帳簿の世界史 (文春e-book) [Kindle]

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制作 : 村井章子・訳 
  • 文藝春秋 (2015年4月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (374ページ)

帳簿の世界史 (文春e-book)の感想・レビュー・書評

  • 良い会計は悪いことが起きた時に真実を教えてくれる。フランスの太陽王ルイ14世は小型の帳簿を持ち歩いていたが金のかかる戦争やヴェルサイユ宮殿で赤字続きになると、せっかく作り上げた会計と責任(アカウントとアカウンタビリティー)の仕組みを放棄してしまった。しかし専制君主だけが問題なのではない。近代国家になっても財政の責任を継続的にこなした完璧な国家は一つとして存在しない。

    会計原則はハンムラビ法典にすでに現れ、古代アテネで会計責任を果たす仕組みが確立されていた。ローマ皇帝アウグストゥスは自分の帳簿を公開してプロパガンダの一環として利用した。それでも13世紀に入るまで数字が正確だったとは言い難い。アラビア数字を使わない間はローマ数字ではエラーを無くせないし、そもそも不正が当たり前だった。

    商業とともに会計が発展したのが12世紀の北イタリアの都市国家だった。1202年にピサの商人レオナルド・フィボッチが書いた算盤の書、この本がアラビア数字や筆算の方法などを広めた。そして1300年ごろ複式簿記が発明された、共同出資方式だったため各人の持分や利益を計算する必要があったからだ。帳簿は出資者への利益配分を計算するための記録するための記録となっていった。銀行が生まれたのは少し前だが1327年に「元帳は銀行の方式に倣って管理維持すべきことについて」と言う法律によって会計監査が公式に制度化された。1340年代前にはすでに複式簿記、為替手形、海上保険が存在し、帳簿振替や手形決済も非常にスムーズに行われていた。しかし商人たちは複式簿記に慣れて熟達していったが政治の場からは会計は姿を消していった。

    複式簿記の考え方はキリスト教に影響を与えたのかもしれない。信心と善行と罪は帳簿よろしく消し込むことが可能になる。免罪符の発明だ。ただし後の歴史をみるとカトリックよりプロテスタントの方が相性が良さそうに見える。

    世界初の複式簿記の教科書「スムマ」が印刷されたのが1494年、今日でも会計学の基礎とされている。書いたのはダ・ヴィンチの最後の晩餐にも助言をしたとされるパチョーリだ。スムマには資産と負債を常に把握するための方法が説明されている。「商人は会計の第一歩としてしさんの棚卸しを行ない財産目録を作成しなければならない。しかし国家が会計を重視し続けることはなかった。

    オランダは会計の中心となり会計学校が誕生した。オランダ東インド会社が発展したのにも必然性がある。オランダ商人の職業倫理からだけでなく、治水が必須のオランダでは乾いた土地を維持するためには会計監査が必要だと市民のコンセンサスが得られていた。一方でバブルが生まれ弾けたのもオランダが最初なのだが。

    産業革命の生まれたイギリスでも商人たちの自信ありげな様子とは裏腹に会計技術はスムマから進歩しなかったがそれでも一つの革新が生まれた。王室御用達の陶磁器めーk、ジョサイア・ウェッジウッドが効率的経営の基礎を作り上げた。一般管理費、販売費、金利などを正確に計算し、より正確に生産コストを計算できるようにした。さらには過去の販売実績に基づいて将来予想を立て、それに基づいて生産計画を準備したことである。

    国家の誕生から会計が重視されたのがアメリカだ。プロテスタント的資本主義の体現者ベンジャミン・フランクリンは生活のあらゆる面を会計の原則に従って管理した。そのフランクリンがアメリカ独立戦争の対外的資金調達を任されたがこの合理的で優秀な会計専門家であったことはアメリカにとって極めて幸運だった。アメリカの財務省そのものが借金をするために出来上がった組織であり、「自由な国においては、国民は自国政府について、ことの性質が許す限りの情報を受け取るべきである」そして初代財務長官ハミルトンは合衆国銀行の設立、効率的な徴税システムの確立、財務省証... 続きを読む

  • キリスト教圏では、帳簿の存在は神の前に公正にあるべしと言う考えから始まっている。この辺りが興味深い。複式簿記は、ルネッサンス時代のフィレンツェで始まったことも興味深い。複数回、繰り返して読もうと思います。

  • 「ウェッジウッドの見るところ、富裕層は多少値段が高くなっても気にしない。」

    複式簿記により収支の把握ができるようになった。複式簿記により税の徴収漏れ、無駄遣い等を発見できる。それゆえに、自国の経済が破綻に向かっている事実も知ってしまう。

  • 労作。複式簿記の嚆矢から、現代のエンロン、サブプライムまでの歴史をうまくまとめています。
    簿記についての理解が深まる一冊。

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