狗神さまは愛妻家 (幻冬舎ルチル文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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    男でありながら神嫁の証を持って生まれた幸之助。“神嫁”の実態が生贄なのだと知り、ならばいっそ喰うには惜しいと思われる立派な嫁になろうと、花嫁修業に励んできた。ついに迎えた嫁入りの日、真っ白でもふもふな耳と尻尾の狗神・月影は、幸之助を見るなり「可愛い!」と顔を輝かせ喜ぶ。そんな月影のために、嫁として頑張る幸之助だったが!?
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    花嫁もの、けも耳、わんこ。甘ったるいだけのお話を予想していたのだけれど、意外にもじっくり読んでしまった。
    最初は、ぶんぶん尻尾を振って、たんぽぽを撒き散らす月影の嫁大好きぶりだったり、神嫁として尽くそうとする幸之助の健気さだったりの、ほわほわっとした感じで、生け贄とか不穏な言葉はどこかにいってしまいそうになるのだけど、月影の父親、白夜によって、生け贄が真実で、白狗である月影が人を喰わなければ力も弱いままで寿命も短いことが明かされる。白夜もまた白狗で、里を守るために懊悩し苦しみつつ人を喰って今の力を手に入れた。
    神様の花嫁と偽って生け贄を差し出す里長の苦悩、白狗として生まれ人を喰わなければ力を得られないと苦しみながら人を喰った白夜、人と神との在り方が変わり生け贄というしきたりが続かないと見切り、人を喰らわず、それでも里人の思いを汲んで命を賭して里を守ろうとする月影、幼い頃から喰われる恐怖を抱え、喰うのが惜しいと思われる嫁になろうと努力し、月影に嫁いでからは、里人のために戦う月影の支えになりたい、でもなにもできないと焦慮する幸之助。
    みんな悲しくて、みんな一生懸命で、せつなかった。
    幸之助が以津真天にキレて、禁忌を破って里人を説得し、ライフルを抱えて以津真天に立ち向かって、すごくすっきりした。閉塞感を打ち破った感じ。
    嘉平以外はみんないい人というのがキレイゴトすぎるかもしれないけど、たまにはこういうキレイな話もいいと思った。

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著者プロフィール

4月14日生まれのAB型。広島人。第66回花丸新人賞選考にて『プライスレス・ライフ』が選外佳作入選。花丸文庫「恋愛小説は書けない」にてデビュー。

「2019年 『白狼さまの恋ぐすり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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