チームの力 ――構造構成主義による“新”組織論 (ちくま新書) [Kindle]

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  • 筑摩書房
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  • 冒頭の進撃の巨人の話は不要であったり、ちょっと鼻につく自慢話があるのは否めないが、
    全体としては大変為になった。
    今後、チームやリーダーシップを考えるときには大いに参考にしていきたい。

    ===

    ▼そもそも、我々は何のためにチームを作るのか
     ──それは一人ではできないことがあるからだ。

    ▼帰属意識を分散して、全体を意識するようにする
    ・色々なグループに入っていると、帰属意識を分散できる。
    →「自分のプロジェクトさえうまくいけばよい」とならず、全体としてうまくいくようという視点を保てるようになる。

    ▼感謝は肯定である
    ・肯定されて嬉しくない人はいない。お金をもらって嬉しいように、感謝されても嬉しい。

    ▼判断基準になる「目的」を明確にする
    ・リーダーに頼らない自律的なチーム作りに必要なことは、まずそのチームの目的を明確化し、それをメンバーに常に意識させ、それを基点にそれぞれが判断できるようにすること。

    ▼人間は言葉より行動の方を信じる

    ▼価値の原理
    ・人間は欲望や関心に応じて価値を見出し、行動する。

    ▼リーダーシップ
    ・リーダーシップとは、(1)特定の状況下で、(2)自分を活かして、(3)チームの目的を実現するための技能
    ・誠実なチームを作りたいと願うならば、日々誠実に行動すればよい。→それが結果として、誠実な仲間を集め、スタッフを育てることになり、誠実な企業文化を醸成し、消費者からも好感をもたれ、支持される組織になっていく。
    ・どういう場合に、リーダーに向いていないと判断するか。=プロジェクトが動かないとき。

    ▼Column
    ・一瞬、「頭を振る」って頭を空にする。
    - ちいさな動作でもいいので、一瞬「脳を揺らす」ような要領で、サッと。
    - 人間は「脳が揺れている状態」では「考えることができない」。

    ・「最後の1ポイント」を、「ただの1ポイント」に戻してやる。
    - 王貞治選手の逸話。「あと1本打てばホームランの世界記録」というところで、ぜんぜん打てなくなってしまったが、合気道の師匠に「あと1本と思うからダメなんだ。あと100本と思え」と言われたその日に、ポーンと打って記録を達成。

    ▼方法の原理
    ・方法とは、「特定の『状況』において使われる、『目的』を達成するための手段」。

    ▼埋没コスト
    ・埋没コストとは、「これまでに積み重ねてきた実績や信頼、費やした時間や資金といった回収不可能なコスト」。
    - 「それは埋没コストという過去にとらわれた意思決定ではないか?」
    - 「この方法は目的と状況に照らして本当に有効なものになっているのか?」

    ▼達成バイアスと失敗回避バイアス
    ・前例主義が蔓延する状況はどのように変えればよいか。
    →「成果を出さないが失敗しない人」よりも、「多少失敗しても成果を出す人」のほうを評価する。
    →「組織全体に〝達成バイアス〟がかかる。

    ▼適材適所の原理
    ・「移ろいゆく関心」と「能力と課題のバランス」のを見定めながら業務内容を調整すること。
    →できるだけその人の『関心』と『能力』にみあった仕事や役職を与える。
    -「関心」を見落としやすい。

    ▼フロー状態
    ・フロー状態は、3つの条件が満たされたときに生じる。
    ① チャレンジングだが達成する見込みがある明確な目標があり、
    ② それに能動的に取り組めていて、
    ③ 直接的な手応えやフィードバックがある
    ・フロー状態になるには、必ず集中できる環境が必要。

    ▼他のボランティア団体同士の対立は、自分が助けたい人たちを助けようとしている人を責めているわけで、とうてい理に適った行為とは言いがたい。

  • 【チームの力 -構成構成主義による"新"組織論】西條剛央著、筑摩書房、2015年

    著者の西條さんは東日本大震災の直後に立ち上がり、後に日本最大の総合支援組織となった「ふんばろう東日本プロジェクト」の代表を務められている。同じく復興支援活動に携わったので、一度、お打ち合わせをさせていただいたこともあり、高い成果を挙げられた活動に頭が下がる思いをするとともに、あの時代のことが懐かしく頭をよぎる。あぁ、そういうことがあったなぁとか、そういう風にはできなかった、とか。

    最後まで読んで、感想を書こうと思って改めて序章や気になった箇所を読み直してみて、最初に思ったのは「組織とチームとは何が違うのか?」ということだった。

    組織は所属することに安心感がある
    →継続性が大切
    →部分最適になりやすい
    →静的、受動的。
    →組織は、目標を実現するために「何かを守る」

    チームは目的を達成するため
    →目標達成が大切
    →全体最適を求める
    →動的、能動的。
    →チームは、目標を実現するために「何かをする」

    そうしたら、まさに、「あとがき」でも著者が同じことを書いていた。。。
    ーー
    チームと組織とは何が違うのだろう。本書を書き超えて去来したのはその問いだった。
    ーー

    それ以降、著者がまとめていることを読みながら、自分が新陽高校でやってきたことは、・組織のチーム化だったように思った。

    着任前の新陽高校もそうだったように、一般的には学校というものが超がつく「組織」であり、段々と「なんのためにやっているのか」の目的を失って、手段そのものが目的化しているように思うが、一度、「目的志向」になると学校とはパフォーマンスの高い集団になると肌身で感じている。
    そう考えると、東北の復興支援の活動は、僕はできたことよりもできなかったことの方が多かったのだが、そこでの七転八倒がその後の新陽高校の復興活動に活きてきたのかもしれない、と久方ぶりに、高校運営の前と後を振り返ることができた。

    あり方そのものを問い直す時代にはいっただけに、著者の説明する「構造構成主義」をしっかりと学んでみたい。
    あと、チクセントミハイの「フロー」についての記載を久方ぶりに読んでちょっと「おっ!」となったので、ここに転記しておく。

    ーー
    「フロー」とは、M・チクセントミハイ(1934ー)という心理学者が提唱したもので、「最適経験」ともいわれる。「一つの活動に深く没入しているので他の何ものも問題とならなくなる状態」や、「その経験それ自体が非常に楽しいので、純粋にそれをするということのために多くの時間や労力を費やすような状態」を指す(M・チクセントミハイ著「フロー体験 ー喜びの現象学」世界思想社)
    ーー

    まさに「フロー」の種を学校生活で各人が植えることができたらいいなぁ、という打ち合わせをしたばかりだったので印象に残った。

    #優読書

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