紙の動物園 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) [Kindle]

  • 早川書房
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感想・レビュー・書評

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  • 短い話を立て続けに読むのはつらいなっていう残念さ(私の)。

    好きなのは
    「良い狩りを」白眉!
    「文字占い師」つらかった……。子供の浅はかさに対する代償がが大きすぎた……。
    「太平洋横断海底トンネル小史」山谷ブルースが浮かびました(ググろう)。
    「もののあはれ」悲しい話だけど語り手が希望に満ちててよかったホロリ。
    「紙の動物園」我が身に置き換えて罪悪感がひどい。

    好きな順。

  • 表題作は母の日に読んだこともあってか、無性に泣けた。

  • しんとして冷たい、しっとりした空気に満ちている。胸の奥がきゅっとするほど行きたい場所、泣けるほど触れたい手にたどり着けると信じて、ひとり長い長い旅をしている。喪失、孤独、希望が同時にそこにある。
    「紙の動物園」、「1ビットエラー」は短い物語とは思えない読後感。ずっと胸に残る。「月へ」の最初のエピソードの美しさと哀しさは、古い無声映画を見ているよう。画像を時折り走る白いノイズまで見えるようだ。

  • めっちゃよかった。アジア的情緒に満ちたSF。何度も泣かせてくるし。これまで読んだどんなSFとも違うエキゾチックな香りに満ちていた。11歳で中国からアメリカに移住して、色々な苦労もあったり、まわりを見ていて、きっと疑問に思うことがあったのでは。歴史についても考えさせられるものがあり、示唆に富んでいた。これは、色んな人に薦めたい。

  • 予備知識なしで読んだのがよかった。紙の動物園にはやられた。アークもよかった。現実の出来事との絡め方や発想の飛ばし方も素晴らしい。

  • 表題作の「紙の動物園」は香港から米国に嫁いだ母の話である。自身の伝統を伝えようとする母と、それに反抗する息子。似たような話は米国に住む友人にも聞いたし、そもそも伝えることを諦めてしまう人も多いように思う。この本には15のSF短編が収録されているが、さまざまな形で異文化の間での交流が描かれる。表題作とは逆に米国から台湾に来た少女の話もある。必ずしも公平とは言えない交流。いくつかの話は60年以上前に設定されているのだが、現代にも続く問題を扱っていると思う。考えさせられるところも多いが、SFとして面白い話になっている。

  • 面白かった。表題作と、最後の話、結縄がとくに好き。

  • 「選抜宇宙種族の本づくり習性」が良かった

  • ケン・リュウ氏の短編集。
    SFだがオリエンタルでセンチメンタル。
    ジェームス・ディプトリィJrと似たテイスト。
    わくわくするよりも、ほっとするSFという感じか。
    「もののあわれ」や「円弧(アーク)」が記憶に残った。「紙の動物園」も良い。

  • こてこてのSFというより、マジックリアリズム的な設定が多く、基本的に読みやすい。ハッピーエンドはほとんどなく、後味の悪さと美しい文章という、他にない読後感。

    「紙の動物園」★★★★★
    - 母が折り紙を折って息を吹きかけると、動物が動き出すという魔法を持っていて子どもの頃によく遊んでいたぼく。アメリカ人の父はかつて中国人の母をカタログで選んで買い、コネチカットに住んでいた。ぼくは大人になり、中国人のような見た目でいじめられ、アメリカに染まろうとし、母を邪険に扱った。母は癌で若くして死に、ぼくはその後、母の手紙を読み、母の悲しい生い立ちを知る。
    - 悲しく、救われない物語だが、文章が美しい。これぞ、ケン・リュウという感じ。

    「もののあはれ」★★★★★
    - 鉄槌という名の隕石が地球を目がけて飛んできている中、地球から脱出し、どこか遠くを目指す宇宙船。大翔は唯一の日本人乗組員。最後、宇宙船の修理の際、犠牲になる。
    - 再び、儚い物語。いかにもケンリュウらしい。

    「月へ」★★★★☆
    中国での凄惨な暮らしから逃れるため、木に登り、月へ移り住んだ父と娘。月への亡命を認めてもらうため、サリーが弁護士として担当する。バッドエンドだし、何も片付いていないが、読むのを止められない。

    「結縄」 ★★★★★
    - アメリカ人ト・ムは、中国の山奥で暮らすナン族を訪ねる。ナン族は縄の結び目で記録をする。長老ソエ・ボは複雑な記述と読み取りに長けている。製薬会社で働くト・ムは、アミノ酸の構造解析に応用する。
    - 2人はよい関係を作っていたと思いきや、最後は先進国に搾取される後進国の構図に、またやるせない気持ちになるエンディングで食らわされる。

    「太平洋横断海底トンネル小史」★★★★☆
    - 戦前、アメリカ大陸と日本を結ぶ海底トンネルが掘られている。その途中にあるミッドポイントシティという地下居住区。人種差別にも踏み込む。トンネルを掘る作業の中で多くの捕虜が過酷な労働を強いられていて、事故で生き埋めにした出来事をチャーリーは秘密にしていた。
    - 再び重たいエンディングだが、歴史改変的な要素のある面白い設定で、ドキドキ感のある展開。

    「潮汐」★★★☆☆
    - 月が地球に接近し、潮の満ち引きが極端に大きくなった地球。学者である父は地球に残ることにこだわり、私も留まることを選んでいた。父は家を補強し、塔のようになっていたが、それはロケットになっていて、最後は月を砕くために宇宙へ飛び立つ。
    - 超短篇だが、ケン・リュウらしさはしっかり。

    「選抜宇宙種族の本づくり習性」★★☆☆☆
    - 色んな宇宙人のそれぞれの本の作り方、読み方みたいなものが順に紹介されていく。物語はない。

    「心智五行」★★★★★
    - 高度な文明を持つ人類の一人であるタイラと、原始的な文明しか持たない種族の一人であるファーツォンが徐々に心を交わしていく。しかし、最後は原始的な科学やここまでで唯一のハッピーエンド作品か。

    「どこかまったく別な場所で トナカイの大群が」★★☆☆☆
    - 人類が皆○○化している中で、三次元で生きることを選んだ母。途中から何言ってるかわからんくなった。

    「アーク」★★★★☆
    - リーナ・ユージーンは16歳でチャーリーを妊娠したが、父親も逃げ、リーナもチャーリーを親に押し付けて逃げ出す。その後、死体を保存するプラスティネーションを行う「ボディ・ワークス」で働くことに。ボディ・ワークスはその技術を応用し、生きた人間の老化を遅らせ、ついには不老不死を実現する。生きる意味を考え直し、最後は死ぬことを選ぶ。ハッピーめのエンディング。

    「波」★★★★☆
    - 地球から遠く離れた惑星おとめ座61番星への移住のため400年の旅に出た宇宙船。その宇宙船は資源に限りがあり、あらゆる物質は無駄なくリサイクルされていて、400年の中で生まれる子の人数も管理されている。そんな中、地球から不老不死の新技術が開発されたことの連絡。乗組員たちは各個人で不老不死になるか、ならないか自分で決めた。死ぬ人がいないとこの宇宙船内では新たに子供を産めない。そして星へ到着。
    - 目的地のおとめ座61番星についたところからほとんど別の物語かのように急展開する。そこにははるか昔に地球を飛び立った人類が暮らしていた。彼らは自身を機械化、高度化して、全く別の生き物になっていた。そこから更に人類は急激に進化していき、哲学的な展開へ。

    「1ビットのエラー」★★★☆☆
    恐らく、作者の中で神や天使の存在を心から信じている人、あるいは天使の降臨を目撃したという人の頭の中では何が起こっているのだろうという疑問から、この物語は生まれているのではないかと思う。人の脳は完璧ではなくエラーを起こす。そんなごくわずかなエラーから天使降臨を見てしまう。亡きリディアに会いたいがために、意図的にエラーを起こそうとするタイラーは切ない。

    「愛のアルゴリズム」★★★☆☆
    - 生まれたばかりの娘を亡くした夫婦がAIロボットを開発する。

    「文字占い師」★★★★☆
    - 台湾のアメリカ人学校でイジめられているリリアンを助けた老人甘さんとテディの友情。リリアンの父はスパイであり、共産党員を捕らえていた。甘さんは共産党員の疑いをかけられ拷問を受け、テディとともに殺される。中国二・二八事件を土台とした悲劇と重い読後感。

    「良い狩りを」
    - 既読スルー

  • なろう系に慣れてしまうと、なかなかよみずらい。そんな中でのおすすめは、良い狩りを、太平洋横断海底トンネル小史の2編。どちらも一気よみ間違いなし。

  • 表題作はもちろんだが個人的には「文字占い師」が一番響いた。内容的な理由で中国では未翻訳とのことだが、アメリカ、中国そして日本の人たちがこの作品の意味を分かち合える世の中が来ると信じたい。

  • 素敵。SF慣れしていない人にも勧めやすい

  • SFで泣けるとは!

  • 表題作は、メイルオーダー・ブライドとして中国からアメリカにわたった母親をいつしか蔑み否定するようになってしまった少年が、時を経て彼女のもっていた偉大な文化の魔法的力に気づく、哀切なファンタジー。「月」では、北京の暑い夏の夜に子どもをあやしていた父親が木を登り続けていつのまにか月世界に到着したというおとぎ話が、アメリカの人道と正義が満足するような物語をつくりだすよう強いられる難民たちの状況に重なっていく。
    自身も11歳でアメリカに移住したケン・リュウ作品の魅力はアジア文化や東アジアの歴史をSF的発想と大胆にかけあわせて物語化していることといえるだろう。その語り口は、圧倒的な権力関係の中で異文化を取り入れ改変しながら生きのびる道をさぐってきた移民たちの営みに通じる。
    たとえば「結縄」では、縄に結び目をつくることで歴史を語り伝えるミャンマーの無文字民族の智慧と、タンパク質結合のアルゴリズムというアイデアが驚くべきかたちで結びつけられるが、その結末は多国籍企業が知識を支配する現実を反映して苦い。
    台湾2.28事件を下敷きとした「文字占い師」はいっそう苦い読後感を残す。
    とはいえ、ケン・リュウの小説は必ずしも重い「社会派」作品ばかりというわけではない。たとえば「心智五行」は、女性宇宙飛行士が「退行した地球人」が暮らす惑星に不時着し現地人男性と恋に落ちるといういかにもなSFだが、食を通じた五元素のバランスをとる東洋思想が、体内バクテリアとの共存が文字通り「腹で考える」ことに至るというアイデアと結びついた、楽しい作品になっている。プログラミングの経験からか、不死や異なる形態での世代継承も大きな関心であるらしく、「円弧」や「愛のアルゴリズム」なども面白い。
    とはいえやっぱり個人的に最も面白く、唸りながら読んだのは、東アジア近代史を下敷きにした「太平洋横断海底トンネル小史」である。ここで描かれるのは、世界大恐慌の後、満州を正式に植民地として手中にした日本が世界大恐慌からの脱出策として太平洋横断海底トンネル建設計画をアメリカに持ち掛け、結果として世界大戦を免れた世界だ。この驚くべきIF世界では、しかし、大日本帝国主義は栄え誇り、現実世界に比べて戦死者は少ないが、トンネル建設のために動員された種々アジア人たちが過酷な奴隷労働の下で死んでいくことになる。歴史において避けられるべき最大の悪とは戦争なのか? 鋭い歴史的センスとSF的センスの見事な結合がもたらす仮想世界の中で、読む者はしばし考え込むことになる。
    そして最後を締めくくる「良い狩りを」では、妖狐と魔導士といういかにもなファンタジー設定が、ふたたび東アジアと西洋の暴力的な近現代史の中に投げ込まれて、最も虐げられた者たちがよみがえるサイバーパンクとなる。痛みをともなった想像力の飛翔、とでもいうべきSF的センスの神髄がここにある。

  • 表題も面白かったし、他にも面白いのがいくつかあった。人類はどうなっていくかいろんなパターンの短編があって楽しめた。

  • ちゃんと研究結果などの一次情報をソースしながら解説してくれて著書の知識の広さが垣間見えるし、そこから絶妙にフィクションを作り上げていく想像力がすごい。純粋にめちゃくちゃ頭いいんだろうなこの人。

    お気に入りは結縄と愛のアルゴリズム。前者は伝統芸能とか文化の継承とイノベーションのジレンマ、後者は名前からもわかる様に、アルゴリズムで愛は組めるのかという、知能と感情のお話。

    テクノロジーからフィクションを使って自然な流れで社会課題とかを風刺するのはSFの醍醐味だし、それが素晴らしいのはもちろんなんだけど、なんというかブラックミラー的に切り捨てていく感じではなくて、どこか心温まる系。もちろん悲しい話もあるんだけど、それでも冷たいよりは暖かいが似合う。

    最後経歴見たらビビった、なんでハーバードで文学専攻なのにCSも学んでマイクロソフト入ってるの、それだけでびっくりなのにそこからなぜか弁護士になってるし、最終的に独立してコンサルとアプリ開発?は?奥さんはアーティスト??は??それでSFも書きまくってるの?は???何この人凄すぎて、2人の子供が楽しみですね、娘さんを僕にください 

  • 東洋系カルチャーへの言及や、生物工学(?)に焦点のあるSFなのが特徴的で、ひとつひとつはおもしろいし文章も好み。ただこのモチーフが短編集の中で連続して現れすぎていて、読後感はやや単調な気がした。
    『選抜宇宙種族の本作り習性』『どこかまったく別な場所でトナカイの大群が』『心智五行』が良かった。間を置いてもう何冊か読みたい。

  • 表題作「紙の動物園」にノックアウトされました。一人の時に読むことを強くお勧めします。

  • 叙情性のある文章でとても魅力的な作者さんですね。
    方向性の違う作品が集まった素晴らしいアンソロジーでした。

    ## 心智五行
    学説が具体的な小説に落とし込まれており、学説自体も今まで意識していなかった(文字通り)ことでしたが感覚としては納得できました。自分自身についても新しい認識ができるようになったと目からウロコでした。

    ## 円弧
    私が学生のころはこのような潜在性を秘めたままの生活を送りたいと、そのようにぼんやりと考えていたことを思い出しました。

    ## 良い狩りを
    すごいバランス感覚の内容で好きな一作です。
    京極夏彦さんの文章とSF的アイディアが見事に融合したような、それでいて爽やかな素晴らしい作品でした。

  • ケン・リュウの短編集。

    淡々とした筆致でSFという言語でもって、普遍的なこと、生とは、愛とは、といったテーマが、淡く深く語られていく作品集。
    まるで特殊な楽器から万人が感動するような音色が出るような、澄んで穏やかな気持ちに満たされる一冊

  • アジア的な心情を上手にSFにまで昇華していることろがアメリカで人気を博した一因なのでは。それを除いてももちろん面白い。

  • くくりはSFとなっているけど、ちょっと違うな…というものも含まれている短編集。
    表題の「紙の動物園」「良い狩りを」が心に沁みた。
    忙しくて細切れに読んだから、本腰を入れて読むと、もっと面白かったのかも。
    再読必須。

  • 何度でも読み返したいSF短編集でした。
    個人的ベスト3は「紙の動物園」、「良い狩りを」、「結縄」です。

  • 日本オリジナルの短編集。どの作品も着眼点が良く、バラエティに富んでいて面白い。多少は中国の文化を背景にした作品もあり、日本人読者は、完全に理解できないものもあるだろう。そこは気にせずに、底に流れる人として共感できる事物を楽しむのが良さそうだ。

    表題作しかりだが、親子の関係を描いた作品が多い。訳者の好みもあるだろうが、著者としても自分のアイデンティティを表現するために必要な作品だったのかもしれない。世代間宇宙船の作品が多いと感じた。親子の関係を描くのにちょうど良い舞台なのだろうか。

    好みの作品は「紙の動物園」「結縄」「文字占い師」といったところ。もちろん他の作品も面白い。

  • 表題作「紙の動物園」が、やっぱりベスト。その他のストーリーも急展開...というか思わぬ方向への展開に驚かされる。

  • 「すべての恋愛と結婚に、すべての友情ときまぐれな出会いに、 円弧 があるの。はじまりと終わりが。寿命が。死が。」(「円弧」より)

    中国SFにハマりだしたきっかけの一冊。ノスタルジーと未来、ヒューマニズムとテクノロジー。一見相反する要素が見事に融けあっている短編集。見たことのない世界観にワクワクし、彼らの心に胸が痛くなること請け合い。

    個人的には中華スチームパンク「良い狩りを」がたまらなかったので、デルトロ監督あたりにぜひ短編映画にしていただきたい。

  • 「紙の動物園」(ケン・リュウ : 古沢嘉通 訳)を読んだ。凄いなあ。「生命」と「死」に真正面から対峙して、独特の価値観を個々の作品の中に凝縮させた素晴らしい短編集だと思う。ひとつひとつの作品がみなそれぞれ違った色の輝きを放っている。この人はどれだけ引出しを持っているんだろうか。

  • 幻想的な話からSFまで。
    離れてきた故郷への憂愁という感情は、中国を離れアメリカへ渡った少年も、数百年かけておとめ座に向かっている播種船の少年も、同じようなものなのかもしれないと思った。

  • バラエティに富んだ短編集。独特の雰囲気であっと言う間にその世界観に引き込まれます。

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