烏に単は似合わない 八咫烏シリーズ (文春文庫) [Kindle]

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  • ミスリードに一生懸命になりすぎて、いろいろととっ散らかってしまった印象。

    山神に仕えた三本足の烏(八咫烏)が人に変異する世界の物語。
    兄を押しのけ日嗣の皇子となった若宮の后を選ぶべく集められた東西南北・四家の姫君。
    権力闘争・愛憎入り混じってはいるが、姫君たちの成長物語&皇子様に選ばれるシンデレラストーリー。
    かと思いきや途中からミステリーもどきになっていった。
    衣装は奈良、舞台は平安時代のようなイメージだろうか。
    どうでもいいが、烏と鳥は似ているので、途中で読み分けるのを放棄した。

    主人公がいない。
    東家のあせび視点で物語が進むので、当初はこの子が主人公だと思って読み進めた。
    主人公としてはふわふわとしすぎていて感情移入もできず、おろおろしているうちに物語が進んでいく。ように思っていた。
    世界観の説明役だったのかもしれないが、あまりにももの知らずで后候補にならずとも貴族の娘としてどうなんだろう、嫁に出す気がなかったのだろうか、と思っていた。
    それが侍女の不審な死あたりからおどろおどろしくなり、最後は姫君たちの人物像もひっくりかえるのだが、謎解き探偵役がまさかの若宮。
    それまで存在がほんのりとしか出てこず、行事も全てすっぽかした若宮が突然乗り込んで4人の姫の事情を露わにし「全部わかっている!」と事件の真相を話し出す。
    ちょっと突然すぎてびっくりした。

    視点を変えたら全く違う物語、をやりたかったのかもしれないが、そもそも若宮全然出てこなかったから印象薄いし、そんなに事件が見えていたなら人死には防げただろうし、何よりも若宮がやらなければならなかったのは姫たちとの対話だろう。
    身代わりにした近習にしても、あんな状況で女の園に放り込んだらどうなるのか想像できなかったのだろうか。ちょっと周りの人間を軽く見ているような気がする。
     
    家臣の力を抑え宗家中心にしたいのはわかるが、即位もしていないこの時期に四家を敵にまわすようなことをして大丈夫なのだろうか。
    もっと穏便に姫君たちを脱落させていく方法はあったと思う。妃を誰にするかはとっくの昔に決めていたようだし。

    面白いことは面白いのだが、いろいろと物足りないなぁという印象。
    姫君たちのキャラが変わっていくのはいいとして、侍女たちがうるさいし総じて無礼。

    烏太夫(その場にふさわしくない者)が浜木綿とのことだが、彼女は両親に問題があったとはいえ血筋は確かだ。
    血統を重んじるというならばこの場に一番ふさわしくないのは白珠では。
    あせびも最後のニュアンス的に母が下男と通じた娘だというならやはりふさわしくはないだろう。
    そもそもあせびに懸想していた下男は以前にも勘違いさせられてあせびの姉を襲ったらしい。
    その時点で取り押さえられなかったのだろうか。だとしたらしたたかと言われている東家の当主が間抜けか、あせびに操られているのだろうか。
    あせびの母にしても、彼女と同じ質だというなら下男と子供を作らずさっさと今上帝の側室に収まればよかったのに。

    若宮は白珠を「何もしていないのに想い人が死んでから嘆くな」というようなことを言った。
    しかし白珠は家のために「入内する」ということを選んでいた。一巳に別れも告げた。最後の思い出も作った。何もしていないわけではない。駆け落ちを選ばなかっただけである。
    恋を自覚していなかった13歳位の娘にさっさと駆け落ちすればよかっただろうというのは、あまりにも彼女の事情も感情も無視した身勝手な物言いに思える。
    市井の暮らしを知るらしい若宮ならいざ知らず、庶民は家がなくとも愛があれば鳥の姿で温めあうから大丈夫、なんていうのは深窓の姫君には無謀すぎる。
    何でもお見通しの聡明な若宮ならば、姫たちの情報も登殿してくる前に入手が可能であろう。その時点で白珠たちが困らないように駆け落ちさせてやればよかったのに、と思う。

    若宮の登場が唐突すぎて辛口になってしまったが、本来は「子供の頃に出会った男女が実は高貴な出で、実家が敵対関係にあるが再会して共に国を盛り立てていく」という、萌え要素満載な設定のはずである。
    次巻はこの巻の別視点からの物語だそうのなので、そういったことも期待しつつ読んでみたいと思う。

    また、「目を丸くした」「ぞっとした」というような描写があったが、そいういうのは雰囲気である程度読ませて欲しい。
    じわじわと読者に感じさせる間がなく、直接文字で書かれるとちょっと醒めてしまう。

    その後がどうなるかわからないが、あせびをそのまま里に帰すのだろうか。
    彼女のような、自分は汚れず一定の人物を狂わせる女は毒のようにじわじわと周囲を蝕んでいく。
    いっそのこと今上帝の側室に上がって暗躍し、浜木綿たちと宮廷で争ってほしいものだ。

  • 荻原規子さんの勾玉シリーズのようなお話を期待して読んでしまったので個人的にはハマりきれずに終わってしまいました。
    お話としては面白いと思いますが、私の好みではなかったです。

  • 十二国記や勾玉三部作に近いものを探して、悩んだ上に2作目まで購入。
    結果、残念ながら好みではなかった(勝手に期待しておいてすみません)
    主人公に感情移入、成長する姿を応援するタイプのお話ではないのです。
    また、自分の罪に自覚的な、悪行と悪と理解して実行する(罪悪感を感じなくても良い)人間が好きなので…

  • ファンタジーは苦手だと思いつつ読んでみたが、これは見事にダメだった。ファンの方々には申し訳ないとは思うけれど、自分としては、気持ちが悪い、としか表現できないのだ。古典の世界を忠実に描いているようだが、ではなぜ烏なのかよくわからない。烏なら烏の空想世界を描いて欲しい。人間の古典宮廷世界を烏が営むというのは、ボクにとっては気持ちが悪いとしか感じられなかった。なぜ烏なのか、今後の展開でわかってくるのかもしれないが、ボクは本作で終わりにしたい。ファンの方々にはこんな書き方で申し訳ないと思うが、多分に感じ方の問題なので許してほしい。

著者プロフィール

1991年群馬県生まれ。2012年早稲田大学文化構想学部在学中、史上最年少の20歳で松本清張賞受賞。デビュー作から続く「八咫烏シリーズ」は、松崎夏未氏による漫画化、中台翻訳など進行中。19年『発現』(NHK出版)刊行。

「2023年 『烏は主を選ばない(4)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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