寺院消滅 [Kindle]

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著者 : 鵜飼秀徳
  • 日経BP社 (2015年5月21日発売)
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (236ページ)

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寺院消滅の感想・レビュー・書評

  •  日本国内の仏教寺院の数が急速に減少し、形だけ寺があっても住職がいない無住寺院もかなりの数に昇るという。信仰のあり方や葬儀のスタイルが変わったこと、地方の過疎化と都市への人口移動などに加え、国家との関わりなど歴史的な経緯も影響しているという。自身も僧侶の資格を持つ著者が、様々な事例を丁寧に取材してまとめている。

     都会で暮らしていると、日常生活で自分の信仰を意識することはほとんどなくなっている。家に仏壇や神棚もなく、墓参りでしか菩提寺に足を運ぶこともない。かつての寺は地域コミュニティの中核となっていたようだが、もはやその機能は失われている地域が大半だろうし、今後ますます減っていくだろう。

     この問題を仏教関係者の立場から見るのと一般市民から見るのでは大きく違う。前者にとっては当然死活問題だが、後者にとってはそれほどでもない。私自身は後者なので「時代の流れだからしょうがないね」という程度の姿勢でも良い。もちろん一般市民でも信仰心の篤い人はこの状況を残念に思っているだろうが、そもそも寺が運営できなくなる環境になっているのだから、どうしても必要なものという認識はされていなかったはずだ。

     ただ、それとは別にひとつ印象に残ったエピソードがあった。それは第三章に出てくるある僧侶の話。彼が昔タイのエイズ患者を収容するホスピスに行った時、現地の僧侶はべっとり体液でただれた患者の手を素手で握っていたのに、自分はそれができなかった、どうしても家族や寺のことが頭をよぎってしまったと。そしてそんな自分のことが悲しくて泣いてしまったという。

    「そんな私に対して、タイの僧侶は、何事もなかったように「当然ですよ、あなたには守る家族がいて、守る寺があるのでしょう。でも、タイで出家したということは、支えてくれる人々に命を預けたということを意味するのです。だから私には妻も子供もいません。仮にエイズに感染して死んでも弟子が後を継いでくれます。何の問題もありません」と教えてくれました。
     (中略)
     私はその時、初めて分かりました。出家、つまり僧侶の独身主義には意味があったんだなと。」

     私は出家したわけでもなく独身だが、いざとなれば自分の信じる行為のために躊躇なく命を賭けられるのだなと思うと、少し気が楽になった。

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