天皇の料理番 [DVD]

出演 : 佐藤 健  黒木 華 
  • アミューズ
4.21
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4527427659254

感想・レビュー・書評

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  • 何をやっても長続きしない田舎のやっかい者の少年が
    友や師匠や愛する人に支えられ
    いつしか料理の道を歩み、
    明治から昭和の激動の時代を生き抜き、
    ついには「天皇の料理番」にまで上り詰めていく史実に基づく人間ドラマ。


    ふ~っ、録画したものを一気に観ました。
    いやぁ~、面白かった!
    なんと濃密な全12話か。

    堺正章主演の名ドラマ「天皇の料理番(1980)」はおぼろげな記憶しかないけど、
    本作は「JIN -仁-」「白夜行」「とんび」などを手掛けた森下佳子さんの脚本がよく練れてるなぁ~と思いました。

    明治後期から昭和にかけての当時の街並みを完全再現したセットがスゴいし、
    パリでのロケを敢行し、撮影だけで半年をかけたという
    このドラマに賭ける役者陣の本気度とスタッフの熱量がヒシヒシと伝わってくる繊細で丁寧な作り。
    (やわらかな福井弁にもほっこりします)

    最終回が近づくに連れて
    毎回さだまさしの主題歌が流れる頃になると
    涙が抑えきれず大変でした(汗)( >_<)


    初めて食べたカツレツに猛烈に感動し、料理の道へと歩んでゆく秋山篤蔵(とくぞう)を
    長い髪をバッサリ切り丸坊主にし、 
    クルクルとめまぐるしく動く表情で
    16歳から84歳までを演じきった佐藤健が本当に上手かった。

    一切の妥協を許さず、圧倒的なアクションは何よりも雄弁に語るのだということを体現してみせた
    映画「るろうに剣心」の役者魂にもドギモを抜かれたけど、
    このドラマでも不器用だけど一途な癇癪持ちの男を
    躍動感溢れる演技で好演していたし、
    (とにかくよく走る走る!)
    料理人になりきった見事な包丁捌きも見せてくれます。
    (じゃがいもをペティナイフだけで「シャトーの形に剥く」 シーンの鮮やかなこと。相当練習してないとコレはムリです)


    そして篤蔵と見合いをし、
    大日本帝国一のコックになると
    東京へ旅立っていった彼の将来を思い一度は別れるものの
    一途に彼を想い、生涯篤蔵を支え続けていく高浜俊子を演ずるのは、
    若手演技派女優筆頭株の黒木 華。

    新婚初夜に必死でタラコ唇を練習する姿やジュテームの意味を篤蔵に尋ねるシーンは可愛かったし、
    何かと篤蔵を庇う俊子がホンマいい子なんですよ(T_T)
    降りしきる雪の中、篤蔵の将来を思い、初めて俊子から別れを切り出すシーンや
    亡くなる間際に篤蔵に鈴を預けるシーンには涙、涙でした。

    ベルリン国際映画祭最優秀女優賞を穫った「小さいおうち」でも思ったけど、
    まだ25歳と若いのに
    黒木さんは着物姿で子供を背負った姿がよく似合うんですね(笑)
    明治の時代が似合う女優と言っても過言じゃないくらい(笑)
    一本芯を持ちつつも古式ゆかしく、
    つつましく節度を持った古風な女性が本当にピッタリでした。

    そして東京の大学に進学し弁護士になる夢を持つものの
    志し半ばで病に倒れる篤蔵の兄、秋山周太郎を
    みるみるやつれていく驚愕のデニーロ・アプローチで演じたのは、
    常に役に同化するストイックで真摯な若
    手俳優、鈴木亮平。

    篤蔵の行く末を誰よりも気にかけ、
    国のために身を捧げようとしていた周太朗の無念を考えると本当に悔しいし、涙が溢れてくる…。
    (10月に映画公開される人気漫画の実写化「俺物語!!」でも30キロ体重を増量し、今度は郷田猛男になりきってます!)

    他には、篤蔵に料理は「まごころ」だと教える一流西洋料理店・華族会館料理長の宇佐美鎌市には
    大人の色気ムンムンのベテラン俳優、小林薫。
    僕はこの宇佐美さんというキャラが大好きで
    彼が絡むシーンはどれも好きだし、
    寡黙な料理人だからこその
    切実で重い言葉が胸を刺すんですよ(T_T)


    来る日も来る日も洗い物や雑用ばかりの日々に嫌気がさした篤蔵は、
    早く一人前になりたくて宇佐美さんのレシピ帖を盗みます。
    そして紆余曲折があって盗んだレシピをこっそり返しに行くんですが、
    そのときに篤蔵に言った宇佐美さんの
    言葉がすごく印象的。

    「料理はまごころだ。
    技術は追いつかないこともある。
    食材は望み通りにいかないこともある。
    けど、まごころだけはてめえ次第で
    いつでも最高のものを出すことができる。
    爪を短くすること。鍋を丁寧に洗うこと。皿を磨くこと。包丁を整えること。
    そういうことは確実にできる。
    それすらできん奴はまともな料理を作れるとは俺には思えない。
    教えないのは覚えないからだ。
    親切に貰ったものより、てめえで必死になって盗んだもののほうが
    人は大事にする。
    だから教えない。」

    篤蔵が料理に一番大事なものは
    技術や要領ではなく「まごころ」だと初めて理解した、
    本当にいいシーンでした。

    他にも、 華族会館をクビになり、
    町の小さな洋食屋「バンザイ軒」で住み込みで働きながら腕を上げ、篤蔵がパリへ修行に行くことが決まった日。
    訪ねてきた宇佐美さんに
    普通のカレーを作って初めて誉められ、
    宇佐美さんが自分の包丁を篤蔵に預け、日本人の「まごころ」を見せつけて来いと言ったシーンも
    かなりグッときました。
    (てか、涙腺崩壊でした!)

    セリフに説得力があるから
    小林薫が絡むと絶対泣けるんよなぁ~(T_T)
    ホンマずるいわ~(笑)


    篤蔵の父を演じた杉本哲太、母親役の美保純、口うるさく何かと細かい俊子の父を完璧に演じた名脇役の日野陽仁、
    周太朗や篤蔵の良き理解者である日本大学法律科の桐塚教授には武田鉄矢。
    篤蔵にカツレツをふるまい料理人を目指すキッカケを作った軍隊のコック・田辺には伊藤英明。
    篤蔵を支え続ける親友で、絵描きを目指す松井新太郎には桐谷健太、嫉妬心から友達である篤蔵を裏切る山上辰吉を上手く演じた柄本 佑、
    バンザイ軒の主人を飄々と演じた佐藤蛾次郎(懐かしい!)、色気が襦袢(じゅばん)を着たような(笑)バンザイ軒の色っぽい女将を演じた高岡早紀など、
    本当にキャストがみな上手かったし、役に対する愛を感じたし、
    その思いがドラマに深みを与えてくれていました。


    記憶に残る名シーンが数限りなくあるドラマだったけど、
    個人的には篤蔵が天皇の料理番になるまでの
    華族会館やバンザイ軒での下積み時代のパートが一番面白く思えたし、記憶に残っています。

    人種差別に苦しみながらも、
    篤蔵の見事な包丁さばきと
    宇佐美さん譲りの「まごころ」がパリで認められるシーンは
    日本人に生まれて良かったと
    自分のことのように誇らしかったなぁ~。

    パリでの5年の修行のあと、26歳にして厨司長として
    天皇の料理を任される篤蔵。
    厨房では音を出さないよう気をつかなければならないし、
    「切る」は忌み言葉なので
    果物は切らずにそのまま出さなければならなかったり、
    しきたりの多さに戸惑う日々。

    そんな中、御即位の礼の大饗に
    二千人分のザリガニ料理を作るため、
    宇佐美さん以下華族会館時代の
    昔の仲間を集めるシーンも良かった。

    当時、関東大震災での被災者への炊き出しを宮内省が率先して行っていたことや、
    戦時中天皇陛下も庶民と同じ配給された質素な食材しか食べていなかったことには驚いたし、
    日本人の天皇に対する考え方を
    日本人が当たり前に食べている味噌に例えた宇佐美さんのシーンも印象的でした。


    鯖江連隊のデミグラカツレツ、
    ライスカレー、カニコロッケ、エスカルゴ、
    俊子に初めて作ったチキンカツ、
    篤蔵初のオリジナル料理「バンザイ軒のフランスカレエ」、
    お年寄りが食べやすいように篤蔵が考案した「挽き肉ステーキ」、
    ザリガニのポタージュ(臭みはないのかな?)と
    インパクト抜群の「富士山のアイスクリーム」、
    ごま油で揚げた屋台の天ぷら、
    俊子の最後の晩餐となった篤蔵お手製の「蕎麦がき」、
    GHQをもてなした鴨の瓦焼きなど、
    目にも嬉しい料理の数々にも注目です。


    料理人の社会的地位が低かった時代に
    (父親が料理人というだけでイジメられたり)、
    己の腕一本で26歳にして天皇の料理番を勤め上げるまでに成長し、
    職業としての料理人の地位を輝かせた男の話は
    いわばパイオニアの話。
    なんの職種にせよ、周囲の荒波に負けず自分を信じて、
    道なき道を切り開いていった人の話は
    強く胸を打ちます。

    先入観で見逃してしまうには
    あまりに惜しい良質なドラマです。
    料理好き、食べることが好きな人、
    古き良き明治時代に興味がある人、
    雌伏のときを経て
    主人公がのし上がっていくストーリーに目がない人、
    流行を追った軽いだけのドラマにうんざりしてる人なら
    楽しめると思いますよ。


    ★コレを見れば絶対に本編が観たくなる(笑)
    『ストーリー of 天皇の料理番』↓
    https://www.youtube.com/watch?v=xZUT7VNYj3I&feature=youtube_gdata_player

    • darkavengersさん
      大変遅くなりましたが花丸、コメントありがとうございます。

      アニメ ワカコ酒自分が住んでいる所ではやってないんですよ(泣)
      DVDが出...
      大変遅くなりましたが花丸、コメントありがとうございます。

      アニメ ワカコ酒自分が住んでいる所ではやってないんですよ(泣)
      DVDが出たら買おうと思っていたのですが、なんとBlu-rayのみでDVDの発売はないようなんです(泣)
      これを機にBlu-rayプレイヤーを買うってのもアリなんですが色々と買いたいというより買わねばならないDVDや本があって……(泣)

      その買わねばならないDVDの一つが「天皇の料理番」なんですが、自分は堺正章版の方に思い入れがあったので平成版はどうかなあ?と思っていたのですが第1話を観てこれはこれで面白いと思いました。(堺正章版と色々と違いはありますが)
      かなり高額ですがこれは買わなければ‼と思ってます。

      忘却のサチコ、ドラマ化はまだみたいですね(泣)
      それに孤独のグルメ シーズン5も。
      なんとか実現してもらいたいですね。
      2015/08/20
  • 非常にいいドラマでした。
    メシを食べていただくには、『まごころ』がなければならないと
    天皇の料理番 篤蔵は そのことを 貫く。
    時代は日露戦争の頃からはじまる。
    坊主になったりするが、長続きしない。
    かんしゃくが、どうしても収まらないのだ。

    郷里で食べた カツレツに感動したオトコ
    秋山篤蔵/佐藤健がやっと自分の道を見つける。
    ちょっと、オーバーだけど、好感が持てるなぁ。
    がむしゃらすぎる。一途すぎる。周りが見えない。
    養子婿いり結婚していたにもかかわらず、家を飛び出した。
    黒木華のヨメが いじらしい。
    想いが 想いとして、つながる。
    黒木華のもつ 不思議な演技力に引き込まれる。
    魅了する笑顔が存在する。

    キッチンは、やはり、年功序列的なところがあり、
    その組織の風通しの悪さに、かんしゃくを起こす篤蔵。
    組織に、なじまない篤蔵。

    バンザイ軒の女将/高岡早紀はフレンチカレーに言う。
    客によろこばれない 手間は 意味がないんだよ。
    手間をかけてつくったからといって、みんなが喜ぶとはいえない。
    小林薫のシェフが言う
    『性根のくさったカレーは、くさっている。
    お客をバカにするのは、バカであり、不幸だ。』

    いいなぁ。言いたいことをずばり言う。
    それにきちんとして、精進する。
    とにかく、フランスに旅立つのだ。
    郷ひろみが フランスの大使館の大使。
    いや、いや、あってるよ。

    フランスでの修業。なんと言っても、
    じゃがいもの切り方が 早くて すばやい。
    そのことで評価される。
    ホテルリッツでの仕事を評価されて、天皇の料理番となる。
    肺病を患った、お兄ちゃんの想いを実現する。
    おもしろくて、ためになった。
    天皇が戦犯にならなかったのは、
    日本の文化の一部と言うこと。
    小林薫は、「ミソ」のようなものだという。
    ふーむ。ごはんではないのだね。
    GHQへの 『まごころ』という立ち場で接する。
    あくまでも、天皇を守るためだと言う。

  • 明治の半ば、福井県の少年 秋山篤蔵が出会った一枚のカツレツが人生を決定付ける。
    裸一貫で西洋料理の道に進み、パリの一流ホテルで修業し、そののち宮内省の主厨長、いわゆる天皇の料理番として、日本の料理界の頂点に立った男の苦闘と栄光の軌跡を描く(amazonより抜粋)

    泣きました。
    何回も泣きました。
    こんなに気持ち良く泣けたのは久しぶりのドラマ。
    名作だと思います。

  • 小説もこれより前のドラマ化も見たことがない状態で見た。

    兎に角丁寧に作られていることが感じられた。
    後で秋山氏のエッセイを読んだが、実際の経歴がふんだんに織り交ぜられ
    純真で真っ直ぐで真心を丁寧にするお人柄と
    それを自分のものにして「秋山篤蔵」とした佐藤健さんの凄さを
    改めて感じた。

    このドラマの為に包丁を持ち歩いて収録の合間も練習を欠かさなかった
    という佐藤健さん。
    吹き替えなしの包丁さばきはそれだけで見応えがあるレベル。
    この真摯な役への向き合い方が、秋山というキャラクターを
    嘘のないものへ昇華している。

    また、妻役の黒木華さんも素晴らしかった。
    おとなしく、自分のことを美人ではないと思っている俊子。
    篤蔵の為に身を引き、晴れて一緒になった後も篤蔵の仕事に対する姿勢を
    尊重し続けた、古き好き時代の女性を押し付けがましくなく
    柔らかに体現。
    実話である鈴のシーンなども本当に素晴らしかった。

    その他脇役の人たちが皆素晴らしい。
    特筆すべきは兄役の鈴木亮平さんか。
    優しく厳しく駄目な弟を見守ってくれているお兄さんは
    とても当たり役であると思ったし、
    死を目前にそれに合わせて最終的に20kgの減量という
    鬼気迫る役作りも圧倒される。

    脚本や演出もまた良かった。
    突然破門になって戻される描写から始まり
    駄目男だった篤蔵が料理に惚れ込むまでの過程を丁寧に描き
    本当に酷い男なのに憎めないキャラクターに仕上げた上で
    スピーディーな展開でパリ留学を描き
    一人の男の成長、そして陳腐でない恋模様、友情と
    飽きず納得のいく内容。
    封筒を裏返してもう一度使うような小さな描写なども
    丁寧で良かった。

    笑いあり涙あり、久し振りにこんなに見応えのある
    素晴らしいドラマを見たと思った。

  • 毎週号泣でした…。佐藤健くん黒木華ちゃん、いい役者だなぁ。仕事に打ち込む旦那さんを全力で支える妻になりたい。。

  • 面白かった。
    個人的な意見ですが、
    序盤はなんかだらだらで飽きかけてましたが、
    後半はたまらなかったです。
    全体的に、料理=真心は心にしみました。

  • 心に残る作品だった。
    毎話怒涛のようなストーリー展開で、5話目あたりのときには1年ぶっ通しで観たのかと思うくらいの疲労感を覚えた。




    -----




    この時代背景にハマるのか不安だった佐藤健くんもはなちゃんもすぐに馴染み、むしろこの二人でなければと思えるくらいに感動した。特にはなちゃんは古き良き日本の嫁を見事に演じきっていた。

    劇中、実際夫婦として過ごした時間は短かったのに、それを忘れさせるほど絆の強さを感じた。

    役作りに関しては鈴木亮平くんの右に出る人はいないだろう。元々徹底した役作りが評判だけど、今回は監督がストップをかけるのではないかと思うレベルで凄まじかった。

    撮影も演技もおかげでしやすかった事と思う。
    こちらも本当に心配でハラハラさせられた。

    度々泣かされるので当分観たくはないけれど、子供が大きくなったらいつかまた一緒に観てみたいと思う。

    困った事に、登場人物に感情移入し過ぎて日常生活でうっかり福井弁が出たり、物言いが妙に年寄りくさくなってしまった。ここまでハマれる作品に出会えてよかった。

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