秀な将軍を殺した皇帝に臣下が『陛下、あなたは自分で自分の右手を切り落としたのですよ』と言った」エピソードは記憶に残っている。
    アエティウスのことだとわかり感慨深かった。

    アエティウスはともかくスティリコ、ベリサリウスという、帝国の全盛期なら皇帝になっていてもおかしくない優秀な将軍と、立場上その将軍の上位にある無能な皇帝。
    無能な皇帝は戦争という悪を、悪とわかっているがゆえに「全力をもって短期間に」終了させる必要性を認識しておらず、将軍は悲運の死を迎え、ローマの市民は悲惨な結末を迎える。

    -これが、自らを守る力を持たないがゆえにたどるしかなかった、人々の運命であったのだ。-

    9条信者をこの時代のイタリアに転送してやれるといいのだが。

    ローマがローマであった根源は、文明(文化ではなく)を共有できる「人間(市民)」の共同体を守る意思だったのではないだろうか。

    不完全な人間が現実としての共同体を運営するために、中庸を重んじる思想、対立の同化による国力の向上、失敗も経験とする強靭さ、ケースバイケースによる現実解の追求、私益と公益の一致、差別ではない区別、そして政治力と軍事力のバランス...結果として「善き」政体ができあがった。

    ゼヴェルスからはじまりコンスタンティウスで完成した皇帝による帝国の私物化と、それを正当化するキリスト教。それまでのエリートが持っていた思想の健全性は、キリスト教の独善と偏狭に塗りつぶされ、神を騙った傲慢で貧弱な知性は「経済学」「共産主義」という新たな悪を作り出した。

    「不幸のすべては、フン族が撒いた種から生まれた」
    ...キリスト教の間違いだろう。

    七つの大罪の筆頭は「傲慢」らしいが、所詮個人の頭で作り出したにすぎない「唯一絶対の神」なぞを拠り所にする人間など、本物の神がいれば真っ先に天罰を下すだろう。

  • 国の終わり。国が終わるからか、文章が初期の頃と比べ。。。資料が少なすぎるのか。。。 「海の都の物語」はベネツィア。

  • ローマ人としての矜持と、それを抱えて死んだスティリコ
    オドアケルによる最後の皇帝廃位が、ローマ文化の滅亡というわけではなかった。蛮族侵攻、キリスト教にて帝国の肉体と精神が疲弊したとところ、ゴート戦役やイスラーム勃興によって肉体にも文化とどめを刺された
    国民の無気力と人材の枯渇、内戦や権力闘争の繰り返し、非生産部門の拡大による納税者の疲弊などが帝国衰退の理由として挙げられるが、これは別の時代や場所においてもしばしば見られる、盛者必須位の歴史上の教訓のように思える

  • ポンデュガールの水道橋を見たのをきっかけに読み始めて9ヶ月。ついに読了。最後の方は、滅亡に向かっていくので読んでいて切なかったけど、前半はワクワクしたねぇ。キリスト教以前のローマ社会は、多神教で、案外日本に似たところもあって、参考になるし、何より2000年も前にこれだけの政治体制があったというのが不思議な感じだし、記録が残っているにもすごい。そローマ滅亡後の中世の1000年って、ほとんど変わってないもんね。

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