パリでメシを食う。 (幻冬舎文庫) [Kindle]

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  • 幻冬舎
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  • 夢を持って、あるいは成り行きでパリに暮らす人々。パリに暮らす個性的な日本人10人の日常や生き方を綴ったルポ。

    「三つ星レストランを目指した料理人」、「"不法占拠"アトリエで自由になったアーティスト」、「路上のドラマを切り取るカメラマン」、「先手必勝、オペラ座に漫画喫茶を開いた起業家」、「手仕事に情熱を燃やす女性テーラー」、「ファッションの最先端で「一瞬」に生きるスタイリスト」、「孤高のヨーヨー・アーティスト」、「恋に仕事に突っ走る国連職員」、「三度海を渡った鍼灸師」、「家族とアフリカと哲学を愛する花屋」の10人。

    異邦人としてパリに暮らすことの厳しさ、辛さ、そして喜び。パリには、棲んでみないと分からない(日本人には耐え難い程の)冷たさや無秩序さと、それを上回る魅力があるようだ。本書に登場する10人は、秩序があって暮らしやすいものの窮屈な日本から抜け出した(はみ出した)人達と言えるのかな。

    「この街には、「あるべき姿」がない。本書に登場した十人の日本人は、ロールモデルや周囲の期待、常識といったものと自分を照らし合わせるのではなく、ただひたすらに自分の内なる声に耳を傾けてきた。「なりたい自分」を形成しているのは、自分自身のようだった。余計なものを背負いこまないシンプルさが、彼らに余裕と潔さを与えていた。」

    著者は、ユニークで破天荒な日本人10人を、愛情溢れる文章で表現している。いい本だった。

    異国で暮らすのって、特別なことじゃないんだな。彼らと日本に棲む我々との違いは、異国への一歩を踏み出すかどうかの違いだけなんだな。

  • 「パリの国連で夢を食う」を先に読んでからの、「パリでメシを食う」を読みました。

    パリの国連で働いていたアリオさんが、パリで生活している日本人たちにインタビューしながら書いた、パリでメシを食っている(生活している)人たちの記録。

    面白かった。

    パリで生計を立てている日本人の方々10人ぐらいの話なのだけど、どの人も、何かの運命的な糸を辿ってパリにたどり着いている感じがしました。フランスやパリが特別好きな人ばかりではなく、新しいものを辿ってきたらパリにいた、みたいな感じで。

    何か、自分の好きなこと、行きたい場所に引っ張られて生きていたら、時には何らかの楽しい場所にたどり着けることがあるのかな〜と、ちょっと気分が楽になりました。

    いやいや、皆さんすごく努力した方々だったけど、世の中の「正しい」と思われているレールに乗るだけが人生じゃないんだよね〜って感じました。

  • パリで生計を立てる日本人を丁寧に取材している。

  • タイトルからは軽めの旅行記のようなものを想像していたが、重厚感と読み応えのあるノンフィクションだった。出てくる人物がみな強烈な体験を語っているが、テーラーと国連職員の話が妙に印象に残っている。

  • タイトルから、料理人とか飲食業の人たちかと思っていたら、そうではなく、メシが食えている、つまり、パリで生活できている人、っていう意味で、いろいろな職業の人たちのインタビュー。料理人もいるけれど、鍼灸師とかオートクチュールのお針子さんとかスタイリストとか、ヨーヨーのパフォーマーとかマンガ喫茶ひらいた人とか本当にその職業はさまざま。生活はできているけれど、とくに著名人とかすごい成功者、っていうことでもない、普通の人っていうのがまたおもしろい。
    パリでメシが食えるようになるまで、単にサクセスストーリーということでもなくて、でも、いろいろなことがそれぞれあって。派手な話でなくても興味を惹かれてどんどん読んでしまう感じ。「バウルを探して」を先日読んで、文章が気に入ったので、ほかの作品もと思って読んだのだけれど、やっぱり文章うまいし、インタビューもすごくうまいんだと思う。その人をじっと見て理解しているという感じ。

    オートクチュールのスーツを縫う仕事をしている方の話だったと思うけど、資格をとる試験で、もうできないと思ってパニックになって泣き出してしまったときに、まわりのフランス人の人たちが励ましてくれた、っていう話になんか感動して涙ぐんだ。。。
    絶望したり、果てしなく落ち込んだりしたときに、ものすごく親しいというわけでもない、まわりの人が励ましてくれた、っていう話がけっこうあって、そういうの、読んでるだけで慰められる気がした。

  • 一人一人の生き様が、清々しい。
    一筋縄ではないけど、自然で、のびのびとしていて、できるできないの決めつけがない。
    一人一人がかっこよかった。

  • レコードの「ジャケ買い」ならぬ、文庫本の「背表紙買い」もしくは「書名買い」。
    著者名も全く知らぬまま、書棚からつい取り出して買い求めてしまった。
    そのくらい「パリでメシを食う。」というタイトルにソソラレた。
    これは著者の戦略勝ち?それとも編集者のアイディアかな?
    そしてタイトルから想像した期待以上に、本書は面白かった。
    パリに数十回通うほどの「パリ通」ではないが、パリを訪れること、パリに住まうことは今なお憧れであり、訪れるたびに心躍る街であることに相違は無い。その街に根を張り、小説より奇なる人生を歩む日本人10人のドキュメント。
    これがまた、文字通り「十人十色」で、一人分を読み終えると「さあ、次は?」とページを繰るのが待ち遠しい。もともとジャーナリストではない著者の筆力も大したものなのだ。いや、これは筆力と云うよりも、著者自ら本書に取り上げた対象者それぞれへの共感や洞察の鋭さの為せる業か。
    別にパリに暮らさずとも、毎日を生きる小さな勇気と力を貰える一冊。

  • パリでメシを食っている人々へのインタビューをまとめた本。
    なりたかった職業に就いたものの、このまま人生を終えてよいのだろうかと最近悶々としていることもあり、ここに出てくる人々の紆余曲折の人生模様は、非常に興味深かった。
    フランスはパリも含めて色んな街を訪れたことがあるが、まさに素敵な部分とすごく嫌な部分が混在する何とも言えない国だな…と思うことが多く(どこの街角のパンも絶品なのが驚異だが)、この本も、その光と影を感じられるのがまた良かった。

  • 2022.01.21. Amazon prime読了

    パリの魅力は知っている
    パリに限らず、フランスは住みやすい。
    作者が言う通り、
    思い通りにいかないことも知ってるし、
    頭にくることもたくさんあるし、
    不便なことも沢山ある。
    でも、住みやすい。

    ここに書かれている
    10人の人たちは
    本当に魅了的

    この魅了的な人たちの話を聴いた作者も
    本当に素敵な人だと思う。

    読んだらまたフランスに行きたくなるだろうな
    と思って
    読むのを躊躇してたけど、
    読んでよかった。

  • パリで働いている日本人のインタビュー集。
    日本とちがう日常生活にいらだったり、それを超えてどうでもよくなったら自分のペースを大事にできるようになったり。あとがきで「誰かの参考になる話やサクセスストーリーを聞きたいわけではないんです」とインタビュアーに言っているように、個々人の体験談・人生談という感じ。職業だったり、境遇だったり、万人受けしにくい感じの、でも実際にパリでメシを食ってる日本人たちなのがいい。

  • パリはほとんど描かれない。パリでメシを食う人他人を通して輪郭を感じた。

  •  パリを舞台にあらゆる物事に挑戦する日本人へのインタビューをもとに書かれたエッセイ。
     芸術のパリに憧れ、夢を追って生き生きと活躍する人たちが描かれる。

     三ツ星レストランの厨房で働く女性、
     芸術家の集まるアトリエに住み、絵で生計を立てる女性、
     日常を切り取るカメラマンの男性、
     パリの中心地に漫画喫茶を開いた男性、
     オートクチュールの紳士服テーラーで働く女性、
     パリコレなどの一線で活躍するスタイリストの男性、
     ハイパーヨーヨーを芸術の域へ高めた男性、
     パリの国連事務所でバリバリ働く女性、
     フランスに日本発の鍼灸を広めた男性、
     パリの一等地に花屋を開く男性。

     パリは決して万人に住みよい街ではないし、外国人がフランスで仕事を得るためには、煩雑な手続きを経たうえで、さらにとんでもない倍率をくぐり抜けなければいけない。しかし、そこには世界のトップレベルの芸術性があり、夢を追う人々が集う。パリは人を魅了してやまないものが確かにある。
     人生のなかでたまたまパリの魅力に触れ、パリへ赴く機会を得て、そこに夢を掴む手がかりを得るだけでも奇跡的なことだと思うが、そこからさらに夢を掴み、パリで「メシを食う」=生きていく人はとても強い人だと思う。

  • 能天気なパリエッセイかと思いきや、意外な読み応え。タイトルからして『メシを食う』と、反骨精神がある。『パリで働く素敵な日本人』みたいなタイトルではない。
    海外で楽しそうに暮らす日本人をみると、日本ひいては日本に住んでいる自分を否定されたかのように、反発をする人もあると思うが、本作は単純なパリ賛歌ではないので、読みやすいではないか。

  • パリで生活の糧を得て、生きている人たちのインタビュー集。書かれている人もエピソードも、文章もとても素敵で、とてもいい気持ちで読むことができました。
    それぞれの人と、信頼のあるいい関係を築きインタビューしたことがうかがえます。きっと著者の川内有緒さんも、とても素敵な知性のある人なのでしょう。他の著書も読みたいと思わせられました。

  • パリで働く日本人たちのインタビュー集。インタビューを受けるのはフツーの庶民。ぶらりとパリにやってきて、ささいなきっかけで職を見つけ、住み続けるようになってしまった人ばかり。今では死語かもしれないが、「芸術の都」という言葉が象徴するように、パリは一芸を持った人間を惹きつけるのだろう。

    本書で登場するのは料理人、アーティスト、スタイリストといったいかにもパリに似合う職業人から、漫画喫茶経営者、ヨーヨー芸人、鍼灸師など、よくぞこんな日本人がパリに住んでいるなというニッチな人などなど。どうやってこれだけの人を探し出し、知り合ったのかと、著者の行動力に感心。調べると、著者自身も国連職員など様々な仕事を転々としては、住む国も変えてしまうバイタリティのある人だった。類は友を呼ぶということか。

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著者プロフィール

川内 有緒/ノンフィクション作家。1972年、東京都生まれ。日本大学藝術学部卒業後、米国ジョージタウン大学で修士号を取得。米国企業、日本のシンクタンク、仏の国連機関などに勤務後、ライターに転身。『空をゆく巨人』(集英社)で第16回開高健ノンフィクション賞を受賞。著書に『パリでメシを食う。』(幻冬舎)、『パリの国連で夢を食う。』(同)、『晴れたら空に骨まいて』(ポプラ社/講談社文庫)など。https://www.ariokawauchi.com

「2020年 『バウルを探して〈完全版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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